ツォツィ
英・南アフリカ合作
監督:ギャヴィン・フッド
出演:プレスリー・チェエニヤハエ テリー・ペート ケネス・ンコースィ モツスィ・マッハーノ
2006年にアカテミー賞外国語映画賞を受賞した、南アフリカのスラム街に生きる若者を生々しく描いた人間ドラマ。
南アフリカ共和国というと、アパルトヘイトとネルソン・マンデラぐらいしか知らず、言語も英語だとばかり思っていたけれど、英語とは異なる現地の言葉で生活している。この映画も外国語映画賞をとったぐらいなので、登場人物たち(白人の刑事まで)はその現地語を話しているんだけど、南アフリカの現在の状況(の一部)を教えられるとともに、現地語で語られるドラマには真実に迫るものがあり、英語で描かれる欧米製のアフリカの映画とも異なり、リアルさをかきたて、心にグッと迫ってくる。
アパルトヘイトは廃止されたとはいえ、貧しい黒人たちは教育もなく、スラム街のようなところで、ひしめき合いながら生きている。そこで親もなく、犯罪に手を染めながら自力で生きてきた少年ツォツィが主人公。「ツォツィ」というのは、南アフリカで「チンピラ」「不良」とかを意味するスラングのことらしいんだけど、幼くして親のところから逃れ、土管みたいなところで生きてきた彼には暴力しか頼るものがなく、誰にも本名も教えずそう名乗って生きている。
そんなツォツィが山の手に住む裕福な黒人の夫人を襲い、高級車を奪って逃走したところ、なんとその後部座席には赤ん坊が乗っていて、見捨てることが出来なかったツォツィはスラムの自分の部屋に赤ん坊を連れ戻り、世話をすることにする。
若干「プロジェクトBB」っぽい展開ではあるものの、この映画はあくまでもシリアスに赤ん坊と接するうちに微妙の変化していくツォツィの感情を丁寧に描いていく。
とはいえ、映画は説明的なセリフは一切なく、ツォツィが何を考えて行動しているのか十分理解しきれないまま、進んでいく。だけど恐らくツォツィ自身も自分が何をしたいのか、どうなりたいのかが分からずもがいていて、そんな姿を見ながら一緒に考えるからこそ、ラストはかなり感動させられる。(特にラストカット!)
ツォツィ役のプレスリー・チュエニヤハエという南アフリカの俳優はほとんど無表情で最初は何を考えいてるのかさっぱり分かんなかったけど、誰にも心を見せずに生きてきたツォツィの役としては相当ハマッて見えました。
ツォツィに銃で脅され赤ん坊にお乳を与えさせられる、スラム街に住む女性役の女優さん(テリー・ペート)も、貧しいながらも気高く生き、ツォツィを癒していく女性をやさしく演じていて、とても印象深かった。
この手のアフリカものというか、スラムものはよくドキュメンタリータッチで手持ちカメラで撮影されることが多いけれど、ギャヴィン・フッドという南アフリカの監督は、きちんと丁寧にスラムの様子を写し出し、山の手というか都市部とスラムの間を象徴的に描いたり、かなり入りやすく物語に集中することが出来る。
ツォツィの理不尽な行動に中盤までは納得できずにみていた部分もあったけれど、終わってみれば文化や環境は全く違いながらも、共感できた映画であり、そんな目でもう一度みたくなる作品でした。
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