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2006年12月26日 (火)

鉄コン筋クリート

日本映画(アニメーション)

監督:マイケル・アリアス

出演(声):二宮和也 蒼井優 伊勢谷友介 田中泯 工藤官九郎 本木雅弘

松本大洋原作のマンガをアメリカ人のクリエイターが監督して作られた「日本の」アニメーション映画。

原作も読んでなかったし、若干キモいキャラと、かなり奇抜そうな雰囲気に若干引っ掛かりつつも、「一応みておくか」程度の軽い気持ちで見に行ったけれど…、これが大傑作だった! 近年のアニメーションの中でも群を抜く完成度と中身の充実度で圧倒された。そして今年見た映画の中でもNo.1と言ってもいいぐらいでした。

舞台は恐らく日本で昭和の時代のようだけれど、独特の混沌とした町「宝町」で、親がおらず、暴力を頼りに独力で生き抜いている少年クロと、彼と行動を共にする無垢な少年シロの二人を中心にして、宝町を地上げ・再開発をもくろむヤクザたちやギャングや刑事が入り乱れて繰り広げられる、暴力と策謀と善と悪と愛の物語。

松本大洋の独特の絵をこれまた独特だったアニメ「マインド・ゲーム」を製作したスタジオ4℃という製作会社のスタッフがいい具合にデフォルメし、躍動感を与え、そして圧倒的で原作を超えるビジュアルの美術(背景)の中でいきいきと動いている。

そしてシンプルだけど重厚で中身の濃い、ストーリーと構成と演出力にこのアメリカ人監督の才能を見せ付けられました。ハリウッド作品のCGやVFXに携わってきた経歴がありつつ、日本アニメのキモをしっかり掴み、キチンとした作品に仕上げている。「マインド・ゲーム」と「AKIRA」と「イノセンス」と北野武作品(初期の)を併せたような作品でした。

豪華な声優陣もこの凄い内容を壊さず、作品の世界観の構築にそれぞれの個性を生かしている。特に物語の中心ですべてを救う重要な少年シロを演じる蒼井優の演技は圧倒的にすごく、鳥肌が立つぐらい。

また、豪華で多彩な声の出演者たちに混じり、プロの声優もいい味と声の存在感で物語をしっかりと締めている。特に刑事役の西村知道は「パトレイバー」の松井刑事でもそうだったけど、良心的な刑事役をやらせたら玄人で、物語を冷静に外から見る役目をここでもしっかり担っている。

前半は少年たちがマトリックス張りに町を飛び回り、暴力が数珠つなぎで連続する展開に腰が引けたけれど、いつのまにか深く引き込まれ、頭の中をかき回され、感動し、スカッとまではいかないけれどいろいろ考えさせられながらも最後はあったかい気持ちになれました。確かに暴力シーンが多く作品全体を覆っているけれど、よく見ると直接的な暴力描写は少なく、暴力を含む心の闇と戦うといったテーマ(?)のためには必要であり、暴力が支配する内容からラストへの展開には、緊張から感動に繋がっている。ホントウに濃い映画でした。

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2006年12月17日 (日)

上海の伯爵夫人

英米独中合作

監督:ジェームズ・アイボリー

出演:レイフ・ファインズ ナターシャ・リチャードソン 真田広之 ヴァネッサ・レッドグレイプ リン・レッドグレイプ

「眺めのいい部屋」(見てないけど)、「ハワーズ・エンド」、「日の名残り」などの文芸作品の名匠ジェームズ・アイヴォリー監督作品で、「日の名残り」の原作者でイギリス文学界ですごい実績を残すカズオ・イシグロが書き下ろしたオリジナル脚本による作品。そして名監督、名優たちの作品に真田広之が出ているっていのもポイント。(日本であんまり話題になってないような気もするけど)

1936年の上海を舞台に、ロシアから移り住んできた没落貴族の伯爵夫人がと、盲目の元米国外交官のロマンスを描いた物語。亡き夫に替わりプライドばかり高いロシア貴族一家を食べさせるために上海のダンスホールで働く薄幸の未亡人と、事故(テロ?)で家族を亡くし、視力も無くした元名外交官で今は最高の「バー」を上海に作りたいと夢見る男の秘めた恋を、激動の当時の上海の情勢の中で描くといった、ひとつ間違えばドロドロ甘々のメロドラマになるところを、メロドラマには違いないけど、ジェームズ・アイヴォリー監督の丁寧な演出によって上品で繊細な映画になっている。

ウォン・カーウァイ作品で有名なカメラマン・クリストファー・ドイルの撮影によるところも大きいんだろうけど、雑多かつ重厚な1930年代の上海の様子がメチャメチャ雰囲気出ていて、作品のグレードをグッと引き上げている。

盲目の元外交官を演じるレイフ・ファインズ(英国の外交官に見えちゃうけど)と、伯爵夫人のナターシャ・リチャードソンはそれぞれ悲しい役を静かに繊細に演じ上げ、映画に緊張感を与えつづけている。ナターシャ・リチャードソンっていう人はよく知らなかったけど、地味だけど上手い。没落した貴族のオバちゃんたちを演じるヴァネッサ&リンのレッド・グレープの大女優姉妹も映画にコクを与えている。(ナターシャ・リチャードソンはヴァネッサの娘らしいけど)

そして謎の日本人役の真田広之は、英語は上手いし、名優レイフ・ファインズにも負けてないし、重要な役としてアイヴォリー作品でしっかりと印象を残していました。

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エラゴン 遺志を継ぐ者

米映画

監督:シュテフェン・ファンマイアー

出演:エド・スペーリアス ジェレミー・アイアンズ シエンナ・ギロリー ロバート・カーライル ジョン・マルコヴィッチ

「ハリポタ」「ロード・オブ・ザ・リング」の成功により、相次ぐファンタジー・ベストセラー小説の大作映画化の新作…なんだけど、ちょっとこれはレベルが低すぎのような気が…。

まず時間が短すぎる。長い映画がいいとは言わないけれど、ファンタジーとして、その舞台となる世界がどんなものかが説明できていないし、キャラひとりひとりの掘り下げも不十分だし、話も単調で単純すぎる。

主人公の師匠的な役の名優ジェレミー・アイアンズはいい味出してるけど、悪役ロバート・カーライルはキモくていいけどイマイチどういうヤツなのかよく分からないし(思ったほど弱っちいし)、反乱軍の姫とかもなんで戦ってるのかよく分からないし、一番期待していた悪の王ジョン・マルコヴィッチに至っては出番少なすぎ(全部ひとつのセット内ですませているし)。

ドラゴン(声のレイチェル・ワイズはいいけど)も物語の核の割にはイマイチ魅力に欠けるし、主人公エラゴン役の人も「ナルニア~」の主人公たちより個性がないし。

これで三部作つくられてもちょっと辛いです(「GOAL!」並に)。

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2006年12月16日 (土)

王の男

韓国映画

監督:イ・ジュンイク

出演:カム・ウソン イ・ジェンギ チョン・ジニョン カン・ソンヨン

16世紀初頭の朝鮮を舞台に、王をバカにした出し物をした芸人が、王を侮辱した罪で捕まり、王を笑わせないと死罪とう難題を克服し、宮廷お抱えの芸人となるものの、その中の女形の美男の芸人が異様なまで王の寵愛を受けるようになり、宮廷のドロドロした関係や政治に巻き込まれて運命を狂わせていくというお話。

韓国では歴代の興行成績を覆す記録的大ヒットとなり。日本でも前評判がメチャメチャよかったんだけど…

はっきりいって、ちょっと微妙…

宮廷の重厚な感じや、美男の芸人役のイ・ジェンギも妖艶さがよく出ていたし(及川ミッチーを思い出してしまうけど)、主演のカム・ウソンもよかったんだけど、ちょっと乗れなかったというのが正直な感想。

肝心の芸のシーンであんまり笑えなかったというのが一番の原因なんだけど、韓国人には面白いのか分からないけど、なかなか笑えないうちに、もう王が爆笑してしまって…

あと、王がイ・ジェンギのにのめり込むといっても、王の部屋で人形劇するぐらいで、なんか消化不良な感じが…

でもラストにかけてははなかなかグッときたし、全体のトーンはしっかりしているし、完成度は高い作品でした。

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2006年12月15日 (金)

硫黄島からの手紙

米映画

監督:クリント・イーストウッド

出演:渡辺謙 二宮和也 加瀬亮 伊原剛志 中村獅童 裕木奈江

硫黄島の戦いを舞台にして、アメリカ兵を主人公にして描いた「父親たちの星条旗」に続き、主要なキャストを日本人の有名俳優で占めた、日本人の視点から描かれた「名監督」クリント・イーストウッドの作品。

敗戦色の濃い、昭和20年2月の硫黄島に渡辺謙扮する栗林忠道中将が総司令官として着任する。米軍との決戦を前に、玉砕覚悟で非効率な作戦(陣取り)を次々を見直し、米軍を長く苦しめる持久戦を繰り広げていく。

渡辺謙と、ペーペーの兵隊役の「嵐」の二宮和也の2人を中心に物語が進んでいく。二宮演じる二等兵は回りが次々と死んでいく戦場において生に執着する平凡な男で、人格者で高潔な実在の人物栗林中将とは対象に描かれている。

イーストウッド監督なので、かなりの完成度を期待して行ったけど、日本映画以上にしっかりと日本人が描かれていて、ビックリ!(絶対日本人に見えない日本兵のエキストラもチラホラいたりするけど)

とにかく当時の硫黄島の状況や日本兵、日本の描き方が緻密で、キチンと描かれていて、どれぐらい日本人が関与しているか分からないけれど、その調査力と脚本家(アイリス・ヤマシタという日系人らしいけど)の力量に感心させられた。

それに加えてイーストウッド監督独特の静かな映像美や、日本映画とは決定的に差がある迫力とリアリティで、映画としての満足度もかなり高い。

正直物足りなさが残った「父親たちの星条旗」は、硫黄島のシーンと戦後やアメリカ国内のシーンとが交錯して焦点も絞りずらかったのとは対象的に、初めから終わりまで硫黄島で、そこで散っていく日本人をジックリ描いた本作は数倍面白かった。

役者も、正直パッとしなかった「父親たち~」の俳優陣に比べて、日本人のキャストの集中力も凄く、日本映画ではなかなか見られない緊張感と、イーストウッド監督の人物の描き方がすごくいい感じを出している。特に物語全般の目撃者で重要な役の二宮和也が上手くてビックリしました。あと加瀬亮もよかったし、名前は知らないけど中盤まで二宮と一緒にいる兵隊役の人もなかなか良かった。渡辺謙も「SAYURI」よりぜんぜんよかった。

戦闘シーンやラストにかけての盛り上がりがややアッサリ感が強いけど、栗林中将がどんな人だったのか等あらためて硫黄島について知りたくさせられる、誠意のこもった作品でした。

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2006年12月 8日 (金)

キング 罪の王

米映画

監督:ジェームズ・マーシュ

出演:ガエル・ガルシア・ベルナル ウィリアム・ハート ペル・ジェームズ ローラ・ハーリング ポール・ダノ

「アモーレス・ペロス」「バッド・エデュケーション」なんかのラテンの貴公子ガエル・ガルシア・ベルナルが英語で主演した初めての映画だそう。

ガエル演じるエルヴィスという青年が海軍を除隊して、テキサスの田舎町にやってくる。そこにはウィリアム・ハート扮する、かつて彼を身篭っていた母親を捨てた父親が牧師となり、新しい家庭を築いていた。エルヴィスはその異母妹となる娘を誘惑するなど、家庭に近づき、許されない行為を次々と重ねていく…といったお話。

「チョコレート」(ハル・ベリーがアカデミー主演女優賞とったやつ)と同じ脚本家によるストーリーで、ドキュメンタリー中心に活動してきた監督によるストーリー、映像は、飾りを一切廃し、ストレートに心にグサグサくる。ガエル・ガルシア・ベルナルによる禁断で背徳な物語が、繊細で乾いた印象で淡々と描かれていく。

ガエルの抑えた英語の演技が相変わらずのギロッとした眼の演技を引き立たせていて、改めて上手いなあと感心させられた。

そして、ジム・ジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」のラスト近くでビル・マーレイの傷ついた心をちょっとだけ癒し、私の眼をスクリーンにクギ付けにした花屋の店員“サン・グリーン”役のペル・ジェームズが、ガエルに誘惑され、翻弄される悲劇の少女を凛としながらもどこか艶かしく演じている。「ブロークン~」の短いけど強かった印象に比べるとちょっと地味に感じるけど、実は27歳なのに16歳の少女をリアルに演じている。ガエルに夢中になりその罪さえ許し受け止めていた少女が真実に気付いた時の表情が物語の緊迫感をかきたててよかったです。

ある意味ノーテンキな父親役のウィリアム・ハートは昔の爽やか・知性系のキャラから、最近こんなアクの強い役が多くなってきたけど、自己中心的で欺瞞に満ちた人物をニクニクしく演じている。だけど別の面から見ると、罪を認めながら不器用で懸命に生きている人にも見え、そこまでされる必要があるのか?とも感じさせられ、ガエルのキャラも含めて、思い出す毎に違った印象・一面がある映画だった。

あと「マルホランド・ドライブ」で謎の美女をド派手メイクで演じたローラ・ハーリング(当時はローラ・エレナ・ハリングっていっていたと思うけど)が地味メイクでお母さん役を控えめに演じている。ぜんぜん印象が違ったけど道路をフラフラ歩くシーンはちょっと「マルホランド~」を思い出しました。

それから「リトル・ミス・サンシャイン」でいい味出しているポール・ダノが悩める一家のかわいそうな息子を地味に演じている。ボワーっとした白人少年役が、ギラッした眼のガエルと対象的でこれはこれでよかった。

悲惨なストーリだけど、なぜか爽やかな印象を受ける不思議な作品でした。

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2006年12月 3日 (日)

007 カジノロワイヤル

英・チェコ・独・米合作

監督:マーチン・キャンベル

出演:ダニエル・クレイグ エヴァ・グリーン ジョディ・デンチ マッツ・ミケルセン ジェフリー・ライト

ジェームズ・ボンド役が、すっかりお馴染みになったピアーズ・ブロスナンから、スピルバーグの「ミュンヘン」でもスパイ(殺し屋?)役だったダニエル・クレイグへと、一気に若返った第1作目。

同じタイトルで、かなり昔にピーター・セラーズがボンド役をやった(その他ウディ・アレンとか4・5人がボンド役で出てきた)、長~いコメディ映画をテレビで見た気がしたけど、もともと「カジノ・ロワイヤル」ってはじめてボンドが登場した小説だそうで、今回の映画化は007映画の王道としてマジメに作られている。

マンネリっぽくなったイメージを打破するためか、その最初の小説を原作にもってきて「ボンドが“007”になったばかり」という設定にして、改めて新たなスタートを切っている。

と、いうことで今回はメチャメチャ硬派な作りで、珍しい新兵器も出てこず、核兵器やら人工衛星からのビーム砲みたいな突飛な脅威でもなく、ボンドはひたすらテロリストへの資金源を断つために働くという、リアルっぽいスパイ映画になっている。ブロスナン版の007や「M:i:Ⅲ」なんかに比べると地味な印象はあるけど、脚本に「クラッシュ」のポール・ハギス(イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」や「父親たちの星条旗」の脚本も書いている)が加わったこともあったのか、人間的な描写がしっかりしているように感じ、見応えはこっちのほうがあった。

新ボンドのダニエル・クレイグは、どっちかといえば悪人顔で初めは違和感もあったけれど、それはボンドも“007”になりきっていない設定でやたら暴力的に見せたりしているせいもあり、だんだん見慣れてきて最後にはボンドに見えるようになった。

そして、ベルトリッチの「ドリーマーズ」で鮮烈なデビューをしたフランス人女優のエヴァ・グリーンがボンドガールで出ているけれど、これがメチャクチャいい!演技も上手い(と思う)けど、なによりももの凄く美しい。(特に厚化粧落とした後の顔がいい)

あと、ブロスナン版から“M”を演じている大女優ジョディ・デンチ(もう出ないかと思っていたけど)も、相変わらずしっかりと存在感を出している。

リアルになったとはいえよその大使館で銃撃戦するなどメチャクチャなところがあったり、いまいち分かりにくい部分もあったり、ラストはなんでMがそこまで事件の真相知ってんの?とかとつっこみたくなるところも結構あったりするけど、次作に向けてハードルが高くなったんじゃないかと思うほど、けっこう満足感は高かったです。(実はあんまり活躍してなかったり、仕事を捨てようとするボンドもなかなかよかったような)

余談だけど、一番のみどころは初めのあたりで、ボンドから遮二無二逃げる黒人のアクションだったりして(ジャッキー・チェンのアクションをみているみたいで、ちょっとビックリ。ボンドもあれぐらい動けば最高だったのに…)。

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2006年12月 2日 (土)

イカとクジラ

米映画

監督:ノア・バームバック

出演:ジェフ・ダニエルズ ローラ・リニー ジェス・アイゼンバーグ オーウェン・クライン

ウェス・アンダーソン(この映画の製作もしている)の「ライフ・アクアティック」の共同脚本もしていた監督による、80年代の壊れかけながらも絆を確認しあう家族を描いた、独特で可笑しくちょっと悲しいコメディ。

1986年(監督の少年時代らしい)のブルックリンを舞台に、作家の両親(父は昔売れていたが今は売れず大学で講師をしていて、母は人気作家)が離婚することとなり、その子供たち(16歳の兄と12歳の弟)を中心に、揺れ動く気持ちを表すまたは見透かすかのように全編手持ちのカメラで撮影され、4人の家族それぞれが不器用ながらも懸命に生きる道を模索する姿をコミカルにそして辛らつに描かれている。

最近は「サム・サッカー」とか「リトル・ミス・サンシャイン」とか問題を抱えた家族を描いたコメディが多く公開されているけれど、これもその系列にあるような映画だけど、想像とちがってかなり抑えたコメディで、そこがまた独特で可笑しかった。

主演の夫婦はジェフ・ダニエルズとローラ・リニーの渋い2人で、ギクシャクしたインテリの(元)夫婦を絶妙に演じている。特にジェフ・ダニエルズ(「スピード」でキアヌの相棒だった人)の、ケチでダメな父親が独特の雰囲気でとてもよかった。

中年になってますます油ず乗ってきたローラ・リニーももちろん上手いけど、ここでは個性的でおかしい家族の中でちょっとシリアスさが勝っているちょっと損な役。

子供役の2人も、不安定な兄弟を繊細で可笑しく演じていてなかなかよかった。中でも弟役のオーウェン・クラインは、あのケヴィン・クラインとフィービー・ケイツの子供ということらしいけど、あぶない役を飄々と演じていて感心。

ラストにかけて若干物足りなさは残るものの、コンパクトにまとまっていて、主役ともいえる兄(たぷん監督自身がモデル)の不安定な気持ちの揺れが映画全体のムードから伝わってくるセンスのいいホームドラマでした。

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武士の一分

日本映画

監督:山田洋次

出演:木村拓哉 壇れい 笹本高史 坂東三津五郎 桃井かおり 小林稔侍 緒形拳

「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」に続く、藤沢周平作品を原作とした山田洋次監督の時代劇の第三弾にして、ラストになるらしい作品。

前2作と同様、庄内にある海坂藩内を舞台に、真田広之、永瀬正敏といった演技派・個性派が演じてきた主人公を木村拓哉が演じ、宮沢りえ、松たか子が演じてきたヒロインは元宝塚の娘役トップスターの壇れいという女優が演じている。これまでは下級武士の生活や戦いといったストーリーに沿って、なかなか打ち明けられない秘めた恋が重要な物語の核となっていたけれど、今回は最初から夫婦であり、ストレートな夫婦愛を描いた作品になっている。

殿様の毒見役の下級武士が、毒にあたり失明してしまう。失意の底にある夫に妻は献身的につくし、そして守るために…といったお話。

前2作は城下での暮らしぶりや人間関係、または当時の風景なんかをジックリ描いていたのに対して、今回は主人公の失明というショッキングな事件が核としてあることから、その悲劇に直面して乗り越える夫婦の営みに物語の焦点を絞り、本当にシンプルな内容になっている。

標準語というか時代劇言葉というか、決まりきった言葉遣いのウソくさい時代劇(江戸が舞台ならまだいいけど)が大半を占めるなかで、山田時代劇はその時代の文化・風俗を丁寧に描くのと同様に土地の言葉を重んじて、登場人物には方言を守らせている。いつもながら庄内弁での軽妙な会話が心地よく、また真心や真剣さがストレートに伝わってくるところがとてもいいです。

これまでのテレビドラマの演技なんかはどこがいいのかあんまり分からなかったし、映画といえはウォン・カーウァイの「2046」ぐらいでそれもツギハギだらけの映画で出番も少なく、強い印象がなかったけれど、今回の木村拓哉の集中力というか演技力はなかなか凄くて、感心させられた。庄内弁での演技は、テレビなんかではみられない親しみやすさで、また盲目となったはずの目の演技にはドキッとさせられました。

そして映画初出演らしい壇れいが前2作のヒロインとは趣きが違うものの、キムタクにしっとりよりそう姿は感動的で、端整な顔立ちがとてもいいです。

笹野高史、赤塚正人、小林稔侍といった脇を固める人達もそれぞれ個性がでていて、特に桃井かおりが憎たらしいオバさんを面白く演じてよかったです。また、坂東三津五郎の悪役も迫力たっぷりでさすがに上手い。

前2作は光の加減や小道具の使い方や暮らしぶりの描き方にこだわりつくし、奥行きがあったのに比べると、ちょっと急作りっぽくもあり(キムタクのスケジュールの都合なのか)、若干物足りなさは感じるものの、シンプルにストーリーの中で主人公夫婦の心情に集中し、素直に感動させられる一品でした。

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