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2007年4月30日 (月)

ツォツィ

英・南アフリカ合作

監督:ギャヴィン・フッド

出演:プレスリー・チェエニヤハエ テリー・ペート ケネス・ンコースィ モツスィ・マッハーノ

2006年にアカテミー賞外国語映画賞を受賞した、南アフリカのスラム街に生きる若者を生々しく描いた人間ドラマ。

南アフリカ共和国というと、アパルトヘイトとネルソン・マンデラぐらいしか知らず、言語も英語だとばかり思っていたけれど、英語とは異なる現地の言葉で生活している。この映画も外国語映画賞をとったぐらいなので、登場人物たち(白人の刑事まで)はその現地語を話しているんだけど、南アフリカの現在の状況(の一部)を教えられるとともに、現地語で語られるドラマには真実に迫るものがあり、英語で描かれる欧米製のアフリカの映画とも異なり、リアルさをかきたて、心にグッと迫ってくる。

アパルトヘイトは廃止されたとはいえ、貧しい黒人たちは教育もなく、スラム街のようなところで、ひしめき合いながら生きている。そこで親もなく、犯罪に手を染めながら自力で生きてきた少年ツォツィが主人公。「ツォツィ」というのは、南アフリカで「チンピラ」「不良」とかを意味するスラングのことらしいんだけど、幼くして親のところから逃れ、土管みたいなところで生きてきた彼には暴力しか頼るものがなく、誰にも本名も教えずそう名乗って生きている。

そんなツォツィが山の手に住む裕福な黒人の夫人を襲い、高級車を奪って逃走したところ、なんとその後部座席には赤ん坊が乗っていて、見捨てることが出来なかったツォツィはスラムの自分の部屋に赤ん坊を連れ戻り、世話をすることにする。

若干「プロジェクトBB」っぽい展開ではあるものの、この映画はあくまでもシリアスに赤ん坊と接するうちに微妙の変化していくツォツィの感情を丁寧に描いていく。

とはいえ、映画は説明的なセリフは一切なく、ツォツィが何を考えて行動しているのか十分理解しきれないまま、進んでいく。だけど恐らくツォツィ自身も自分が何をしたいのか、どうなりたいのかが分からずもがいていて、そんな姿を見ながら一緒に考えるからこそ、ラストはかなり感動させられる。(特にラストカット!)

ツォツィ役のプレスリー・チュエニヤハエという南アフリカの俳優はほとんど無表情で最初は何を考えいてるのかさっぱり分かんなかったけど、誰にも心を見せずに生きてきたツォツィの役としては相当ハマッて見えました。

ツォツィに銃で脅され赤ん坊にお乳を与えさせられる、スラム街に住む女性役の女優さん(テリー・ペート)も、貧しいながらも気高く生き、ツォツィを癒していく女性をやさしく演じていて、とても印象深かった。

この手のアフリカものというか、スラムものはよくドキュメンタリータッチで手持ちカメラで撮影されることが多いけれど、ギャヴィン・フッドという南アフリカの監督は、きちんと丁寧にスラムの様子を写し出し、山の手というか都市部とスラムの間を象徴的に描いたり、かなり入りやすく物語に集中することが出来る。

ツォツィの理不尽な行動に中盤までは納得できずにみていた部分もあったけれど、終わってみれば文化や環境は全く違いながらも、共感できた映画であり、そんな目でもう一度みたくなる作品でした。

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ママの遺したラブソング

米映画

監督:シェイニー・ゲイベル

出演:ジョン・トラヴォルタ スカーレット・ヨハンソン ゲイブリエル・マック デボラ・カーラ・アンガー

最近はセクシーさと上手さをかねそろえて、大躍進しているスカーレット・ヨハンソンだけど、この映画はけっこう前に作られたものらしく、ここではまだ少女の役を演じている。

離れ離れに暮らしていた母親が死に、パーシー(スカーレット・ヨハンソン)が故郷に戻ってくると、母の家には同居していた男ふたりがそのまま居ついてしまっていた。その男たち、元大学教授(文学専門の)のジョン・トラヴォルタと、作家志望で元教授の伝記みたいなものを書いている青年は、働きもせず酒ばかり飲んでダラダラ過ごしいてる状況で、はじめはいがみ合い、おたがい相手を追い出そうと口論したりするんだけど、だんだん打ち解けあい、それぞれの人生の再生に向けていろいろしていくみたいなお話。

スカーレットは相変わらずというか、このころからというか色っぽいけれど、揺れる少女の心を上手く表現している。

驚くのはトラヴォルタのヨレヨレぶりで、白髪で相当薄くなった頭は天然なのかメイクなのかのほうが、演技よりもメチャメチャ気になってしまった。

トラヴォルタが文学の教授で、もうひとりの青年も作家志望なだけに、いろんな文学が引用されて、それぞれがいい言葉で感心させられる。また、話の筋もなかなか感動的なんだけど、ほとんどのことを言葉で説明しちゃって、動きが少ない映画なんで、はっきりいって途中でけっこう飽きてきてしまう(少なくとも私は)。そんなことを考えながら見ていたらいつの間にか終わっていた…そんな映画でした。

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2007年4月29日 (日)

ラブソングができるまで

米映画

監督:マーク・ローレンス

出演:ヒュー・グラント ドリュー・バリモア ブラッド・ギャレット クリスティン・ジョンソン

ヒュー・グラントとドリュー・バリモアっていうラブコメ映画の重鎮ふたりが初競演した、音楽業界ネタのモロど真ん中のラブコメ映画。

ヒュー・グラントが扮するアレックスは、80年代に大人気を博したポップ・グループのメンバーなんだけど、バンド解散後はまったく売れず、今は遊園地や同窓会なんかをまわって、かつてのヒット曲を歌う生活を送っている。そんな彼がある日、売れっ子の歌手から曲作りを依頼されるんだけど、作詞がなかなかはかどらず、偶然出会ったドリュー・バリモア扮するかつて文学を専攻していた女性に作詞の才能があるのが分かり、二人で曲を作る共同作業を始める…みたいなお話。

出会って最初は何とも思わない男女2人が次第に惹かれあい、付き合うようになり、途中で意見が合わなくなって別れ、ラストでよりを戻すといった、この手の映画のパターンそのままなんだけど、この2人の熟練したラブコメ演技によって、軽~い気持ちで楽しむことができる。

ヒュー・グラントの歌手役は見ていてこっちが恥ずかしくなるようなところもあるものの、二枚目半役は相変わらず巧い。(というより、こればっかという感じだけど)

ドリュー・バリモアは最近の「50回目のファーストキス」「2番目のキス」に比べたらちょっとソフトな感じがするけど、クシャっとしたとする表情は相変わらずで、なんかホッとさせられました。

あと、ドラマ「ER」ではメチャメチャ怖い看護師長役だったクリスティン・ジョンソンが、ドリューバリモアの姉さん役でけっこう笑わせてくれるんで、こんど「ER」の見方もちょっと変わりそうです。

肝心の人気バンド時代のシーンなんかはイマイチ笑えないし、二人が作る曲もいいんだか悪いんだか良くわかんなかっりしたけれど、2人の掛け合いやら、コメデイセンスやらをゆる~く楽しむのもいいもんでした。

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バベル

メキシコ映画

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イリャニトゥ

出演:ブラッド・ピット ケイト・ブランシェット ガエル・ガルシア・ベルナル 役所広司 菊池凛子 アドリアナ・バラッサ

菊池凛子がアカデミー助演女優賞ノミネートで日本のニュースでもメチャメチャ話題になったメキシコの奇才アレハンドロ・ゴンザレス・イリャニトゥ監督の最新作。

タイトルの「バベル」は旧約聖書に出てくるひとつのエピソードで、かつて人間の言葉はひとつだったものを、神の怒りに触れ、言語を別たれたことから持ってきたそう。この言語の隔たりとともに人間関係、心の隔たりによっておこる悲劇と再生を、モロッコ、日本、アメリカ=メキシコを舞台にそこに生きる全く異なる人々の、でも「隔たり」ということを内包していることでは共通した物語が平行して進行していく。

イリャニトゥ監督は衝撃的なデビュー作「アモーレス・ペレス」でも用いた、いくつものエピソードを積み重ねて、突き刺さるような人間の衝動や哀しみや愛情を表現していく手法は、さらに洗練され、ググッと胸に迫ってくる、迫真で重厚な一作になっている。

エピソードは大きく4つに別れていて、モロッコを旅行するプラピ=ケイト・ブランシェット夫妻のうち妻が銃弾に倒れる事件を描いたもの、撃ってしまったモロッコ人一家の悲劇、ブラピ夫妻の子供を米国で面倒みている家政婦が息子の結婚式に出席すめためにメキシコに帰る話と、事件で使われた銃のかつての所有者だった役所広司とその娘である聾唖の女子高生(菊池凛子)が描かれる日本の話。

菊池凛子は助演女優賞ノミネートとはいえ、役所広司の出番はちょっとだけで、日本でのエピソードでは堂々主役を張っている。母親に自殺され、心に傷を負い、周囲との関係を構築できずにもがき苦しむ聾唖の女子高生を文字通り体を張って衝撃的に演じている。飛びぬけた無邪気さと、突き刺すような表情、そして思い悩み慟哭する姿をグロテスクに美しく演じている。「ナイスの森」のツンケンした眼鏡の委員長役ぐらいでしか記憶になかったんだけど、かなりビビるぐらいの迫力で、他のエピソードとは若干異質なパートを引っ張っていっている。

役所広司は出番は少ないながらも重要な役で、この国際的な映画で最もといっていいぐらいの印象をしっかり残しており、やっぱり凄いです。

で、話題になっている菊池凛子以外にも、前作「21グラム」でのショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロのように、他のキャストも凄い演技をしていて、息つくヒマもなく、映画がすすんでいく。

ブラッド・ピットは、妻を撃たれ、全くの異国の地であるモロッコで途方にくれる男をかなりいい感じで演じている。最近は「オーシャンズ~」とか「Mr.&Mrs.スミス」みたいなお気楽な役が多かったけど、白髪もぜんぜん隠さずに苦悩する普通の中年男を演じきっている。最近では一番いいです。

ケイト・ブランシェットも撃たれて瀕死の状態ながらも、圧倒的な演技力と存在感をみせつけてくれる。この2人の組み合わせがメチャメチャ合っていて、アンジェリーナ・ジョリーなんかよりぜんぜんいい。

「アモーレス・ペレス」の主役でメキシコの貴公子と呼ばれるガエル・ガルシア・ベルナルが出ているパートでは、ガエルはあくまでも脇役で、主役はブラピ一家の家政婦を演じるアドリアナメバラッサというメキシコの女優さん。メキシコでの息子の結婚式があるのにブラピ夫妻の事件により、代わりの子守も用意してもらえなくなり、やむを得ず子供たちもつれてメキシコに行ってしまうが…みたいなお話。彼女もこの映画でアカデミー助演女優賞にノミネートされているぐらいで、「私はなにも悪いことはしていない。ただ、愚かなことをしてしまっただけ」と嘆く、善良な不法就労者の女性を演じ、涙を誘う。

そして、モロッコにおける加害者側のモロッコ人一家のパートは、ぜんぜん有名人は出ていないけれど、無垢なだけに悲劇性の強い少年たちの物語をストレートに演出していて、この映画の雰囲気作りを決定付けている。

時間をちょっとずつずらしながら各エピソードが有機的につながりながらも、それぞれが凄い光を放っている。言語の隔たりの他、国家、貧富、世代、苦悩、いろんな隔たりを描きつつ、どのエピソードも悲劇を描いているんだけど、ところどころに希望や意外な繋がりが描かれ、ただの悲劇ではなく、見終わった後、いろいろ考えさせられる濃厚な映画でした。

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ハンニバル・ライジング

英・チェコ・仏・伊合作

監督:ピーター・ウェーバー

出演:ギャスパー・ウリエル コン・リー リス・エヴァンス ドミニク・ウェスト

「羊たちの沈黙」(大傑作!)、「ハンニバル」(微妙…)、「レッド・ドラゴン」(まあまあ…)と続くハンバル・レクターシリーズの最新作にして、レクター博士の幼少時代から、青年となり殺人鬼として目覚めていく姿を描く、いわゆる「エピソード1」的な映画。

悪役で殺人鬼でありながら、あふれる知性と洞察力、そしてそれらを上回る不気味さ、そしてアンソニー・ホプキンスの至高の演技によって、映画史上でもダース・ベイダーと並ぶぐらいのキャラクターとして君臨している役を、その若き日の姿っていうことで、フランスの若手俳優ギャスパー・ウリエル(最近では「パリ、ジュテーム」でガス・ヴァン・サントのパートでいい味出していた)が演じている。

「ハンニバル」がヒットしたおかげで、時代を遡って、せっかく自由になったレクターを監獄に戻して「レッド・ドラゴン」を作っちゃう時点ですごいなあと半分あきれていたけれど、今度は若いころを描いちゃうっていうんでけっこうビックリ。(半分楽しみではあったけど)

トマス・ハリスによる「ハンニバル」の原作の中にレクターの少年時代が回想シーンでちょっと出てきていたんで、まさかそれを膨らませて映画にしちゃったのか?と思っていたら、キチンとハリスにより「ハンニバル・ライジング」っていう原作が描かれていたんですねえ。

お話は、第二次世界大戦終盤、リトアニアの貴族(城主)の子息として平和に暮らしていたハンニパルだけれど、ドイツ軍がリトアニアに侵攻し、ドイツ軍とロシア軍の戦闘に巻き込まれ、両親と死別し、幼い妹と敗走するドイツ兵(実際にはナチスに協力するリトアニア人)に捕まり、壮絶な体験をする。その後、孤児院に入り、そこを出て、叔父さんを頼ってフランスに行く。その叔父さんは日本人女性(コン・リー)と結婚しており、その女性と暮らすうちに日本文化も吸収しながら育つ。そして、パリで医学生となった後、その元ドイツ兵たちを探し出し、復習を果たすといった感じのもの。

トマス・ハリスの原作は、日本の俳句やら詩やら日本文化がタップリ紹介されたり、あいかわらず面白かったんだけど、映画ではかなり端折られている。ただし、今回はトマス・ハリス自らが脚本を書いているだけあって、雰囲気というか本筋は守られていて、原作読んでると物足りなさは残るものの、「ハンニバル」の端折りかたよりは全然よかったです。

アンソニー・ホプキンスには遠く及ばないものの、ギャスパー・ウリエルのハンニバルもそれなりの雰囲気を醸し出していてなかなかでした。(立ち方とか、「羊たち~」のハンニバルそっくりだし)

「SAYURI」に続き日本人役に若干無理を感じちゃうコン・リーだけど、日本語なんて一個もしゃべらないし、その辺気にしなければ、アジアを代表する女優としてやっぱりキレイだし、貫禄と眼力と色気でいい味だしている。

「ノッティングヒルの恋人」「ヒューマン・ネイチュア」なんかで抜群のコメディセンスヲ見せたリス・エヴァンスが元ナチスの悪いやつを憎たらしく演じてるんだけど、これがけっこうハマッてて、美しくてスマートなハンニバルといいバランスが取れている。

「真珠の首飾りの少女」で光と影を巧みに活かしながら中世ヨーロッパを濃密に描いていたピーター・ウェーバー監督はこの手のスリラーをやるのはかなり意外だったけど、ここでもパリの街並みなんかを重厚に映し出し、ハンニバルのキャラをけっこうちゃんと浮かび上がらせている。

ちょっと物足りなさを感じちゃうのは、ハンニバルはバンバン殺しまくるんだけど、その相手がみんな悪いやつばっかりで、半分正義の味方的な一面もあり、本当の殺人鬼としての話にはまだなってないところ。あとやっぱり、ちょっと端折りすぎかなあと…

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クイーン

英・仏・伊合作

監督:スティーヴン・フリアーズ

出演:ヘレン・ミレン マイケル・シーン ジェームズ・クロムウェル

イギリスのベテラン女優ヘレン・ミレンが現在のイギリス女王エリザベスⅡ世を演じて、アカデミー主演女優賞を受賞した話題の社会派ドラマ。

これまでエリザベスⅠ世だったら、ケイト・ブランシェットやジョデイ・デンチ(アカデミー助演女優賞!)など、いろんな女優が演じているのを見たことあるけど、在位中の女王を主役に持ってきて、しかもかなりの完成度というかリアルさだったので、ビックリ。そしてこれまた在任中のトニー・ブレア首相も準主役クラスでもってきて、女王とのやりとりをスリリングでユーモアたっぷりに描いている。

物語は1997年、ダイアナ妃が死去した後の1週間を中心に描かれている。王室を離れても絶大な人気を誇っていたダイアナ妃の死により、イギリス中が大きなショックと深い悲しみに陥っている中、女王はこれを冷静にとらえ、あくまでも王室を離れた一私人の死であるとし、王室としての正式なコメントも対応も差し控えていた。この女王の対応に国民は不満を募らせ、マスコミを中心とした王室バッシングにまで発展していく…といったもの。

王室の伝統を重視し、国民のヒステリックな反応が理解できずに静かに悩む女王の姿と、就任間もないトニー・ブレアの対応が政治的ドラマとして、シンプルだけど、テンポよく濃密に描かれている。

王室の人たちのセリフがテンポよく、威厳や品がありながらも、人間味たっぷりに描かれていて、見ていて楽しくなる。宮殿の中を犬が駆け回ったりといったディテールやファッション、女王自ら旧式のランド・ローバーを運転しちゃう姿なんかが意外でありながらも感心させながら見せてくれる。

中でもやっぱりヘレン・ミレンが凄く、終始女王として画面に圧倒的な存在感を示しつつも、人間らしさやユーモアをところどころ散りばめながら、映画をガッチリ引っ張っていっている。(特に鹿の場面はもう…)

トニー・ブレア役のマイケル・シーン(「ブラッド・ダイヤモンド」のダイヤ業者の重役役)も見た目もそっくりだけど、史上最年少の英国首相を人間味あふれる家庭人として、小気味よく演じている。(なんとなくいい人に描きすぎている気もするけど…)

「ハイ・フィデリティ」「ヘンダーソン夫人の贈り物」他多数の職人スティーヴン・フリアーズの演出は、ヘレン・ミレン他のリアルで上品なドラマにダイアナ妃や当時悲しみにくれていた人たちの実際の映像を差し込み、現実と虚像を巧みに混ぜ合わせて、物語を盛り上げてくれる。

ただ、よ~く考えてみると、たぶん王室の人たちやブレアなんかは実際にはあんなことを言ったり思ったりしている訳ではなくて、実在の人たちを想像を膨らませて、いかにもそんな感じに作り上げちゃうってのは何か意味があるのかなあと思っちゃったんだけど、映画を全部見終わった後にフと思ったぐらいだから、やっぱり映画中はドップリ浸かってたってことで、そういう点でもなかなかの映画だったと思います。

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2007年4月28日 (土)

ブラック・ブック

オランダ・独・英・ベルギー合作

監督:ポール・バーホーベン

出演:カリス・ファン・ハウテン セバスチャン・コッホ トム・ホフマン デレク・デ・リント

「ロポコップ」「トータル・リコール」「氷の微笑」「スターシップ・トゥルーパーズ」「インヴィジブル」とハリウッドのB級大作映画監督としてすっかり有名であり、アクの強い独特の演出・ストーリーで怪作を撮ってきたポール・バーホーベン監督が故郷オランダに帰り、第二次世界大戦下のオランダを舞台に戦争の荒波の運命を翻弄されるユダヤ人女性を描いた歴史(メロドラマ)大作。

俳優陣はもちろん、スタッフもほとんどがオランダ人で、これまでのハリウッドの超大作とは趣が異なり、手作り感覚にあふれ、他のヨーロッパの歴史物のような重厚感を漂わせているけれど、さすがにバーホーベン映画だけあって、もの凄く早い展開と、オーバーでアクの強い演出は健在であり、凄い展開に半分あきれつつも、圧倒され、笑いながら楽しめる。

お話はオランダの裕福な家庭で育ったユダヤ人女性が、家族をナチスに殺され、ドイツ占領下のオランダでレジスタンスに加わり、工作活動を行うようになる。そこで、ナチス将校にスパイとして近づくが、この将校がナチスの中でも特にカッコよく、人道的でもあったりして、次第に惹かれていき…みたいな感じ。

ハリウッドのセレブ俳優は一切出ていないけれど、どの俳優さんも気合が入りまくっていて、画面中に緊張感が漂わせている。特に主役のユダヤ人女性を演じる女優さんはぶっちゃけあんまり華はないんだけど、すごい気迫で、グイグイ物語を(翻弄されながら)引っ張っていく。ユダヤ人に見えないするために陰毛まで金髪に染めたり、裸で汚物まみれにされたりと、ハリウッド映画では考えられない体当たり演技に多少引きつつもメチャメチャ感心させられます。

唯一知っている顔は「善き人のためのソナタ」の劇作家役だったドイツ人俳優セバスチャン・コッホぐらいで、やさしいナチス将校役で若干ウソ臭いけどいい味出している。

次々に激しい展開をみせる内容には目が回るけれど、歴史ものとしてもそれなりに成立しているし、単純に面白かったです。

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2007年4月20日 (金)

ロッキー・ザ・ファイナル

米映画

監督:シルベスター・スタローン

出演:シルベスター・スタローン バート・ヤング アントニオ・ターヴァー ジェラルディン・ヒューズ

「なぜ今さら?」と多くの人が思ったはずの、まさかのロッキーの最新作。高齢になってリングにあがるロッキーよりも、今になってロッキーを撮ろうとするスタローンのほうに痛々しさを感じないでもなかったけれど、見ればロッキーはやっぱりロッキーであってそれなりに熱くなりました。

前作の「ロッキーⅤ」でそれなりの理由があって引退し、リング以外でも家族と強く生きていくみたいな完結をしたはず(執拗にリングに上がらせようとする悪徳プロモーターニハ言葉もをかわし、若手ボクサーをストリートファイトでぶったおすラストにそれなりに感動したんだけど…)だし、なによりもエイドリアンが死んじゃってるという設定に、見る前は引きまくりだったんだけど…

いろんな疑問を持たせつつも、スクリーンに立つロッキーはやっぱりロッキーであって、試合をする後半もいいけど、フィラデルフィアで静かにレストラン経営をして暮らすロッキーの姿が、ロッキーのその後の生活を描いていてなかなかよかった。タリア・シャイアがもう女優をやってないという理由にもよるのかもしれないけれど、エイドリアンのいない生活に耐え切れず、何か打ち込むものが欲しいとボクシングに再挑戦しようとする姿には、そんなに抵抗なく、割と素直にみることが出来た。

ストーリーはかなりシンプルで、強すぎて対戦相手がいなく人気がガタ落ちの現チャンピオンが、人気回復の手段として、ボンシングに復帰しようとしているロッキーをエキジビジョンマッチの相手に指名するというもの。

ロッキーの復帰に大反対のサラリーマンをやっている息子(Ⅴではスタローンノ息子のセージ・スタロローンがやっていたのに、今回は違う人がやっている)との確執もあっさり解決しちゃったり、他の女性の息子との絡みとか、サイドストーリーはものかごくあっさり描いちゃって、ちょっと肩透かし的なところは否めず、試合シーンも衰えや痛々しさは隠せないものの、そんな痛々しさも含め今のロッキーを描いており、あの音楽がかかってくるとやっぱりそれなりにかなり盛り上がります。

細かいことにはこだわらずにロッキーの雰囲気を味わうにはそれなりの出来になっていたんじゃないかと思われます。

それにしても、ロッキーは別として、ポーリー(エイドリアンの兄さん)役のバート・ヤングがぜんぜん変わってないのには笑ってしまいました。

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2007年4月17日 (火)

サンシャイン2057

米映画

監督:ダニー・ボイル

出演:キリアン・マーフィー 真田広之 ミシェル・ヨー ローズ・バーン クリス・エヴァンス

ビックリした! 「トレインスポッティング」のダニー・ボイル監督による宇宙モノのSF映画に真田広之やミシェル・ヨーが出るっていうんで、けっこう期待は高かったけど、それ以上で、こんなに面白いとは思わなかった!

前作のゾンビ物「28日後…」がカルトっぽい内容だっただけに(「ゾンビもの」はほとんどカルトッぽいけと)、今回もそんな感じのものを想像していたら、これがかなり真面目な正統派SF映画だった。「28日後」みたいに低予算かと思っていたら、宇宙船の描写やら船内の様子とかキッチリ描かれていたりして。

2057年、太陽が活動を弱め、地球は氷河期に入り、人類は滅亡の危機に瀕している未来、活性化させるために大量の核爆弾を太陽にぶち込むという、人類を救う最後の任務を帯び、巨大な宇宙船で太陽に向かう乗組員たちのお話。彼らが太陽にかなり近づいた辺りで、救命信号を傍受する。それは彼らより数年前に同じ任務で地球を出発して途中で行方不明になった宇宙船からのものだった。その宇宙船と接触をとるために進路を変えたところから、様々な事件が彼らを襲うようになり…

宇宙船という密室の中でのサスペンス・心理劇に加え、宇宙空間でのアクション(船外活動)、至近では人間など全く無力な圧倒的な太陽の描写、そして危機に立ち向かう乗組員たちの使命感と勇気などなど、正統的な作りだけど、最近なかなか作られなかったまともなSF映画っていう感じ。宇宙服のヘルメットの内側にモニターがあったりするディテールもよかったし。

ソダーバーグの「ソラリス」や、デ・パルマの「ミッション・トゥ・マーズ」、あとは「2010年」(「2001年宇宙の旅」の続編)に似た感じがあって、「アルマゲドン」的な要素もあるけど、こっちのほうが全然よかった。あえて言うと、小松左京の「さよならジュピター」といい勝負。

クルーひとりひとりもキッチリ個性的に描かれていて(白人がイマイチパンチに欠けたけど…)、極限状況に追い詰められていく様がリアルに伝わってくる。

真田広之は「宇宙からのメッセージ」(深作欣二監督の「スターウォーズ」のパクリ!)以来のSFが、海外の本格的なもので、しかも船長役だけど、これがメチャメチャかっこいい(ぶっちゃけ出番はあまり多くないけど)。で、香港のアクションもの「皇家戦士(だったと思う)」で真田と競演したミシェル・ヨーがここでは、女性的だけど芯の強い科学者をメチャメチャいい味で演じている。英語で言い争うシーンなんて、とても上手くて感心してしまった。

そして、「28日後」のときも主演だったけど、その時は誰だか分からなかったキリアン・マーフィーも、名作「麦の穂をゆらす風」を経て、上手さや存在感を増し、繊細だけど最後はキッチリ仕事をする科学者を、弱さと強さを交互にみせて、キッチリ主役を張っている。

あと、もうひとりの女性乗組員役のローズ・ヴァーンは、ミシェル・ヨーと対象的な癒し系の役ですごくよかった。

意外にも濃厚なSFの贅沢さを味わえる作品だった。…ただ、宇宙船のどこでもフツーに重力があるのにあんまり説明してくんないんで、ちょっと「??」とひっかかるトコもあるにはあったけど…

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2007年4月16日 (月)

蟲師

日本映画

監督:大友克洋

出演:オダギリジョー 江角マキコ 大森南朋 蒼井優 

あのマンガ・アニメ界の重鎮、「AKIRA」の大友克洋の新作が実写映画で、しかも他人の書いたマンガの映画化っていうんで、2倍オドロキだけど、前作の「スチームボーイ」も公開時を遅らせてまでこだわって作った人だけあって、わざわざ人のものを映画化しようとしたってことは、それなりの内容なんだろうなあと思って見に行ったら…

100年前の日本、特に山深い里なんかには「蟲(むし)」といわれるモノノケみたいのがいっぱいいて、人間と共存している。その蟲を熟知し、蟲に憑かれた人を助ける職業「蟲師」というものがあって、そのひとりであるギンコという蟲師を描いたお話。

子供のころ、山崩れで母親をなくした少年が、ヌイという蟲師の女性(江角マキコ)にひろわれる。そんなギンコの子供時代の暗い記憶と、大人になって蟲師として村々を渡り歩くギンコの姿を交互に見せていく。そしてクライマックスには自分の過去に多いに関係のある、恐ろしい蟲と対決していく…みたいな内容。

「虫」ではなく、「蟲」といういう字は宮崎駿の「風の谷のナウシカ」で初めて知った言葉だったけど(マンガのナウシカには蟲を操る「蟲師」という職業も出てきてたけど)、この映画では日本独特のモノノケのようなものとして描いている。

深い森にもやがひろがる静寂なオープニングや木々の陰からちょっと姿をみせる蟲たちは「ナウシカ」ではなく、「もののけ姫」を連想させる。実写でそんな雰囲気を出すだけでもたいしたもんだなあと感心させられ、大友監督のこだわりがとても感じられる。そして、むかしの言葉をリズムよく巧みに発するギンコ役のオダギリジョーをはじめ、登場人物のセリフまわしといい(特に前半に出てくるおかみさんがすごくいい)、幻想的なストーリーの流れやビジュアルは、なかなか他の日本映画では味わえない雰囲気を出している。

ただ…

江角マキコは前半すっごいいい味を出していたんだけど、後半の変りようにはただ引くしかなく…、ラストもストーンッと終わってしまって、いい感じでマジメに見ていたのが、ズルッとなってしまった。

狙いかもしれないけど、もうちょい余韻を楽しみたかった。かなり微妙な気分にさせられたけど、そんだけ中盤までは惹きつけられてたんだなあと、逆に感心させられてしまいました。

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ブラッド・ダイヤモンド

米映画

監督:エドワード・ズウィック

出演:レオナルド・ディカプリオ ジェニファー・コネリー ジャイモン・フンスー

ダイヤモンドの利権を巡って、内戦が繰り広げられ(それだけじゃないだろうけど…)、毎日のように、簡単に人命が失われるアフリカノシエラレオネという国を舞台に、元傭兵でダイヤモンドの密売人のディカプリオが、ものすごい貴重なダイヤを手に入れるために、ダイヤの発見者で内戦に巻き込まれ、家族と引き離された男と、激戦地である奥地へと命がけで入り込んでいくといったお話。

監督のエドワード・ズウィックは、「ラスト・サムライ」もよかったけれど、「戦火の勇気」や「マーシャル・ロー」みたいな、現代の戦争やテロを扱った社会派のサスペンスでそうとういい味を出しいてる人なんで、今回も内戦で混乱するアフリカをリアルに描いている。

デイカプリオは「ディパーテッド」ではなくこっちでアカデミー主演男優賞にノミネートされたほど、気合の入った迫真の演技で、高めの声のせいもあって少年っぽさが抜けなかったけれど、今回のでやっと大人の男を演じているといった印象。(て、いうか貫禄がありすぎていきなりオッサンになってしまってるけど)

と、なかなか豪華な内容になっているんだけど、最近は「ホテル・ルワンダ」みたいに内戦の悲劇をリアルに誠実に描いた作品に比べて、どーしても引いてみてしまう。ただ「生きる」だけでも奇跡であるはずの世界でダイヤなんぞを必死で探していているお話になんか乗れない。もちろんダイヤはただの象徴であって、それに犠牲になっているアフリカの現状を描こうとしているのはなんとなく、分かるんだけど、主要キャラ以外の人たちが簡単に死んでいくのと、デイカプリオもバンバン殺して超人的な活躍を見せてるがなんか…

そんな話をぐぐっと現実的にしているのが、これでアカデミー助演男優賞にノミネートされた黒人俳優ジャイモン・フンスーの仏頂面とリアルな演技。スピルバーグの「アミスタッド」でもそうだったけど、しいたげられながらも、怒りと信念を胸に秘めた男を演じさせたら上手く、ここでもハデなアクションものになりそうな映画を社会派のいい話にしている。

と、文句みたいなことも書いたけど、ラストにかけての展開にはなかなかグッとされられるし、見終わったあとにいろいろ考えさせられる映画でした。

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2007年4月15日 (日)

オール・ザ・キングスメン

米映画

監督:スティーヴン・ゼイリアン

出演:ショーン・ペン ジュード・ロウ アンソニー・ホプキンス ケイト・ウィンスレット

1940年代後半、強烈な個性で絶大な人気を誇った実在のルイジアナ州知事をモデルにした小説を、その知事役をショーン・ペンが演じる社会派ドラマ。

1949年、汚職がはびこるルイジアナ州で、それを告発し、貧乏人のための州政を目指した役人ウィリー(ショーン・ペン)は、最初はライバル候補の票を割るために現職知事に利用されて立候補したけれど、その強烈な個性と、人を惹きつける魅力によって、民衆の心を掴み、知事に当選する。しかし、その後は圧倒的な支持率を保ちながらも、自らも権力に取り付かれ、政敵を排除するために画策したり、汚職に手を染めたりしていくが…的なお話。

ショーン・ペンが映画の中心人物ではあるものの、物語の語り手は新聞記者で、どんどんショーン・ペンに惹きつけられて彼のために働くようになる男を演じるジュード・ロウのほう。ショーン・ペンの魔力のような魅力に惹きこまれながら、自分の周りの人物を巻き込み破滅にむかっていく様子も描かれていく。

ショーン・ペンのアクの強さや迫力はこの知事役にピッタリな他、この知事と対立する判事役のアンソニー・ホプキンスはあいかわらず激シブのインテリの役をいい味と静かな迫力で演じ上げていて、この二人の競演シーンは鳥肌がたつぐらい。あとはケイト・ウインスレットとジュード・ロウなんかも「ホリディ」とはうってかわってシリアスなほうが似合っていて、豪華な役者さんたちで、重厚な政治ドラマに仕上がっている。

ただ、ショーン・ペンは悪の匂いをプンプンさせているんだけど、具体的な悪いことが描かれないことと、ジュード・ロウがなんであそこまでショーン・ペンのために働くのかがイマイチ分かんなかったことで、最後までちょっと気分が乗れなかったのが残念。シーン、シーンの演技には息を呑むほどなんだけど…

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プロジェクトBB

香港・中国合作

監督:ベニー・チャン

出演:ジャッキー・チェン ルイス・クー マイケル・ホイ ユン・ピョウ カオ・ユンフェン シャーリーン・チョイ

今年で53歳となるジャッキー・チェンの作品、それも主演のアクション映画の新作をまだ見られるというだけでも、もう何もいうこともないです。

しかも今回は最近の特撮バンバン使った「神話」や部下がバンバン殺される「香港国際警察」のようなちょっとダークなものと違って、オーソドックスな香港独特のコメディになっていて、スケールはあまり大きくないものの、見ていてホッとする作品でした。

題名に「プロジェクト」がついているってだけで、往年の傑作「プロジェクトA」のシリーズか?的なノリで宣伝されているけど、ぜんぜん違って、舞台は現代で、ジャッキーは泥棒役。どろぼうチームのリーダーがあのマイケル・ホイなんだけど、ある日彼が立てた計画は、なんと、富豪の家から赤ちゃんを盗み出すというものだった。ドロボーとはいえジッャキーだけあって善人役なんで最初は大反対だったけど、結局誘拐することになってしまい、赤ちゃんの世話で悪戦苦闘してしまうというお話。

アクションの数やスケールは他の作品に比べるとグッと減っているけど、子育て教室で苦労する姿や見ていてちょっとはずかしくなる人情話のほうが、ホッとするというか、ミョーに和むというか…

あと、マイケル・ホイのほかにもユン・ピョウまで出ていて、けっこうおトクな作品になっている。「ツインズ・エフェクト」のシャーリーン・チョイも相変わらずいい味を出してる。

最近はスタントマン利用疑惑なんかが出ていたりとかしているけど、とにかく元気で動きまわるジャキーがスクリーンで見られるだけで、それだけで十分です。

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春のめざめ

ロシア映画(アニメ)

監督:アレクサンドル・ペトロフ

正にひとつの芸術と言っていい、美しく幻想的なロシア製のアニメーション。ロシア人のアニメーション作家アレクサンドル・ペトロフという人は驚くべきことに、油絵を動かし、アニメーションにしてしまった。日本製のアニメともハリウッドのCGアニメとも全く異なる、濃厚で美しく、奥行きのある絵の動きに27分間という上映時間、クギづけにされてしまった。

舞台は19世紀、帝政末期のロシアで、16歳の貴族の子息である主人公アントンが女神のような年上の女性と、アントンの家に奉公する美しい少女の2人に同時に憧れを抱き、空想と現実の両方の世界をいったりきたりしながら、少年時代の甘酸っぱいひとつの季節を過ごしていくといったお話。

油絵によるアニメっていうことで、最初はおとぎ話のようなものを想像していたけど、登場人物の仕草や女性の艶かしい動きや美しさは、十分に大人の物語であり、あふれる色彩の中で、自分も主人公の少年となって、擬似体験をしたような気分にさせられる。その技術の高さと独創性には本当にビックリさせられる。

とにかく、いままで経験のしたことのない映像であり、毎日のようにアニメが大量生産され、たれ流されている日本だからこそ、この国でもこういうものをじっくり見ることが、もっと広まったらと切に感じてしまいした。

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2007年4月 6日 (金)

華麗なる恋の舞台で

カナダ・米・ハンガリー・英合作

監督:イシュトヴァン・サボー

出演:アネット・ベニング ジェレミー・アイアンズ ブルース・グリーンウッド マイケル・ガンボン

「バグジー」や「アメリカン・ビューティー」なんかで実力派として存在感をバシッと示してきたアネット・ベニング主演で、ハンガリーの巨匠監督がイギリスの劇作家サマセット・モームの作品を映画化した、1930年代の舞台女優の奔放な恋を描いた作品。

イギリスの人気舞台女優ジュリアは夫である劇場経営者(ジェレミー・アイアンズ)とはいい関係を保ちつつも、距離を置いた生活を送っている。夫の元を訪ねてきた若い青年と恋に落ちてしまうけれど、その青年にハマり込んでしまい、若い彼に嫉妬し悩まされていくが…みたいなお話。

出だしからピントがなんとなくズレたような映像と、古臭く芝居がかった演技やセリフ、そしてなんでこんな男に夢中になるのか分からない平凡でたいしたことなさそうな男にハマッテいく展開に、確かにアネット・ベニングの演技は上手いけどなんか空回りしている感もあり、う~ん??…と思いつつ正直がまんしながら見なければならなかった。途中で出てくる若い恋敵の女優もイマイチだし。唯一マイケル・ガンボン(ハリー・ポッターの校長(2代目))がジュリアの昔の恩師で心の声としていろんなところに出没するのはよかったけど。

ところがいよいよクライマックとなる舞台のシーンでそれまでの微妙な展開や雰囲気を一掃する衝撃的で面白く、スカッとする展開を見せる。気のせいか、それまでのちょっとぼやけた映像がググッと鮮明なった気がした。

その演出の巧みさに驚くとともにアネット・ベニングの上手さにはあらためてビックリさせられてしまった。それまではグシャグシャになったり、しわくちゃになったりすることも厭わなかったのに、ラストでは一変して美しくみえるところはさすがって感じでした。

とにかく90分がまんして見ていたら、ラストにはググッと驚かされ、痛快な気分になれると思います。

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2007年4月 5日 (木)

ハッピーフィート

米映画(アニメ)

監督:ジョージ・ミラー

出演(声):イライジャ・ウッド ロビン・ウィリアムズ ブリタニー・マーフィー ニコール・キッドマン ヒュー・ジャックマン

「マッド・マックス」の監督というよりは、最近では「ベイブ」の監督といったほうが分かりやすいジョージ・ミラー監督が作ったフルCGアニメはペンギンを主役にしたミュージカ映画。

最近はアメリカ産のCGが定期的に公開されるようになったけど、初期のピクサー作品や「シュレック」のときのような新鮮さや興味をひくものはなくなってしまったけれど、あの子豚や動物たちを使って、粋な冒険物語を作り上げた監督(「~都会へ行く」はイマイチだったけど…)がペンギンを使ってミュージカルを作る、しかも米国ではメチャメチャヒットしたっていうんで、けっこう期待も高まったんだけど…

お話は、皇帝ペンギンの一族の中で生まれたマンブルは卵のときの事故のせいか、歌で自分を表現することが最も重要とされるペンギンの世界の中で、生まれつきの超音痴だけど、歌の代わりにタップダンスが大得意。歌は歌えなくても、ダンスで自分を表現することに才能を見いだすものの、一族の伝統を重んじるペンギンたちからは疎まれ、遂には旅に出る…みたいなお話。

声の出演も豪華で、イライジャ、ブリタニーあたりはまあまあかなと思うけど、ロビン・ウィリアムスに加え、両親にニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンがやっているのにはちょっとビックリしたけど、この二人の歌のうまさにもビックリ。

で、映画全体としては、両親が出会い、卵を産み、マンブルが生まれて子供時代までは、ペンギンの生態も丁寧に描いていたり(「皇帝ペンギン」でみたのとほとんど同じ感じ)、子供のペンギンはかわいく、なかなか興味深く見れたんだけど、マンブルが青年になったあたりから、ぶっちゃけあんまりかわいくないし、さすがにペンギンと氷ばっかりの映像で…

正直ちょっと飽きてきちゃって微妙な感じになってきちゃったあたりで、かなり凄い展開をみせて、並のCGアニメとは一線を画す内容にはけっこうビックリさせられました。

単なるペンギン世界の楽しい映画ではなく、シリアスに環境問題を訴える展開にはかなり驚かされたとともにかなり新鮮に感じたけれど…そこからラストにかけての展開が超急で、ハッピーエンドはハッピーエンドなんだけど、ちょっと無理やりって感じが否めなかった。

ペンギンたちが楽しく歌い踊るミュージカルだったけど、クライマックスに持ってきた現実に目を覚まされ、そこからの都合のいい展開にちょっと?とさせられる微妙なお話だと私は感じたんですが…

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