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2006年11月30日 (木)

プラダを着た悪魔

米映画

監督:デヴィッド・フランケル

出演:メリル・ストリープ アン・ハサウェイ スタンリー・トゥッチ

アン・ハサウェイ演じるジャーナリスト志望の女性が、メリル・ストリープ扮するファション界の伝説的な編集長にコキ使われながら成長していく物語。

「プリティ・プリンセス」のヒットでアイドルになった後に、名作「ブロークバック・マウンテン」での意外な好演でハクがついたアン・ハサウェイが得意分野のコメデイに復活し、めくるめくファションで大人っぽい魅力も振りまきながら、好演している。

ゲイっぽいハゲの役をやらせたら最高に上手いスタンリー・トゥッチ(「シャル・ウィ・ダンス?」とか)も相変わらずイイ味を出している。

そしてなによりも、悪魔のように人使いの荒い編集長を演じるメリル・ストリープがとにかく凄い。悪役としてはアンソニー・ホプキンスのレクター博士にも匹敵するぐらいの強烈な印象で、目つきだけで凍りつきそうな大迫力とほんのちょっとだけ見せる人間らしさとで、マンガチックなキャラをリアルに際立たせている。アカデミー賞あげてもいいくらい。

ちょっと間違えば、おとぎ話みたいな甘い内容になりそうなお話を「セックス・アンド・ザ・シティ」(見たことないけど)の監督が、スピーディーでテンポよく、キャラが際立つようにシンプルに仕上げていて、飽きずに見ていられる、思ったよりいい映画でした。

女性はストーリーはともかく、ファッションを見ているだけでもよさようだし…

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2006年11月26日 (日)

パプリカ

日本映画(アニメーション)

監督:今敏

出演(声):林原めぐみ 江守徹 古谷徹 大塚明夫 堀勝之祐 山寺宏一

筒井康隆原作のSF小説を「パーフェクト・ブルー」「千年女優」の映像作家 今敏が監督。

精神病等の治療のため、他人の夢に同調する(夢に入り込む)装置が開発され、夢に関するセラピーが行われている社会で、その装置が悪人の手に渡り、他人の夢(精神)に侵食し、狂わせていく事件が発生、夢のセラピスト「パプリカ」が事件解決に奔走するSFサスペンス。

ハッキリ言って夢に入り込む装置の原理やら、夢と現実が入り乱れるシーンは何が何やら分からなかったけれど、ストーリー自体はシンプルでテンポもよく、分かった気になれて、細かいところはあんまり気にしなくても楽しめる。

何よりも、原色が入り乱れる夢のシーンの映像は圧倒的な迫力と美しさ、そしてスピード感で、改めてこの監督の力量を思い知らされる。

押井守監督の傑作「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」など夢をテーマにした作品はかなり多く(夢と電脳世界を置き換えれば「イノセンス」や「アヴァロン」等も)、ハリウッドでもジェニロペ主演の「ザ・セル」なんてもんがあったけど、この作品は筒井康隆のブラックユーモアと今敏のスタイリッシュさや映像感覚が融合してオリジナルさを出している。(あえていうとやっぱり押井守作品に似てなくもないけど)

難しいけど面白く、登場人物も魅力的で(特に主人公の女性が)、何回も見て味が出てくる作品です。

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めぐみ 引き裂かれた家族の30年

米映画

監督:クリス・シェリダン パティ・キム 

出演:横田滋 横田早紀江 増元照明

北朝鮮による拉致させた横田めぐみさんの事件をアメリカ人監督が追いかけた(製作総指揮は「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン)ドキュメンタリー映画。

横田めぐみさんが行方不明になってから現在に至るまでを横田夫妻をはじめとする関係者からのインタビューを差し込みながら時系列の通り、丁寧に作り上げている。

日本では知らない人間はいないほどの事件だけど、観客の想定は恐らく事件への知識も薄い欧米の人達としていると思われ、それだけに誰にでも分かるように丁寧に、そして横田めぐみさんのみに焦点を絞りシンプルに描いている。それが、特に新しい情報はないけれど、改めて事件について深く感じさせられる。

特に横田めぐみさんが小学生時代の合唱の際、「慣れし故郷を放たれて 夢に楽土求めたり」(シューマンの「流浪の民」という歌だそうです)という部分を独唱するテープが残っていて、それを流すシーンは、本人の肉声を聞いたこともそうだけど、その美しい声とその後の残酷な運命を想像させられ、絶句させられる。

そしてまた、30年間奔走し続ける横田夫妻の姿はすごいとしか言えず、改めて尊敬と同情を禁じえない。特に早紀江さんは、家事をしながらインタビューに答えるシーンでは、やさしい普通の主婦にしか見えないのに、苦しい想いを噛みしめながらも事件の重要性を訴えるため、一言一言はっきりと発言する姿には本当に心を打たれる。

願わくば、この映画がアカデミー賞(ドキュメンタリー部門)を獲って、横田夫妻が授賞式で拉致について世界に訴えたりできればと思います。

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2006年11月22日 (水)

氷の微笑2

米映画

監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ

出演:シャロン・ストーン デビッド・モリッシー シャーロット・ランプリング デビッド・シューリス

あの「氷の微笑」がなぜか14年たった今になって、続編が作られた。主演はもちろんシャロン・ストーンだけど、ポール・バーホーベンは監督をやるはずはなく、「メンフィス・ベル」とか「ボーイズ・ライフ」とか「容疑者」とか割と「いい」映画を撮っているマイケル・ケイトン=ジョーンズが監督した。(もちろんマイケル・ダグラスも出ていない)

はっきり言って前作もシャロン・ストーンが足を組み替えるシーンぐらいしか記憶に残っておらず、ストーリーとかほとんど覚えていないんだけど、まあ結構な年になっているはずのシャロン・ストーンがまたあの役をやるっていうんで、とりあえず見ておこうかと…

前作の舞台はサンフランシスコだったけど、シャロン・ストーン扮する悪女キャサリンはいつの間にかロンドンに移り住んでいて、そこで事件を起こし、裁判のときに精神鑑定をした精神科医に目をつけ、事件に巻き込んでいくっていうお話。

シャロン・ストーンはともかくとして、意外にも脇役がけっこうしっかりしていた。今回の被害者になる精神科医役でイギリス人俳優のデビッド・モリッシーっていう人はよく知らないけどジワジワ追い詰められていく様子は地味だけどなかなかよかったし、刑事役のデビッド・シューリス(「シャンドライの恋」とか多数)もしぶかった。

そしてなによりもあの名女優シャーロット・ランブリングが「氷の微笑」なんかに出ているのにビックリ!(まあ、どうせならもっとはじけてほしかったけど) これだけでも見にいってよかったです。

と、他の俳優さんたちがきっちり脇を固めている中、シャロン・ストーンもがんばって悪い女をエロく演じているんだけど、結局は前作のパロディにしか見えず、見れば見るほど「(けっこうな年なのに)がんばっているなあ」という感想しか出てこないのが悲しかった。

思ってたよりいい感じで展開してたんだけど、セリフばっかりで後半はちょっと飽きてしまうし、ラストもちょっと無理やりって感じで後味も微妙でした。でもまあシャロン・ストーンもがんばっているんでいいかなと。

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2006年11月19日 (日)

トゥモロー・ワールド

英映画

監督:アルフォンソ・キュアロン

出演:クライヴ・オーウェン ジュリアン・ムーア マイケル・ケイン

西暦2027年、なぜか人類に生殖能力が無くなって子供がいなくなり、荒れ果てた近未来が舞台のSF作品で、ハリポタ3作目の「アズガバンの囚人」のアルフォンソ・キュアロンが監督。

もともと「大いなる遺産」や「天国の口、終わりの楽園」みたいな大人向の映画を撮ってた人で、むしろハリポタの監督になったのが意外なぐらいだったけど、本作はバリバリヘビーな内容で、ハリポタの反動でとったような作品。

SF的なビジュアルはイマひとつだけど、重厚な作りや長~いカットで丁寧に撮り上げた戦闘シーンなどリアルで思わず感心させられる。クライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーア、マイケル・ケインといったシブい役者もキッチリした演技で重い内容をよく引っ張っている。(特にヒッピー姿のマイケル・ケインはなかなか)

でも…

残念ながら、はっきり言ってあんまり面白くない…。分かりにくい内容もそうなんだけど、SF映画としてのワクワクさせてくれる展開もなく、ラストも地味というかなんというか、という感じで。

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麦の穂をゆらす風

アイルランド・英・独・伊・スペイン合作

監督:ケン・ローチ

出演:キリアン・マーフィー ポードリック・ディレーニー リーアム・カニンガム オーラ・フィッツジェラルド

イギリスを舞台に主に貧しい人たちを主人公にしたシリアスで骨太な作品を多く生み出してきた巨匠ケン・ローチ監督が、1920年代のアイルランドの独立、内戦といった時代を生きた人々を描き、初めてカンヌ映画祭でパルムドールに輝いた映画。

アイルランド義勇軍に参加した若者(キリアン・マーフィー)を主人公に、英軍と戦い、その後内戦に同胞同士が争うようになる人々をじっくり描いている。

この時代のこの手の問題を描いた映画としてはニール・ジョーダン監督でリーアム・ニーソン主演の「マイケル・コリンズ」が代表的だけど、予備知識のない私にははっきりいって難しかった。この映画は「マイケル~」のような指導者ではなく、無名の人達、末端の兵士たちを中心に描かれているけれど、狭いコミュニティの中でアイルランドが抱えていた問題が縮図のように描かれ、登場人物たちの議論が当時の彼らの考え方や対立を象徴的に言い表していて、とても分かりやすかった。

映画は重厚ながらシンプルなストーリーで、美しい景色と相まって、悲劇的な展開をじっくり染みるように見せてくれる。これまでの「マイネーム・イズ・ジョー」とか「SWEET SIXTEEN」といった現代劇では悲惨な状況を淡々とドキュメンタリーのように描いていた印象があったけど、ここでは主人公の心の動きや兄弟の確執や愛情といったものを割と情緒的に熱く描いていて(でもしつこくなく)、これが悲劇的な内容をさらに印象深くしており、特にラストは涙なしでは見られないです。

主役のキリアン・マーフィーはこれまてちょっとエキセントリックな役が多かったけど、ここでは最初は戦争反対(勝てるはずがないという意見から)の立場から、英軍の横暴さを目にして義勇軍に参加し、そして指導的な役割になっていくもの静かな若者をシッカリ演じていて、感動させられ、ちょっと見直させられました。他の役者もケン・ローチの演出でそれぞれが個性をしっかり出しつつもリアルな雰囲気で映画のトーンをしっかりとしたものにしている。

1920年代初頭のアイルランドのお話だけど、大国による支配と、同胞同士による内戦といった普遍的な戦争の悲劇をガッチリと描いており、いつ見ても心を動かされる傑作でした。

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2006年11月18日 (土)

明日へのチケット

伊・英合作

監督:エルマンノ・オルミ アッバス・キアロスタミ ケン・ローチ

出演:カルロ・デッレ・ピアーネ ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ マーティン・コムストン ウィリアム・ルアン

イタリアのエルマンノ・オルミ、イランのアッバス・キアロスタミ、イギリスのケン・ローチといった各国を代表する巨匠が共同監督したすごい作品。

イギリスやオーストリアからイタリアのローマに向かう列車の中を舞台にしてそれぞれの監督が乗客たちを主人公にしてオムニバス形式で描いている。それぞれの主人公たちは同じ(あるいは続いている)列車に乗り合わせており、他の監督のパートにも登場する等、それぞれのエピソードが有機的に結びついている。

エルマンノ・オルミの映画は見たことがなかったけれど、キアロスタミとケン・ローチが共同してひとつの映画を作るというだけで、かなり衝撃な事件で、見るしかありませんでした。

1話目は出張先で出会っただけの女性のことが忘れられずに心が揺れ動く老教授を描くエルマンノ・オルミのパート。写実的な列車の中のシーンと女性のことを想うロマンティックてちょっと官能的なシーンがうまく溶け合ってこころに残る。この人の映画は初めて見たけど、さすが巨匠といった重厚さがありました。

2話目のキアロスタミのパートは、嫌味な未亡人とそのつきそいのたよりない青年のお話で、特にストーリーらしいストーリーもなく、ひたすらオバさんの醜い行動と青年のダラダラした態度をみせられる。ただこれがキアロスタミらしくて、特別でもない人たちの行動や心の動きに引き込まれて、客観的にみつつも、感情移入している。どうしようもなくイヤ味なオバさんなんだけど、ひとりの人間として心配し、同情してしまう。

他の監督のパートはイタリア、イギリス(スコットランド)と自国の人を主人公にしているけれど、キアロスタミの部分だけはイランの人ではなくイタリアの人を主人公にしている。イタリア人の登場人物で舞台はローマに向かう列車の中なんだけど、風景の映し方や人間の描き方なんかがそのまんまなんだけどやさしくてキアロスタミらしくてホッとできた。ただ、やけに肌の露出の多い女性が出てくるのは、イラン舞台ではできない分、余計にやりましたみたいなご愛嬌も感じました。

最後のケン・ローチのパートは、前の2つがたんたんと進行していたのと対照的に、サッカーチーム・セルティックのサポーターの若者たちを主人公にした情熱的でテンションの高いお話。普段のケン・ローチ作品に比べればものすごく軽いコメディタッチの仕上がりになっているけど、なかなか最後はジワッとさせられます。

3つとも雰囲気が違うけれど、それぞれの巨匠の特徴がよく出ている贅沢な一品でした。

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2006年11月 7日 (火)

ナチョ・リブレ 覆面の神様

米映画

監督:ジャレッド・ヘス

出演:ジャック・ブラック ヘクター・ヒメネス アナ・デ・ラ・レグエラ ピーター・ストーメア

天才コメディ俳優、ジャック・ブラック主演のドタバタコメディ。

「ハイ・フィデリティ」で主役のジョン・キューザックを喰う怪演以来、「愛しのローズマリー」「スクール・オブ・ロック(大傑作!)」と快進撃を続けてきたジャック・ブラック、超大作「キング・コング」でもコングに負けない濃いキャラクターで存在感を示したけど、コメディセンスにちょっと欠けるピーター・ジャクソンの演出ではアクの強さは前面に出ても独特の可笑しさはちょっと影を潜めていたけど、この作品では画面に映るだけで思わず笑ってしまう本来のジャック・ブラックの魅力が前面に出ているというか、画面全体から感じられる。くだらないけど笑える贅沢な作品になっている。

ストーリーは至って単純で、メキシコの貧しい孤児院(修道院?)で育ち、そこで働く男が覆面レスラーになり子供たちに夢や希望を与えるというもの。

とにかく、ジャック・ブラックがふとっちょのメキシコ人役で、タイツを履いて立っているだけでも可笑しい。これが飛んで、跳ねて、そして歌う、とにかく動きまわり、また表情で笑わせてくれる。「スクール~」なんかに比べてもストーリーはものすごく単純で、ひねりもなにもないけど、その分可笑しさが際立っている。

新鋭監督のジャレッド・ヘスは、エキセントリックなジャック・ブラックとほとんど表情の変化のないメキシコ人俳優との対比を上手く使い、シンプルだけど映画全体の雰囲気をくだらなくも可笑しく作り上げている。(「スクール~」でもジャック・ブラックと組んでいた盟友マイク・ホワイトの力も大きいんだろうけど)

いま最もパワフルで笑える(と思う)俳優による、メチャメチャ贅沢でメチャメチャくだらない作品でした。(なんか褒めすぎた気もするけど、勢いなんで…)

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2006年11月 5日 (日)

デスノート the Last name 

日本映画

監督:金子修介 

出演:藤原竜也 松山ケンイチ 鹿賀丈史 戸田恵梨香 片瀬那奈 津川雅彦

大ヒットした漫画を日本映画としては珍しく前・後編の2作に分けて公開した後編。いわゆる解決編で、タイトル通り「最後にデスノートに名前を書かれるのは誰か?」というのが一番の見所になっている。

前作に引き続いて、金子修介監督はマンガ的な内容を質の高いサスペンスのようにみせてくれて、退屈させずに見せてくれる。ストーリー展開もラストの直前までは「なるほど」と関心させられていたんだけど…。

原作まったく読んでいないのでなんともいえないけれど、あのクライマックスはちょっとないんじゃないの?ってのが素直な感想です。気に入るとか気に入らないとかじゃなくて、設定というか、ルールなんて全然ムシで、それまでの丁寧な心理戦はなんだったの?と思えたんですが…。

藤原竜也とか松山ケンイチの熱演(マンガチックなところにも慣れて)に関心していたところだっただけに残念な感じだけが残ってしまった。

ちょっと得したと思ったのは、ぜんぜん重要な役じゃないけど上原さくらが性格のキツい女性キャスター役で、ぜんぜんイメージの違う役をやっていたこと。(エンドロール見るまで誰か分からなかった)

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2006年11月 4日 (土)

父親たちの星条旗

米映画

監督:クリント・イーストウッド

出演:ライアン・フィリップ アダム・ビーチ ジェシー・ブラッドフォード バリー・ペッパー ポール・ウォーカー

「ミリオン・ダラー・ベイビー」で2度目のアカデミー賞を受賞し、名監督としての地位を確固たるものとしたイーストウッドの最新作で、この後に続く「硫黄島からの手紙」と2本連続で公開する硫黄島2部作として話題になっている1作目。

太平洋戦争の硫黄島決戦を日米双方の視点からそれぞれ1本ずつ描くという企画の中の本作はアメリカ側から描いたもので、役者ははっきりいって地味目な人たちばかりだけど、CGも多用したリアルな硫黄島上陸シーンから始まる戦闘シーンと、イーストウッドらしい静かな人間ドラマが交差して、重厚な映画になっている。

よく知らなかったけど、数人の米兵が星条旗を掲げる有名な銅像(「インデペンデント・デイ」では月にもあった)のモデルは硫黄島の山に旗を立てたときのものらしく、当時この写真がアメリカの戦意を高揚させ、一気に終戦まで突き進んだ(映画では、これが戦争を終わらせたとさえ言っている)ということなんだけど、この映画はその旗を立てた兵たち戦意高揚のため英雄に祭り上げられ、苦悩していく姿を中心に描かれている。

次に日本側の視点で描く2作目が控えているためか、この映画では敵である日本側の描写が全くなく、米兵側のドラマしか描かれておらず、イマイチ物足りなさ感は否めない。(2本で1本の映画としてみなければいけないんだろうけど) おまけに勝戦国の立場で国内事情中心に描いているので、硫黄島での戦いもアッサリ終わっちゃってる印象があり、すこし残念。

その後、硫黄島が日本への本土爆撃の基地になったことを考えると、生き残って本国で悩む主人公たちの姿に感情移入はし難く、正直いって「イーストウッドの映画」という期待感に対して、ちょっと微妙な印象でした。

役者もがんばってるけど、みんな地味な上に年とってからを別の役者が演じていたりしているので、だれがだれだか理解するのにちょっと苦労する。ネイティブアメリカンで生き残った兵士役のアダム・ビーチは「ウィンド・トーカーズ」よりもよかったけれど、似たような役だし、バリー・ペッパーも「プライベート・ライアン」や「ワンス・アンド・フォーエバー」で兵隊役はやりすぎだし(「ワンス~」は従軍カメラマンだけど)。

その代わり、本編終了後に流れる2作目「硫黄島からの手紙」の予告はメチャメチャ面白そう。本作のシーンと交差するところもかなりありそうで、そういった意味でもこれは見ておくべき作品だとは思いますが…。

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2006年11月 3日 (金)

スネーク・フライト

米映画

監督:デイヴィッド・R・エリス

出演:サミュエル・L・ジャクソン ジュリアナ・マーグリーズ ネイサン・フィリップス

面白い! バカバカしいけど、とくかく文句なしで面白い!

予告編でサミュエル・L・ジャクソンが「アイ ヘイト マザー・○ァッキン・スネーク、アンド マザー・○ァッキン・プレーン!(俺はヘビも飛行機も大嫌いだあ)」みたいなことを絶叫しながらキレまくっている姿を見た瞬間から、絶対はずせないと思っていたら、期待以上に面白くバカバカしい傑作でした。

ハワイからロスまでの飛行機を悪い奴らが墜落させるために、数千匹の毒ヘビを貨物室に忍び込ませるという、単純だけど誰もやらなかったバカバカしい内容を大マジメに作っている。タイトル通りとにかくヘビだらけ(原題は「スネーク・オン・ア・プレーン」とほんとそのまんま)。

冒頭、タイトルには全く関係のないハワイの明るいビーチと爽やかな音楽で始まるところから、バカバカしさの期待感が高まり、いよいよ飛行機の中でヘビが放たれるんだけど、最初に犠牲になるのはセックス中(飛行機のトイレの中で)のバカカップルというこの手の映画のお約束はキッキリ守っているし、逃げまどう乗客たちもバカッぽい人ばっかりで、本当になんにも考えずに笑いながら見られます。

でも、サミュエル・L・シャクソンのFBI捜査官はメチャメチャかっこいいし、ヘビの博士なんかが出てきて、けっこうちゃんと捜査とかしてるし、キャラもひとりひとり分かりやすいし、この手の映画にしてはかなりキチンと作られているんで、最後まで飽きずに見ていられます。子供を救うためにオバさんが犠牲になったり、兄弟が助け合うところとか、ちょっとジーンとさせられたりもして。

サミュエル・L・ジャクソンは最近はジェダイ・マスターとか「コーチ・カーター」の先生とか落ち着いた役が多かったけど、やっぱりキレて大声で叫びまくる役をやらせたら天下一品で、ここではその魅力がバクハツしていて、おバカ映画ともいえる内容を大マジメにかっこよく演じている。はっきり言って「パルプ・フィクション」に次ぐ代表作(私の中では)と言ってもいいぐらい最高。ラスト、事件解決後に唐突にサミュエル・L・ジャクソンが唐突にサーフィンしているシーンに切り替わるところも思わず笑ってしまい、最後マデサービス満点。

最初のころの「ER」に出ていたジュリアナ・マーグリーズもちょっと年とったけど、客室乗務員をキリッと演じていてよかったです。ほかのキャストも最初はバカでちょっとイヤ味に見えていたのが、ヘビから逃げ惑ううちに協力しあって意外とみんないい人にみえるとこがなかなかよかった。

はっきり言って、この秋でお勧めするとしたらこの作品!というぐらいの満足度でした。(バカバカしさを楽しめる人には)

ただ、エンディングロールでロックバンドのプロモーション・ビデオがかかるところはいただけなかったけど。(安っぽい深夜番組みている気分に…)

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16ブロック

米映画

監督:リチャード・ドナー

出演:ブルース・ウィリス モス・デフ デビッド・モース

「ダイ・ハード」のブルース・ウィリスと「リーサル・ウエポン」のリチャード・ドナーが刑事もので組むっていう宣伝文句だけど、ここでのブルース・ウィリスはジョン・マクレーンとは大違いのくたびれたダメ親父で、映画もメチャメチャ地味。

ハゲでお腹が思いっきり出ていてアル中気味のニューヨークのダメ刑事ジャック(ブルース・ウィリス)が証人を16区画だけ輸送するだけの任務を襲われ、必死で逃げまくるというもの。

今回のブルース・ウィリスはダイ・ハードみたいな超人的なアクションは全くない(キメるとこはキメるけど)けれど、自分も汚職刑事だった過去をひきずりながら、お人よしの証人(ラッパーのモス・デフ)と接してるうちにだんだん変わってくる様子をけっこうシッカリみせてくれる。

ストーリーは証人を消そうとする悪いやつらから、守り抜くという単純なものだけど、悪役のデビッド・モースが渋く貫禄のある演技でブルース・ウィリスと対等以上の存在感をみせていて、最後まで飽きずに見るとこができる。

リチャード・ドナーは「タイム・ライン」で大失敗した後だけに、地味ながらもさすが職人という感じでシッカリ作っていて(クライマックスは見え見えだったりするけど)、役者も含めてなかなかシブい映画でした。

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犬神家の一族

日本映画

監督:市川崑

出演:石坂浩二 松島菜々子 富司純子 尾上菊之助 松坂慶子 深田恭子 加藤武 大滝秀治

日本のミステリー映画の古典的傑作「犬神家の一族」を大巨匠・市川崑監督の手で30年後のいま再び創られる。しかも金田一耕助は30年前と同じ石坂浩二が演じるということで、「犬神家」にハマった身としては震えがくるぐらいうれしかったです。

何回もテレビドラマでやっていて、ミステリーの定番として誰もがストーリーを知っているといっても過言ではない物語だけど、やっぱり市川監督によるオリジナルのインパクトはものすごかった。

で、この新作だけど、ストーリーやキャラが一緒なのは当然だけど、テーマ音楽、題字やオープニングロールのレイアウトがオリジナルと全く同じ(ここでもう大興奮)で、本編のカット割りや筋立て、セリフまでもオリジナルそっくり。これで作る意味あるの?と思う人もいるかもしれないけれど、オーケストラが名曲を新たに演奏するのと同じようにとっても贅沢なことだと思いました。(市川崑監督の新作が見られるだけでも贅沢なことなのに) セリフや展開が全く一緒なところを楽しむのも面白さのひとつ。

特に90歳になった市川崑監督の研ぎ澄まされた無駄がひとつもない演出と、日本の風景を美しく描き出す映像には改めて圧倒させられる。

数年前に市川監督は「八ツ墓村」でトヨエツを金田一に起用していただけに、再度石坂浩二が金田一をやると聞いて驚いたけど、65歳という年齢をまったく感じさず、やっぱり金田一をやらせたら日本一だった(特に「犬神家」の金田一は)。飄々としつつ、渾身の金田一役には感動すら覚えます。特にラストで観客に向かって会釈する姿は金田一の集大成というか、ホントにお別れといっているよう。

石坂の金田一意外にもオリジナルのキャストがたくさん出ていて、一大イベントとしても楽しめる。なんといっても等々力署長役の加藤武の「よし、分かった」が見れるだけでも1800円払う価値あり! そして神主役の大滝秀治のビックリ顔も。あと多分尾藤イサオもオリジナルに同じ役(刑事)で出ていたような…とにかく贅沢。

新しいキャストも市川監督の演出でそれぞれ役にピッタリはまり、違和感なく楽しめる。

特に佐清役の尾上菊之助と松子役の富司純子の親子がものすごくよかった。菊之助の歌舞伎チックな演技が大仰なミステリーにピッタリあっていて、あおい輝彦以上に佐清役があってました。(青沼静馬も)

深田恭子の旅館の女中(坂口良子がやってた役)も映画をホッとさせてくれてよかったし、奥菜恵も「呪怨」できたえた悲鳴と気絶演技で楽しませてくれます。(ブッチャけ、松島菜々子の珠世の役はちょっとキレイな人なら誰でもいいんだけど)

ストーリーを知っているとかいうことはどうでもよく、とにかく傑作が熟成されてもう一度みられるという贅沢をたっぷり味わう作品ではないかと。

個人的には猿造の「今度やったら殺す!」のセリフがオリジナルと全く一緒だったところがもうたまりませんでした。

(東京国際映画祭にて鑑賞。一般公開はお正月?)

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記憶の棘

米映画

監督:ジョナサン・グレイザー

出演:ニコール・キッドマン キャメロン・ブライト アン・ヘッシュ ローレン・バコール

ニコール・キッドマンのアップがやたら多い映画なんだけど、これがまた美しくググっと引き込まれるサスペンス調の映画。

冒頭、ニューヨークのセントラルパークをジョギングしている男性が急に倒れて、息を引き取るところから映画が始まる。で、すぐに10年が経ってその男性の妻だったニコール・キッドマンはその彼のことが忘れられないながらも再婚相手がみつかり、新しい生活に入ろうとしているところに10歳の少年が現れ、自分はその彼の生まれ変わりだと話す。最初は単なるイタズラだと思っている周囲の人々も生前のことをことごとく言い当てる少年に対して次第に信じるような気持ちが強くなる。特にニコール・キッドマンは思い悩みながらも遂にはその少年を彼として見るようになり…という内容。

オカルト的な内容にも、大人と子供の恋といったキワモノ的な内容にもなりそうな話をニコール・キッドマンの繊細な演技と、ワンシーン毎を丁寧に撮りあげる丁寧で抑えた演出(それでいて冒頭の長回しやアップの多用といった大胆な映像もある)によって、切ない愛の物語になっている。この監督の映画はこれからちょっと注目かもしれない。

ショートカットでキリッとしたニコール・キッドマンはとくかく上手い。上量階級の傷つきやすい女性の表情の変化を美しく、繊細に演じていて、いままでで一番いいと思えるぐらいメチャメチャよかった。

子役のキャメロン・ブライトもニコールを惑わす役を上手く演じている。「ウルトラ・ヴァイオレット」「Xメン3」「アダム」といった映画で不気味系の少年ばかりやっていたんで、不安だったけどここでの彼がいちばんよかった。

あと、ローレン・バコールをはじめとして、実力派の渋いところが脇を占めていてこれがまた贅沢でした。アン・ヘッシュやピーター・ストーメアのほか、ニコールの姉役のアリソン・エリオット(この森で、天使はバスを降りた)、少年の父親役テッド・レヴィン(羊たちの沈黙のバッファロービル!)、母親役のカーラ・セイモア(ホテル・ルワンダの赤十字の人)とか。

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リトル・ミス・サンシャイン

米映画

監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス

出演:グレッグ・キニア スティーヴ・カレル トニ・コレット アラン・アーキン ポール・ダノ アビゲイル・プレストン

低予算のインディペンデント映画ながらもアメリカで大ヒットしたコメディ映画…という程度のことしか知らず、ほとんど予備知識なしで見に行ったら、これが相当面白かった!

タイトルの「リトル・ミス・サンシャイン」というのは、子供のミスコンの名前で、アリゾナ州に住むそれぞれクセのある家族が、末娘がその大会に出場するためにカリフォルボロボロのワゴン車でカリフォルニアに向かうというお話。

みんな人生がままならない「負け組」な家族が、最初はバラバラなんだけど旅を続けていくうちに、虚栄や偏見を捨ててひとつになっていく姿を笑わせながら、感動させて見せてくれる。

出演者はお父さんのグレッグ・キニア、お母さんのトニ・コレット、おじいちゃんのアラン・アーキンとどれも地味だけれど、みんな渋くて上手い。「40歳の童貞男」でブレイクした(見てないけど)スティーブ・カレルも自殺未遂者でゲイの学者という複雑な役だけれど、登場人物の中では一番マトモな伯父さんをヒョウヒョウと演じている。初めて見たけど面白くていい役者さんだった。

そして子供役の二人がそれぞれ個性的でとてもよかった。物語の語り手のような立場のお兄ちゃん役のポール・ダノが特にいい。最初はうっとうしいだけだったけど、だんだん好感が持てるようになってくる。

夫婦の共同監督は派手さや奇抜さはないけど、ストレートにホノボノさせてくれて、画面から誠実さがにじみ出るようで、そんなところも含めてなかなかいい映画でした。

(東京国際映画祭で鑑賞。一般公開はお正月ぐらい)

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