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2007年7月22日 (日)

ゴースト・ハウス

米映画

監督:ダニー・パン オキサイド・パン

出演:クリステン・スチュアート デイラン・マクダーモット ペネロープ・アン・ミラー

「the EYE」などで有名なタイのパン兄弟が、サム・ライミ プロデュースの下、ハリウッドで製作したホラー映画。パン兄弟のタイ時代の作品は見たことなかったけど、おどろおどろしいアジアのホラー監督をサム・ライミが「呪怨」の清水崇監督のように抜擢したっていうことで、なんか新しいものが見られるかとそれなりに期待して見に行ったんだけど…

ストーリーは、都会を離れて田舎に移り住んできた一家が、引っ越してきた古い家で怪奇現象に合い、その現象が見える娘が恐怖の日々に怯えるというもの。

これが、展開やら真相やらどっかで見たことあるようなもので、新鮮さのかけらもないベタベタの、典型的な安っぽいホラーになっていて、正直ガッカリでした。

主演の少女は「パニック・ルーム」でジョディ・フォスターの娘役を演じていたクリステン・スチュアートは恐怖に怯える様や家族の中で悩む姿はなかなかよかったし、母親役にはすっかりくたびれちゃった感は否めないけど、「レナードの朝」や「カリートの道」みたいな一線級の映画に出ていたペネローペ・アン・ミラーが出てるし、一家とともに暮らす男を「マイ・ビッグ・ファット・ウエディング」でヒロインの相手役だったジョン・コーベット演じているなど、この手のホラー映画にしたら、けっこう豪華なキャストなんだけど…正直この手の映画の中でも残念な仕上がりになっちゃってました(と感じちゃいました)。

とにかく、ヒロインがかわいかっただけに余計残念でした。

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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

日本映画

監督:吉田大八

出演:佐藤江梨子 佐津川愛美 永瀬正敏 永作博美

奇抜なタイトルが目を惹くサトエリ主演のホームドラマ。内心「題名よりも中身で勝負しろよ」と思いつつ見に行ったところ、なかなかタイトルに負けてないインパクトで、しっかりとコワ面白いブラックコメディ(それとほんのちょっとだけ考えさせられる)に仕上がってました。

サトエリ扮する主人公澄伽(すみか)は、超自己中心的な勘違い女で、才能もないのに女優になれると信じ込み上京するも、4年間芽が出ず、両親の事故死を機に久々に故郷のド田舎の村(石川県のどっか)に帰ってくる。そこには兄夫婦(永瀬正敏と永作博美)と高校生の妹が暮らしているけれど、澄伽によって引っかき回されることになる。

その中でも妹は姉にイジメられながらも、それに耐え抜き、その体験を恐怖マンガにしていまう、自虐的で冷静なキャラで、この姉妹2人を中心に恐怖映画さながらの、凄いストーリーが展開していく。

佐藤江梨子は超傲慢で人の迷惑を顧みない女に全身でなり切っていて、「キューティーハニー」といい、この映画といい、アクが強くて特異なキャラをやらせるとグッと引き立つ物を持っている。

そして映画の印象を決定づけているのが、いびられ役の妹を演じる佐津川愛美という若い女優で、けっこうカワいい顔をメガネで隠し、ひたすらイジメに耐え抜き反撃の機会を探る少女を可憐で不気味に演じていて、サトエリ以上にはまっている。

その他、妹に頭が上がらず、嫁にイバりまくる、でも意外に常識的なダメ兄貴を演じる永瀬正敏が作品全体を落ち着きをもたらしている他、なによりも永作博美がコインロッカーに捨てられ、孤児院で育ち、家族愛を求めるバカポジティブな嫁を怪演していて、主役姉妹以上のインパクトと感動すら覚えました。

救いとか教訓めいたものはほとんどないけれど、なかなか他にない痛快な映画でした。

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インランド・エンパイア

米映画

監督:デイヴィッド・リンチ

出演:ローラ・ダーン ジェレミー・アイアンズ ジャスティン・セロー ハリー・ディーン・スタントン

凄い、理解不能だけど、やっぱりリンチは凄い!特に今回は3時間ドップリとリンチワールドに浸りまくりで、もう脳がぐちゃぐちやになる感じだけど、他では味わえないこの感覚はやっぱりいい!

ストーリーは説明しきれないというか、理解しきれないというか、とにかくグチャグチャな話がリンチ流の衝撃的な場面転換なんかでコロコロと変化していく。前作の大傑作「マルホランド・ドライブ」はまだ自分なりにストーリーが解釈でき、楽しめたんだけど、今回はほとんどヒントすら与えられず、ドンドンストーリーが爆走していく。

お話のようなものを整理すると、ローラ・ダーン扮する女優が、ある映画への出演が決まり撮影に入る(監督はジェレミー・アイアンズ)んだけど、その映画の中の世界と現実がゴッチャになり、そこにウサギ人間やら、訳の分かんないポーランド人やらのシーンが入り乱れて、何が何のシーンが分かんないんだけど、リンチらしい不穏な映像がデジカメのザラついた映像と相まって、とにかく深~いところまで、引きずり込まれていく。

主演のローラ・ダーンは「ワイルド・アット・ハート」以来の出演で、ぶっちゃけ今さらど~なの?と思っていたけど、この不安定で不気味な映画にピッタリで、メチャメチャよかった。

シーンごとに自分なりの解釈がどんどん裏切られていくんだけど、それが快感になっていき、シーン毎に妙な感動も味わえる。ラストの大団円みたいな終わり方もなんか妙に納得。

たぶんあと5回見ても理解できないと思うけど、でもまた何回も見てしまうだろうと思う、やっぱりリンチの魔術はスゴイと再認識されられる、ホントにモノスゴイ映画でした。

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ファウンテン 永遠につづく愛

米映画

監督:ダーレン・アロノフスキー

出演:ヒュー・ジャックマン レイチエル・ワイズ エレン・バースティン

「π」「レクイエム・フォー・ドリーム」といった奇抜で意表を突く作品を作ってきたダーレン・アロノフスキーの新作。永遠の命と愛を巡る時空を超えたラブストーリー。

ヒュー・ジャックマンとレイチェル・ワイズの二人が過去・現在・未来に生きる男女を演じている。

中世スペイン、レイチェル・ワイズ扮する女王の命で、ヒュー・ジャックマン扮する騎士がマヤの奥地、ピラミッドの中に進入していく。そこには人類の命の基、「生命の木」があって…という話と、現代、脳腫瘍で余命短い妻(レイチェル・ワイズ)を救うために新薬の開発を続ける科学者(ヒュー・ジャックマン)の話と、たぶん未来、木が茂っている球体の中に男(ヒュー・ジャックマン)が一人だけいて、宇宙空間を漂っている話が交錯して描かれている。

永遠の命について描きながらも、永遠を求めて、愛する人を失うことをとことん拒絶する男と、死を自然なこととして受け入れる女性がとても対照的に描かれている。

ヒュー・ジャックマンと、「ナイロビの蜂」でアカデミー賞とったばかりのレイチェル・ワイズはこの不思議なラブストーリーを大人の演技で濃厚に演じている。特にヒュー・ジャックマンは「X-MEN」とか「ニューヨークの恋人」なんかよりもぜんぜんかっこよかった。あと、「レクイエム・フォー・ドリーム」にも出ていたエレン・バースティン(「エクソシスト」のお母さん)がいい味出している。

最初は「永遠の命」みたいなテーマなんで、「ハイランダー」みたいなのを想像してたけど、似てる部分もありながらも、全然違い、かなりしっとりとした大人の映画に仕上がっていて、そして最後にはもの凄い映像が展開されてビックリさせられる、ただの映画じありませんでした。

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ハリウッドランド

米映画

監督:アレン・コールター

出演:エイドリアン・ブロディ ベン・アフラック ダイアン・レイン ボブ・ホフキンス

「戦場のピアニスト」デアカデミー主演男優賞を受賞したものの、その風貌からかイマイチ役に恵まれてない感がするエイドリアン・ブロディが探偵役で、大作にバンバン主演してきたものの、盟友マット・デイモンと違いなんか印象が薄いベン・アフラックが殺されたハリウッドスターに扮した、ミステリー映画。

1950年代に米国で「スーパーマン」のTVドラマに主演し、子供たちに絶大な人気を誇っていた俳優ジョージ・リーブスが自宅で射殺死体として発見され、現場の状況から自殺と判断される。この実際の事件を基に、エイドリアン・ブロディ扮する探偵が謎の多いこの事件を他殺の線で探り、その裏にうごめくハリウッドの影の部分に迫っていくという内容。

エイドリアン・ブロディが捜査を進めるのと並行して、生前のジョージ・リーブス(ベン・アフラック)の姿を描き、売れない頃の彼がハリウッドの大物の妻(ダイアン・レイン)と関係を持ち、スーパーマン役に抜擢され人気が出るんだけど、逆にそのイメージが強すぎて他の役に恵まれず苦悩する姿が描かれる。

これを1950年代のファションや風俗の中でロマンチックに描き、ミステリーの部分では「L.A.コンフィデンシャル」風のハードボイルドタッチで描いている。

と、けっこう面白そうな感じがしたんだけど、はっきりいって微妙に中途半端な感が否めない。エイドリアン・ブロディのパートは家庭の話や他の事件の話なんかも絡みあってなかなかいい感じなんだけど、なんでこの事件に執着するのかがピンとこなかったし、ベン・アフラックのところは話が飛び飛びで、彼の苦悩やら、周囲との関係とかがなんとなく伝わってこず、正直ちょっと退屈…

ぶっちゃけ何を言いたいのか、よく分かんなかったというのが正直な感想でした。

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西遊記

日本映画

監督:澤田謙作

出演:香取慎吾 内村光良 深津絵里 伊藤淳史 多部未華子 加賀丈史 岸谷吾朗

SMAP香取慎吾主演の人気ドラマの映画化。テレビはほとんど見てなかった(1話だけみたけど…)けれど、金閣銀閣が出てくる有名なエピソードを映画というそれなりの予算でやるってんで、ちょっと見てみようかなという気にさせられたんだけど…

中国の砂漠のシーンはなかなか良かったし、役者の人たちもがんばってるという印象は感じられた。特にウッチャンのカンフーシーンはなかなか楽しめした。あと、ヒロイン役の多部未華子は「理由」以来久々にスクリーンで見たけど、なんかこの手の映画とのギャップが逆に新鮮でよかった。

でも、まあ、映画の一番のターゲットはおそらく小学生ぐらいと思われ、最後まで見るのは正直つらかった…。アクションもちょっと微妙だし(このへんは中国の大作を見習ってスタッフを連れてくるとか…)、ギャグももろ低学年向けだし、なんか悟空もところどころで同じようなこと叫んでばっかりだし…

と、いう感じだったんだけど、映画館にいた小さい子供たちが大喜びで見てたんで、あれでよかったのかなとも思いましたが。

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ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

米映画

監督:デイビッド・イェーツ

出演:ダニエル・ラドクリフ ルパート・グリント エマ・ワトソン ゲイリー・オールドマン レイフ・ファインズ イメルダ・スタントン

魔法使いの少年少女が大騒ぎする大ヒットシリーズも第5弾となり、普通ならそろそろ飽きるころなんだけど、前回の「炎のゴブレット」で最大の敵ヴェルデモート(レイフ・ファインズ)が復活し、物語に緊張感が出てきた上に、シンプルなストーリーで、いままでで一番見やすかったというか、けっこう面白かった。

前作で復活した悪の帝王ヴェルデモートの存在に不安を覚えるハリー・ポッターたち主要キャラたちだけど、「魔法省」の大臣を始め偉い人たちはその復活を認めたくなく、逆に規制を強くする。その動きはホグワーツ(魔法の学校)にもあらわれ、厳しい先生が派遣され、学園内をどんどん取り締まるようになる…みたいなお話で、悪者との直接対決よりも、真の敵ではない内なる敵に悩まされる内容で、そんな中で悩みながらハリーたちも成長していく姿が描かれる。(ラストは悪者との対決も用意されているけど)

このシリーズ、はっきりいってお子様向のお話にはあんまり興味はなかったんだけど、ハリーたちを取り巻く大人たちを豪華な俳優陣が凄い(渋い)んで、おもわず毎回みてしまうんだけど、今回はなんといっても、魔法省から派遣される憎たらしいアンブリッジ先生にマイク・リーの傑作「ヴェラ・ドレイク」でアカデミー主演女優賞にもノミネートされたイメルタ゜・スタントンが、派手で憎たらしいオバさんを小気味よく演じていて、悪との対決に備えて暗くなりがちな作品のトーンをコミカルにいい味を与えている。

その他のキャストも相変わらず豪華で、レギュラーのマギー・スミスやアラン・リックマン(この人が出てるんでガマンして見続けているようなモンなんだけど)をはじめとして、シリウス・ブラック役のゲイリー・オールドマンもけっこう見せ場があるし、ヘレナ・ボトム・カーターまで出てくる他、たいした役でもないのにエマ・トンプソンもちゃんと出てるし、デビッド・シューリスもほとんどセリフもないのに…

で、ラストにはウェルデモートの軍団とハリーたちとの対決シーンも用意されているんだけど、ダンブルドア校長とヴェルデモートとの対決は「スターウォーズ エピソードⅡ」のヨーダとドゥークー伯爵の対決を彷彿とさせる展開と迫力でなかなかよかった。

なんか、やっと盛り上がってきたというか、初めて次に期待していいかなと感じました。

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2007年7月21日 (土)

舞妓Haaaan!!!

日本映画

監督:水田伸生

出演:阿部サダヲ 堤真一 柴咲コウ 小出早織 伊藤四朗 

正直言って、ほとんど期待をしていなかったんだけど、たまたまチケットを買わされたのと、植木等がちょっとでも出ているっていうことで見に行ったところ、これが予想に反してというか、けっこう面白かった。

阿部サダヲ扮する舞妓マニアの主人公が、堤真一扮する一流プロ野球選手と張り合いながら舞妓遊びをするために悪戦苦闘するみたいな内容は予告編や記事なんかで分かっていたけど、そこからがさすが宮藤官九郎脚本というか、想像も出来ないバカバカしい展開をみせる。

日本のコメディ映画は心が暖まる系かシュール系のどっちかという気がしていたけれど、これは珍しくアメリカ映画によくあるおバカ系のくだらない映画をキチンと作っている感じがして、とても好感が持てました。

この手のおバカ映画を成立させるにはやはり主人公のキャラが立っていなければならないけど、阿部サダヲはハイテンションな演技でその役割をキッチリ果たしている。

他の出演者もよかったけれど、特に阿部サダヲがはまってしまう舞妓・駒子役の小出早織という若い女優さんがよかったです。ほとんど白塗りの舞妓姿でばっかりの出演なんだけど、独特の丸顔にちょっと舌足らずなんだけど凛とした京都弁が、ホントの舞妓さんみたいで、なかなかでした。(柴咲コウも舞妓姿を披露するんだけど、顔立ちとかモロモロ含めても小出はよかったです)

とにかくメジャー系で公開規模も大きいのに、キッチリばかばかしく仕上がっている、なかなかない映画というか、けっこう得した気分になれました。

そしてなによりも植木等の姿がスクリーンで見られるだけでも見る価値あるかなと。

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2007年7月 8日 (日)

殯の森

日仏合作

監督:河瀬直美

出演:うだしげき 尾野真千子 渡辺真起子

今年相当話題になった、日本人の河瀬直美監督によるカンヌ映画祭グランプリ作品。その割には公開規模が小さい気がするものの、彼女のこれまでの作品から考えて、こなもんかなと思いつつ、やたら混んでいる中見にいってきました。

長編デビュー作「萌の朱雀」以降、いわゆる普通のストーリーのある商業映画とは一線を画し、ドキュメンタリーのようにそこに息づく人達の、日常生活をリアルに描きながら、心の動きを細やかに捉える作風はここでも変わらず、むしろ余計なものを更にそぎ落とし、シンプルだけど深い、レベルの高い作品だった。

真千子はまだ20代半ばぐらいだけど、事故で小さな息子を亡くし、失意が癒えないまま介護老人ホームに勤めている。そこに住む認知症の老人・しげきは若い頃に妻を亡くし、認知症となった今、妻への思いが更に強くなっている。ある日、しげきを妻の墓参りに真千子が連れていくことになったけど、車は途中で故障し、真千子が目を話したすきに、しげきは深い森の中に分け入って行ってしまう。

その森の中をさまよい歩き、体で老人とぶつかり合い、触れ合ううちに、真千子自身も自分の傷を癒す体験をしていくようになる…みたいなお話。

「殯(もがり)」というのは、「敬う人の死を惜しみ、しのぶ時間や場所」のことと劇中でも説明しているけど、大切な人を亡くした哀しみに向き合い、そしてその死により自分自身も生きているとは言えない状態だったところから立ち直る姿が、むき出しの感情と、人間を蹴倒しながらも包み込む自然の中でより際立って描かれていく。

主演のうだしげきさんは全くの素人で、普段は本屋さんかなんかやっているらしく、そういう人を主役に起用するのは、なんかキアロスタミ映画みたいでもあるけど、ここでは認知症の人をしっかりと演じていて、若干老人にしては元気そうには見えちゃうけど(認知症とはそういうものかもしれないけど)、心のキレイさはスクリーンを通じて感じられ、その体当たりの演技には敬意すら感じます。

そして「萌の朱雀」で中学生だった尾野真千子が、あれから10年経って難役に挑んでいる。特に中盤、感情を爆発させ、その後しげきと体を温めあうシーンは圧巻で、前半メッチャ控えめで怯えていた彼女から一変、思わず惹き込まれてしまいました。

まぶしいぐらいに濃い緑の奈良の森も作用していたんだと思うけど、「認知症」という深刻なテーマを描いていて、その描き方もとてもリアルではあったものの、実際には認知症というものによって、現実や世俗から一線を引いた人のこころを描いたファンタジーにみえました。

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女帝 エンペラー

中国・香港合作

監督:フォン・シャオガン

出演:チャン・ツィイー ダニエル・ウー グォ・ヨウ ジョウ・シュン

シェイクスピアの「ハムレット」を西暦900年代の中国王朝におきかえて製作された歴史大作。それなのに、主役はチャン・ツィイーで、タイトルが「女帝」ってのは違和感があったけど、そこは設定はハムレットからもってきつつも、中国の観客向けに相当の脚色が加えられている。

ハムレットにあたる中国の皇太子ウールアンを演じるのは「香港国際警察」とかジャッキー映画で活躍しているダニエル・ウーなんだけど、彼はここでは決して主役ではなく、主役はやはりチャン・ツィイーで、彼女はハムレットの母・ガートルードにあたる王妃の役。とはいっても、先王の後添えで、ウールアンとは義理の親子、しかも密かに想いあっているという設定で、このあたりから、原作の雰囲気や事情とだいぶん変わってくる。

設定も微妙に違えば、冒頭からこれほどかというほど、アクションをつぎ込んでくる。これがワイヤーアクションたっぷりで、なんだか舞踊をみているようで、中国の自然も相まって、最初はまあまあ楽しめたんだけど、ちょっとやりすぎというか、オーバーすぎで、微妙に引いてしまった。

でもって、ストーリーはハムレットのはずのウールアンの苦悩みたいなのは、そんなに描かれず、もっぱらチャン・ツィイーが策謀をめぐらしたり、王とイチャイチャするシーンで占められる。

そしてラストの展開は、原作のそれと同じ感じではあるものの、策謀をめくらせているのが王妃だけに、死ぬ人たちが若干いれかわる。その様子はハムレットぽくもあるけれど、別にハムレットでなくてもいいんじゃないの?的にも思えてしまう。

王妃はパンパン策謀をめぐらすし、王もガンガン人を殺すし、皇太子(ハムレット)は何を考えいるか分かんないしで、誰にも感情移入できないまま、けっこう長いお話に付き合わされたという感じ。そんな中で、オフィーリアにあたる皇太子の恋人役で、「小さな中国のお針子」に出ていたジュウ・ションだけは。相変わらず清楚で可憐な役で癒されました。

でもまあ、豪華な宮廷の様子や、チャン・ツィイーの衣装やらを見ているだけでも、けっこう楽しめるし、貫禄が増してきたチャン・ツィイーの演技や美しさも楽しめました。ホントはチャン・ツィイーはオフィーリアあたりをやって、王妃はコン・リーやマギー・チャンあたりがやったほうがいい感じになったと思うんだけど…

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街のあかり

フィンランド映画

監督:アキ・カウリスマキ

出演:ヤンネ・フーティアイネン マリア・ヤルヴェンヘルミ マリア・ヘイスカネン カティ・オウンネン

いやあ、カウリスマキ映画はやっぱりいい!世界でも唯一無二の佇まいのある映画をこうやって見られるだけでホントに幸せだなあと思います。

傑作「過去のない男」から約4年の待望の新作は、「浮き雲」「過去のない男」から続く敗者3部作の最終作ということなんだけど、もともと「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」を始めとして成功者を主役にしてというか、出てくることさえ珍しく、さえない負け犬たちを暖かく、淡々と描く、独特の映像と物語は1作1作なんともいえない余韻を味あわせてくれる。

「失業」「ホームレス」と続いてきた、いわゆる敗者3部作第3作の今回は「孤独」だそうで、主人公のコイスティネンはヘルシンキで夜警をやってる冴えない男で、口数も少なく、仕事仲間からも全く相手にされない孤独な日々を送っている。そんな彼にある日美女が話しかけてきて、たちまちコイスティネンは彼女に夢中になる。ところが彼女は窃盗団の一味で、コイスティネンが警備を受け持つ会社の金品を狙って差し向けられたもので、まんまと彼を利用して盗みを働いてしまう。その後も仕事を失い、服役し、住むところまで失い、ドン底まで落としいれられながらも、愚直なまでにそれらを受け入れていくコイスティネンの姿はこれまでのカウリスマキ映画の主人公たちを更に凝縮した、印象深いキャラクターになっている。

前作「過去のない男」が、記憶を失い、身包みはがされた男をホームレスや周囲の人たちが温かく受け入れられる話だったけど、今回は主人公に次から次へと不幸を見舞わせ、ほとんど救いの手を差し伸べない。主人公もそういう人でジッとそれらを受け入れつつも、希望(それも安易な)を捨てずに生きていく姿に、いつのまにか引き込まれていく。そして、最後の最後でキチンと心に残るラストシーンを用意してくれている。やっぱりこの人の映画はいいです。

主演のヤンネ・フーティアイネンは、これまでのマッティ・ペロンパーやマルック・ペルトラに比べると、年も若く、哀愁というか、味といったものが若干足りない気がしたものの、ホントに孤独で温もりを追い求める男を、独特な眼差しで、カウリスマキ映画の一部分になっている。

そして彼を陥れる美女、悪党たち、彼をひそかに想う女性、犬、車、ヘルシンキの街並みまで、この物悲しくも温かい映画をしっかりと構成していて、全体でひとつの詩のような印象を形作っている。

監督にはこれからも、ず~っと負け犬を描き続けて、その中にある小さな幸せを描いていって欲しいと願います。

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2007年7月 7日 (土)

シュレック3

米映画(アニメ)

監督:クリス・ミラー

出演(声):マイク・マイヤーズ エディ・マーフィ キャメロン・ディアス アントニオ・バンデラス ルパート・エベレット

緑色の怪物がおとぎの国で大活躍する、ドリームワークスが製作する大ヒットCDアニメシリーズの第3弾。

「1」では、おとぎの国のキャラたちが甘ったるくて慣れなかったことや、パロディが鼻についたことなんかで、ビミョーに好きになれなかったんだけど、「2」ではそのキャラたちに慣れたのと、新しいキャラたちも新鮮ながら映画に馴染み、展開もスピーディでテンポがあり、ギャグも笑えて。意外にもかなり満足させにれた。

で、そんなでそこそこ期待もした「3」だったけど、ぶっちゃけアイディアも展開も微妙に行き詰った感が否めなかった。(私だけがそう感じただけかも…ですが)話がとにかく単純というか、たいした新キャラも出ず、敵も前回と同じだし、新鮮さがほとんど感じられなかった。ギャーギャー騒ぐだけのおとぎキャラたちにも「1」と似たようなイライラ感が…。(ピノキオは好きだけど)

CGの技術はドンドン進歩して、映像はリアルになっているんだけど、シュレックみたいなキャラはあんまりリアルにしなくても…

でもまあ、エディ・マーフィーとかアントニオ・バンテラスとかの声のコメディ演技は相変わらず楽しく見ることができる。密かに自分が気に入っているのは、敵役・チャーミング王子役のルパート・エベレットで、実際にやっているようなニヒルな感じがCGのキャラでもよく出ていて、それらを楽しむだけでも、けっこう元はとれたような気に。

今回はシュレック夫妻に子供ができるのが、物語のかぎになっているようなんだけど、あんまりそのへんは興味なかったのが、乗れなかった原因かなあと。

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フランドル

仏映画

監督:ブリュノ・デュモン

出演:アドレイド・ルルー サミュエル・ボワダン アンリ・クレテル インジュ・デカエステカー

今年は日本人の河瀬直美監督がカンヌ映画祭のグランプリを受賞し、話題になったけど、これは、去年のグランプリ受賞作。

ブリュノ・デュモンという監督の映画は初めて見たけど、人の有様をとことんまで残酷に描きながらも、救いや美しさも垣間見せる、なかなか凄い映画だった。

フランスの田舎・フランドル地方で農業に従事している青年デメステルとその幼なじみの少女バルブはほとんど言葉も交わさないまま性交を交わし、一緒に過ごしているが、愛の言葉を交わすこともなく、ただ一緒にいるだけ。デメステルは秘めた思いを持ちつつも、バルブは他の男とも簡単に関係を持つ奔放な少女で、デメステルはそんな彼女のそばにいるだけで満足できている。そんな淡々とした田舎の若者の様子が、寒々としたフランドル地方の景色の中で、セリフも最小限で、ほんとにそこに生きている人々のようにリアルで素朴に描かれる。

ところが、その男たちが戦争に行ってから、映画のトーンが一変する。監督が描いているのは架空の戦争で、戦場がどこかも特定していない。油田が燃えているので、湾岸戦争やイラク戦争にも見えつつも、敵として描かれるのはアフガンやパキスタンのような西アジアの人にも見える。架空の戦争ながらもそこでの描写はとことん残酷で生々しく描かれる。地元ではさえない下層階級の青年たちが戦場では人が変わり(変わったというより、本質はこんなだとも見える)、敵もしくは敵と同じ肌の色の人を殺しまくり、レイプまでしていく。デメステルも例外ではなく、その手を汚していく。

一方、男たちを待つバルブは、夏になり残酷なまでに緑が濃くなってきたフランドル地方で相変わらず、心の乾きをムリヤリ癒すかのように行きずりの男とセックスを重ねながら、精神を壊し、入院までする。

そして、ほとんど戦友が死に、単身故郷に帰ってきた(仲間を裏切りながら、戦場を抜け出し)デメステルと、退院したバルブが再開し、汚れている二人のはずなのに、思いがけずも感動のラストが待っている。

とにかく、主役の男女2人はぜんぜん知らない俳優だったけど、その佇まい、存在感が凄かった。特にデメステル役の男優は憂いや思いを秘めつつ、矛盾や暴力の中でもある意味一図で朴訥な青年を独特な風貌とともに、なんともいえない雰囲気で演じている。

ブリュノ・デュモン監督は偽善を一切廃した、残酷な現実を観客に突きつけてくる一方で、純粋なラブストーリーともとれる展開もみせ、混乱させられながらも感動させられました。

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2007年7月 2日 (月)

ラッキー・ユー

米映画

監督:カーティス・ハンソン

出演:エリック・バナ ドリュー・バリモア ロバート・デュバル ロバート・ダウニーJr.

「LAコンフィデンシャル」、そして最近ではキャメロン・ディアズの「イン・ハー・シューズ」のカーティス・ハンソン監督の最新作で、ポーカーの勝負に人生をかけるギャンブラーたちの物語にドリュー・バリモアかラブ・ストーリーのエッセンスを効かせた娯楽作。

主演は若くして渋い演技をみせるんだけど、あんまり目立たないエリック・バナだけど、彼の雰囲気が、天才的だけど父親との確執に悩み、身も心もギャンブルに浸し込ましている孤独なギャンブラーにはまっていて、なかなかよかったです。

ドリュー・バリモアが出ているんで、「ラブ・ソングができるまで」みたいに主人公にベッタリくっついてラブラブになりながら、支えてくみたいな話かなあと想像していたら、ドリューのキャラはこれまでの明るくて爛漫なところは変わっていないけれど、さすがにカーティス・ハンソンの映画だけあって、コメディタッチなキャラはぐっと抑えつつも、本質的にはその延長線上にあり、暗くなりがちなストーリーや主人公を明るく支えつつも、かなり控えめな使われ方をしている。出番はこれまでの主役級の映画に比べたら若干少ないものの、大人の女性の一面を垣間見せたり、カントリー歌手の役で歌声を披露したりと、結構楽しむことは出来た。

エリックとドリューの恋愛はあくまでサイド・ストーリーのように描かれており、メインとなるのはギャンブラーたちが知恵と策略を張り巡らすポーカーの話で、主人公と、彼にポーカーを教えた伝説的なギャンブラーでありながら分かり合えず最悪の関係にある父親との対決の話であり、主人公の前に立ちはだかる父親はまるでダース・ベイダーのよう。その父親を演じるのが名優ロバート・デュバルであり、哀愁と厳しさとやさしさ、そしてユーモアをかね揃えた伝説のキャンブラーを絶妙に演じている。

エリック・バナにはちょっとかわいそうだけど、デュバルの演技とドリュー・バリモアが見れただけでも、この映画を見た元を取れたかなと。

そしてまた、ポーカーのシーンもリアルで迫真に迫り、他のギャンブラーたちもそれぞれ個性があって、ドキドキハラハラしながら見ることが出来た。ポーカー映画ではマット・デイモンとエドワード・ノートンが出ていた「ラウンダーズ」というなかなかいい映画があったけど、この映画ではポーカーのルールもさりげなく教えてくれてジワジワと盛り上げていくところはさすがハンソン監督で、そんなに片意地はらずに見られるけど、奥が深い勝負の世界が体験でき、かなり惹き込まれて見てしまいました。

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2007年7月 1日 (日)

ボルベール<帰郷>

スペイン映画

監督:ペドロ・アルモドバル

出演:ペネロペ・クルス カルメン・マウラ ロラ・ドゥエニャス ブランカ・ポルティージョ ヨアンナ・コバ チュス・ランプレアヴェ

スペインの奇才にして巨匠 ペドロ・アルモドバル監督の最新作。宣伝文句によれば傑作「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」に続く女性賛歌3部作の最終作ということらしいけど、ホントに3部作として作られたのか、そもそも女性賛歌というものが何なのかよく分からないけど、とにかく、前作の男ばっかりのホモ映画「バッド・エデュケーション」が分かりにくい(私が)もので、強烈に感動した「トーク・トゥ・ハー」に比べてあんまり乗れなかっただけに、逆境というか異様な状況にも負けずに強く生きていく女性たちを描いた本作には素直に感動させられた(新鮮な驚きもありながら)。

女性ばかりの主要キャラで、逞しく生きる姿を描くのは、「オール・アバウト~」に似た感じがあるけれど、こちらのほうがもっとシンプルで、パワフルさは「オール~」と変わらないけれど、ペネロペ・クルスを初めとした女性たちがはっきりしていて、よりストレートに伝わってきた。

「オール~」にも出演していて、その後ハリウッドスターになっちゃったペネロペ・クルスの久々のスペイン語の芝居だったけど、「オール~」のときはまだ線の細い印象があったのが、今回はメチャメチャ逞しい女性、悪く言えばオバちゃん役をずぶとく貫禄たっぷりに(でも母親とのシーンでは弱さも見せ)、そして美しく演じていて、これがメチャクチャよかった。この雰囲気はアメリカ映画ではなかなか出ないと思うし、スペイン映画、そしてアルモドバル映画の奥深さと強烈さを改めて感じました。

ストーリーはあんまり説明すると面白くなっちゃうんでしないけど、三代に渡る女性が、殺人、孤独、生活、死といった様々なものと深く関わり、戦い、助け合いながら生きていくというものを、アルモドバル風の極彩色なハデさの中に、ジンワリとした感動が随所に盛り込まれていて、よかったです。

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