2007年8月10日 (金)

レミーのおいしいレストラン

米映画(アニメーション)

監督:ブラッド・バード

出演(声):パットン・オズワルト ルー・ロマーノ ジャニーン・ガラファロ イアン・ホルム ピーター・オトゥール

単純に面白い。ていうか、すごく面白かった。

オモチャ、虫、モンスター、魚、車といったものを主人公にフルCGアニメを作ってきたピクサーが、身近にいる動物でマンガになりやすいだけにあえてしてこなかったとも思える「ネズミ」を主人公にし、それを活き活きと動かして、印象的な物語を作り上げた。

ピクサーは次々と斬新な映像と心温まるストーリーが詰まった作品を作り続けてきたけど、正直なんとなく微妙に飽きてきた感があったけど、今度の作品は新鮮な驚きと感動があった。身近な動物であるネズミのしなやかでなめらかな動きと、ピクサーアニメとしては初めてキチンと普通の人間を主要キャラにして動かしていることがとても新鮮だった。

「Mr.インクレディブル」も人間だったけど、かなりデフォルメされたスーパーヒーローたちで、文字通り人間離れした人たちばかりだったので、今回の普通の人たちの動きや仕草、表情にちょっとした驚きと新鮮さがあってよかった。最近のCGアニメはモーションキャプチャーという、人間の動きをコンピューターに取り込んで映像化する技術が多様されていて、変なリアルさに逆になんか機械的な印象を感じてしまっていたけど、この作品ではそれを一切使わず、登場人物の動きを創造していて、それがコミカルで温かく、とてもしっくり来た。

そして料理の描写、パリの街並み、建物の繊細で緻密な描き方がとてもよく、物語やキャラたちをガッチリ支えている。

厨房の中で大冒険するネズミの姿は、昔の「トムとジェリー」を彷彿とさせる懐かしさを感じさせながらも、メチャメチャスピーディーで飽きることをさせない。ピクサーの前作「カーズ」もそこそこ面白かったものの、正直クルマの単調な動きには、後半ちょっと飽きちゃうところもあったけど、今回は動きで魅せながらストーリーをグイグイ推し進めていく。

お話は、フランスの田舎で群れといっしょに暮らしているネズミのレミーは、人間の言葉や文字を理解し、中でも特異な嗅覚と味覚により料理にメチャメチャ興味を持ち、人間の天才料理人グストーを尊敬し、彼が書いたレシピ本も熟読している。ある日、レミーの行動が基で、人間に見つかり、群れはそこを脱出する。逃走中、群れと離れたレミーはパリの街に辿りつき、グストーが経営していたレストランの厨房にたどり着く。そこで料理が全く苦手の若者リングイニと出会い、2人が手を組み、料理の世界で注目されていく…というもので、予告編通りの内容を説明するとなんか安っぽい感じがするけど、これがネズミや人間それぞれのキャラがキッチリ描かれていて、ストーリーの流れやセリフもしっかりしていて、シンプルだけど、キッチリ完成されたいい映画でした。

監督のブラッド・バードはピクサーでは「Mr.インクレディブル」に次ぐ監督作品だけど、今回のが格段によく、量産されるアメリカ性のCGアニメとは比べようもなくよく、ピクサー作品の中でも相当高いところにランキングするんじゃないかと…

と、いうより今年の夏の大作の中でもこれが一番よかったかも。

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2007年8月 7日 (火)

魔笛

英映画

監督:ケネス・ブラナー

出演:ジョセフ・カイザー エイミー・カーソン ベン・デイヴィス ルネ・パーペ リューホフ・ペトロヴァ

モーツァルトのオペラを数々のシェイクスピア作品を斬新に映像化してきた天才ケネス・ブラナーが現代のすごいオペラ歌手たちを使って、豪華なオペラ映画を作りあげた。もちろんオペラなんて見たことはないし(でもやっぱりモーツァルトだけあって使われてる曲のいくつかは聴いたことがあるもの)、出演者もぜんぜん知らない人だかりだけど、これが単純にオモシロい!そして、歌声というか、使われている曲の数々もモノスゴイ!

オリジナルのオペラは古代が舞台らしいけど、舞台を大胆に1910年代の第一次世界大戦下に変えてるんだけど、ブラナーは超大作「ハムレット」でも舞台を1900年代初頭に変えていて、そんなに違和感はないというか、メチャメチャあっていて、かえって壮大なスペクタクルになっている。同じくシェイクスピアの「恋の骨折り損」をミュージカル映画にしていたけど、ミュージカルどころか、まさにオペラ映画というべき内容は芸術性はモチロンのこと娯楽性においても相当高いレベルの作品になっている。

お話は、ある国の兵士タミーノは敵の毒ガスに襲われたところを3人の美女に助けられるが、この3人は女王の侍女で、敵国に捕えられている女王の娘の救出を依頼される(この時に魔法の笛を渡される)。タミーノはこの娘・パミーナの写真を見た途端、一目ぼれし、運命の女と信じ込み、途中で出会った小心者の若者・パパゲーノと一緒に敵国に潜入し、そこで暗黒卿・ザラストロと対決するけれど…

全編重厚な歌ばかりだけど、思ったよりもストーリーは分かりやすく、すぐに物語の中にググクっと惹き込まれていく。現代風にアレンジされているけれど、二百数十年前に作られたものとは信じられないぐらい、ラブストーリー、戦争、冒険もの、そして善と悪が交差する物語の奥深さやエンターテイメント性には驚かされた。更にその古典をアクション、CG、キレイなファッション、コメディで彩るケネス・ブラナーの演出はお見事としか言えず、2時間ちょっと、ドップリと贅沢な時間に浸ることができる。

それにしても、出てくる一流のオペラ歌手たちの歌は素人が聞いてもものすごくよく(特にザラストロ役のルネ・パーペと女王役のリューホフ・ペトロヴァという人がものすごい)、メチャメチャ貴重なモノを見ることができました。

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2007年8月 6日 (月)

オーシャンズ13

米映画

監督:スティーブン・ソダーバーグ

出演:ジョージ・クルーニー ブラッド・ピット アル・パチーノ マット・デイモン ドン・チードル エレン・バーキン アンディ・ガルシア

ジョージ・クルーニー扮するオーシャン率いる詐欺師というか泥棒なのか犯罪集団の活躍(?)を、豪華キャストで、しかも社会派で個性派のソダーバーグが純粋な娯楽作として軽~く描いた人気シリーズの第3弾。

ぶっちゃけ「12」はヨーロッパを舞台になんかゴチャゴチャした展開で、よく分からなかったというか、はっきりいって微妙な感じだったけれど、今回は舞台をラスベガスに戻してシンプルに描ききっている。

キャストはクルーニー、ブラピ、マット・デイモンといった超主役級のメンバー(あと、「ホテル・ルワンダ」のドン・チードルも)はそのままだけど、ジュリア・ロバーツ、キャサリン・ゼタ・ジョーンズといった女性陣は登場しない。女優2人はどちらもソダーバーグ映画でアカデミー賞を取っているだけに、ソダーバーグのお祭り映画というこの作品に出なくなっちゃったのはけっこうトーンダウン感は否めないけど(特にジュリア・ロバーツが出ないのは痛いけど、前作で「ジュリア・ロバーツ」に米が間違えられるという究極というか寒いギャグをやっちゃったので、これ以上やることがなくなってしまったのかも)、その分、超大物アル・ハチーノを悪役に据えて、男たちの戦いとして描かれる。

で、お話は仲間のひとりがホテル王のアル・パチーノに陥れられ、その復讐として彼が新たにオープンするカジノをターゲットに仕事をするというもので、トリックや狙うものの違いはあるけれど、筋書きは「11」とほとんど同じで、ターゲットがアンディ・ガルシアからアル・パチーノにグレードアップしたぐらいで、むしろジュリア・ロバーツとのロマンス(とそれに伴う作戦の不確定要素)みたいなものがなくなって、ホントにシンプルになっている。

アル・パチーノはさすがのシブさと貫禄だけど、ぶっちゃけ描き方が軽くてちょっともったいない感じ。でも「ゴッドファーザーPARTⅢ」での師弟コンビであるアンディ・ガルシアとのシーンや、「シー・オブ・ラブ」でロマンス(とサスペンス)を演じたエレン・バーキンとの競演とか、パチーノ好きとしては、けっこう楽しめる要素はありました。

あと、すっかり熟女になったけど、色気タップリのエレン・バーキンがマット・デイモンと絡むシーンはグダグダのエロエロさに思わず笑わされてしまった。

シンプルで軽妙に描くことに心がけているだとは思うけど、それぞれのキャラの描き方も含めもの足りなさは否めないのと、「11」とダブるストーリーに、「なんで作ったの?」みたいな疑問も湧き出てきちゃったけど、あんまり難しく考えずに気楽に見るのが一番で、次に期待しようと思っていたら、さすがもう作らないみたいで、そう考えると非常に残念な気も…

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2007年8月 5日 (日)

夕凪の街 桜の国

日本映画

監督:佐々部清

出演:田中麗奈 麻生久美子 堺正章 藤村志保 吉沢悠 伊藤充則 中越典子

原爆投下から13年経った昭和33年の広島で、原爆で家族を失い、自らも被爆した女性(麻生久美子)が苦しみながらも健気に生きる姿を描いた「夕凪(ゆうなぎ)の街」というパートと、現代、彼女の残された家族の姿をその一員である同年代の女性(田中麗奈)の視点で描いた「桜の国」というパートの2つのお話が交差しながら、原爆の影響を大なり小なり受けながら(というか相当な影響を受けながら)、支えあいいろんなことを抱え克服していく人たち(家族)を描いた映画。

同名のメチャメチャ評価の高いマンガ(読んだことないというか、この映画を見て買っちゃったけど)を、「半落ち」等でシブい映画を撮る佐々部清監督で映画化した作品だけど、ハデさや過度な演出もないけど、静かにジワジワくる映画でした。

特に昭和33年のパートの主人公・皆実(みなみ)を演じる麻生久美子は映画を中心に活動していながらも、主演は行定勲の初期の作品「贅沢な骨」や「eiko」ぐらいでインディー系の小さい作品だったので(でも「贅沢~」みてファンになったんだけど)、こういう話題作での主演にはけっこう期待していたけど、控えめだけど懸命に生きる女性を、静かな口調だけど、しっかりジワーっと印象づけらける。

その他、藤村志保、堺正章といった脇を固める人たちもいい味を出していて映画全体の雰囲気を作り出している。もう一人の主人公、現代を生きる七波(ななみ)役の田中麗奈はこういった人たちの中で、なんとなく浮いている印象を受けてしまったけれど、それは原爆を実体験として生きている人たちと、間接的にししか認識できていない映画を見ている人達のほとんどを代表するような存在として、彼女の目を通して映画というか原爆がもたらしたものを見せられるという構図になっているのかなと、見終わった後に感じさせられました。

原爆をテーマにしながらも、残酷なシーンなどはほとんど抑えながらも、銭湯でケロイドのある女性たちを写してみたり、時おりハッとさせられるシーンが挿入させらている。そして、皆実の言葉は、日本人だけでなく、世界の人、特にアメリカ人に聞かせたいぐらいで、この時期、しかも防衛大臣のあんな発言があった後でもあるし、いろいろと考えさせられる(けれども、難しくなく、静かに感動させられる)映画でした。

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2007年8月 4日 (土)

トランスフォーマー

米映画

監督:マイケル・ベイ

出演:シャイア・ラブーフ ミーガン・フォックス ジョシュ・デュアメル ジョン・ヴォイト ジョン・タトゥーロ

スピルバーグ製作総指揮で、「アルマゲドン」を始めとしたドハデなアクション映画ばっかり撮ってるマイケル・ベイが監督して、いろんな乗り物がロボットに変形する子供向けのオモチャやアニメとして80年代に流行っていた「トランスフォーマー」(たぶんオモチャは日本製で、アニメはアメリカ製?)を大マジメに映像化した超大作。

予告編は、子供向けのアニメが原作だってことを全く感じさせないようなハードで怖いSFみたいな雰囲気でロボットたちもチラチラしか見せていなかった(スピルバーグ映画ではよく使われる宣伝方法だけど)けれど、本編では正義の味方と悪いロボットたちがガンガン出まくって、戦いまくる。ロボットが善と悪の集団に分かれて戦うところとか、ロボットもコンボイ(映画で違う名前{多分アメリカ国内での名前}だったけど)とかアニメそのままのキャラだったり、アニメのデザインを相当残していたり、内容的にはアニメの設定や内容とほとんど同じになっている。(アニメをちゃんと見たことは一度もないけど、多分こんな感じなんだと思う)

でも、娯楽映画のプロたちが真面目に作ってるんで、ロボットたちもCGでメチャメチャリアルで迫力ある出来になっていて、アクションもすごい迫力になっている。そして、CGばっかりじゃなくで、マイケル・ベイ映画らしいカーチェイスとか実写のスピーディーなアクションもバランスよく楽しませてくれるし、ストーリー自体は単純というか、ほとんどマンガだけど、未知の敵に真剣に対処する軍人や政府の人達の話と、主人公の高校生のほとんどコメディの話がテンポよく、それにロボットたちのアクションが絡み合って、最後まで飽きないというか、けっこう関心させられながら見てしまいました。

その中でも、出てることを知らなかったジョン・タトゥーロが怪しい捜査官役で出てきた時が一番びっくりして、笑ってしまった。国防長官役のジョン・ヴォイトはこの手の映画によく出ているけど(マイケル・ベイの「パール・ハーバー」にも大統領役で出ていたし)、名優(怪優)ジョン・タトゥーロがこんな映画でキチンと演技をしているのも隠れた見所(私にとって)だった。

今年の娯楽大作は続編が多く、多少なりとも前作からのつながりとか思い出したりしながらみなければならなかったけど、そんな中で、どんな映画か見てみるまで分からなかった楽しみがあったし、見たら見たで想像以上にロボットたちが動きまくり(ちょっとゴチャゴチャしてたけど)、けっこう驚かせられ、面白かった。大の大人たちが真面目にこういうモノを作っているのも好感が持てました。(大人も楽しめるように作っているけど、ちゃんとロボットヒーローものの図式を守ってるところがよかった)

とにかく、多分この夏一番、なんも考えないで見られる映画じゃないかなと思います。

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2007年7月22日 (日)

ゴースト・ハウス

米映画

監督:ダニー・パン オキサイド・パン

出演:クリステン・スチュアート デイラン・マクダーモット ペネロープ・アン・ミラー

「the EYE」などで有名なタイのパン兄弟が、サム・ライミ プロデュースの下、ハリウッドで製作したホラー映画。パン兄弟のタイ時代の作品は見たことなかったけど、おどろおどろしいアジアのホラー監督をサム・ライミが「呪怨」の清水崇監督のように抜擢したっていうことで、なんか新しいものが見られるかとそれなりに期待して見に行ったんだけど…

ストーリーは、都会を離れて田舎に移り住んできた一家が、引っ越してきた古い家で怪奇現象に合い、その現象が見える娘が恐怖の日々に怯えるというもの。

これが、展開やら真相やらどっかで見たことあるようなもので、新鮮さのかけらもないベタベタの、典型的な安っぽいホラーになっていて、正直ガッカリでした。

主演の少女は「パニック・ルーム」でジョディ・フォスターの娘役を演じていたクリステン・スチュアートは恐怖に怯える様や家族の中で悩む姿はなかなかよかったし、母親役にはすっかりくたびれちゃった感は否めないけど、「レナードの朝」や「カリートの道」みたいな一線級の映画に出ていたペネローペ・アン・ミラーが出てるし、一家とともに暮らす男を「マイ・ビッグ・ファット・ウエディング」でヒロインの相手役だったジョン・コーベット演じているなど、この手のホラー映画にしたら、けっこう豪華なキャストなんだけど…正直この手の映画の中でも残念な仕上がりになっちゃってました(と感じちゃいました)。

とにかく、ヒロインがかわいかっただけに余計残念でした。

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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

日本映画

監督:吉田大八

出演:佐藤江梨子 佐津川愛美 永瀬正敏 永作博美

奇抜なタイトルが目を惹くサトエリ主演のホームドラマ。内心「題名よりも中身で勝負しろよ」と思いつつ見に行ったところ、なかなかタイトルに負けてないインパクトで、しっかりとコワ面白いブラックコメディ(それとほんのちょっとだけ考えさせられる)に仕上がってました。

サトエリ扮する主人公澄伽(すみか)は、超自己中心的な勘違い女で、才能もないのに女優になれると信じ込み上京するも、4年間芽が出ず、両親の事故死を機に久々に故郷のド田舎の村(石川県のどっか)に帰ってくる。そこには兄夫婦(永瀬正敏と永作博美)と高校生の妹が暮らしているけれど、澄伽によって引っかき回されることになる。

その中でも妹は姉にイジメられながらも、それに耐え抜き、その体験を恐怖マンガにしていまう、自虐的で冷静なキャラで、この姉妹2人を中心に恐怖映画さながらの、凄いストーリーが展開していく。

佐藤江梨子は超傲慢で人の迷惑を顧みない女に全身でなり切っていて、「キューティーハニー」といい、この映画といい、アクが強くて特異なキャラをやらせるとグッと引き立つ物を持っている。

そして映画の印象を決定づけているのが、いびられ役の妹を演じる佐津川愛美という若い女優で、けっこうカワいい顔をメガネで隠し、ひたすらイジメに耐え抜き反撃の機会を探る少女を可憐で不気味に演じていて、サトエリ以上にはまっている。

その他、妹に頭が上がらず、嫁にイバりまくる、でも意外に常識的なダメ兄貴を演じる永瀬正敏が作品全体を落ち着きをもたらしている他、なによりも永作博美がコインロッカーに捨てられ、孤児院で育ち、家族愛を求めるバカポジティブな嫁を怪演していて、主役姉妹以上のインパクトと感動すら覚えました。

救いとか教訓めいたものはほとんどないけれど、なかなか他にない痛快な映画でした。

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インランド・エンパイア

米映画

監督:デイヴィッド・リンチ

出演:ローラ・ダーン ジェレミー・アイアンズ ジャスティン・セロー ハリー・ディーン・スタントン

凄い、理解不能だけど、やっぱりリンチは凄い!特に今回は3時間ドップリとリンチワールドに浸りまくりで、もう脳がぐちゃぐちやになる感じだけど、他では味わえないこの感覚はやっぱりいい!

ストーリーは説明しきれないというか、理解しきれないというか、とにかくグチャグチャな話がリンチ流の衝撃的な場面転換なんかでコロコロと変化していく。前作の大傑作「マルホランド・ドライブ」はまだ自分なりにストーリーが解釈でき、楽しめたんだけど、今回はほとんどヒントすら与えられず、ドンドンストーリーが爆走していく。

お話のようなものを整理すると、ローラ・ダーン扮する女優が、ある映画への出演が決まり撮影に入る(監督はジェレミー・アイアンズ)んだけど、その映画の中の世界と現実がゴッチャになり、そこにウサギ人間やら、訳の分かんないポーランド人やらのシーンが入り乱れて、何が何のシーンが分かんないんだけど、リンチらしい不穏な映像がデジカメのザラついた映像と相まって、とにかく深~いところまで、引きずり込まれていく。

主演のローラ・ダーンは「ワイルド・アット・ハート」以来の出演で、ぶっちゃけ今さらど~なの?と思っていたけど、この不安定で不気味な映画にピッタリで、メチャメチャよかった。

シーンごとに自分なりの解釈がどんどん裏切られていくんだけど、それが快感になっていき、シーン毎に妙な感動も味わえる。ラストの大団円みたいな終わり方もなんか妙に納得。

たぶんあと5回見ても理解できないと思うけど、でもまた何回も見てしまうだろうと思う、やっぱりリンチの魔術はスゴイと再認識されられる、ホントにモノスゴイ映画でした。

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ファウンテン 永遠につづく愛

米映画

監督:ダーレン・アロノフスキー

出演:ヒュー・ジャックマン レイチエル・ワイズ エレン・バースティン

「π」「レクイエム・フォー・ドリーム」といった奇抜で意表を突く作品を作ってきたダーレン・アロノフスキーの新作。永遠の命と愛を巡る時空を超えたラブストーリー。

ヒュー・ジャックマンとレイチェル・ワイズの二人が過去・現在・未来に生きる男女を演じている。

中世スペイン、レイチェル・ワイズ扮する女王の命で、ヒュー・ジャックマン扮する騎士がマヤの奥地、ピラミッドの中に進入していく。そこには人類の命の基、「生命の木」があって…という話と、現代、脳腫瘍で余命短い妻(レイチェル・ワイズ)を救うために新薬の開発を続ける科学者(ヒュー・ジャックマン)の話と、たぶん未来、木が茂っている球体の中に男(ヒュー・ジャックマン)が一人だけいて、宇宙空間を漂っている話が交錯して描かれている。

永遠の命について描きながらも、永遠を求めて、愛する人を失うことをとことん拒絶する男と、死を自然なこととして受け入れる女性がとても対照的に描かれている。

ヒュー・ジャックマンと、「ナイロビの蜂」でアカデミー賞とったばかりのレイチェル・ワイズはこの不思議なラブストーリーを大人の演技で濃厚に演じている。特にヒュー・ジャックマンは「X-MEN」とか「ニューヨークの恋人」なんかよりもぜんぜんかっこよかった。あと、「レクイエム・フォー・ドリーム」にも出ていたエレン・バースティン(「エクソシスト」のお母さん)がいい味出している。

最初は「永遠の命」みたいなテーマなんで、「ハイランダー」みたいなのを想像してたけど、似てる部分もありながらも、全然違い、かなりしっとりとした大人の映画に仕上がっていて、そして最後にはもの凄い映像が展開されてビックリさせられる、ただの映画じありませんでした。

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ハリウッドランド

米映画

監督:アレン・コールター

出演:エイドリアン・ブロディ ベン・アフラック ダイアン・レイン ボブ・ホフキンス

「戦場のピアニスト」デアカデミー主演男優賞を受賞したものの、その風貌からかイマイチ役に恵まれてない感がするエイドリアン・ブロディが探偵役で、大作にバンバン主演してきたものの、盟友マット・デイモンと違いなんか印象が薄いベン・アフラックが殺されたハリウッドスターに扮した、ミステリー映画。

1950年代に米国で「スーパーマン」のTVドラマに主演し、子供たちに絶大な人気を誇っていた俳優ジョージ・リーブスが自宅で射殺死体として発見され、現場の状況から自殺と判断される。この実際の事件を基に、エイドリアン・ブロディ扮する探偵が謎の多いこの事件を他殺の線で探り、その裏にうごめくハリウッドの影の部分に迫っていくという内容。

エイドリアン・ブロディが捜査を進めるのと並行して、生前のジョージ・リーブス(ベン・アフラック)の姿を描き、売れない頃の彼がハリウッドの大物の妻(ダイアン・レイン)と関係を持ち、スーパーマン役に抜擢され人気が出るんだけど、逆にそのイメージが強すぎて他の役に恵まれず苦悩する姿が描かれる。

これを1950年代のファションや風俗の中でロマンチックに描き、ミステリーの部分では「L.A.コンフィデンシャル」風のハードボイルドタッチで描いている。

と、けっこう面白そうな感じがしたんだけど、はっきりいって微妙に中途半端な感が否めない。エイドリアン・ブロディのパートは家庭の話や他の事件の話なんかも絡みあってなかなかいい感じなんだけど、なんでこの事件に執着するのかがピンとこなかったし、ベン・アフラックのところは話が飛び飛びで、彼の苦悩やら、周囲との関係とかがなんとなく伝わってこず、正直ちょっと退屈…

ぶっちゃけ何を言いたいのか、よく分かんなかったというのが正直な感想でした。

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西遊記

日本映画

監督:澤田謙作

出演:香取慎吾 内村光良 深津絵里 伊藤淳史 多部未華子 加賀丈史 岸谷吾朗

SMAP香取慎吾主演の人気ドラマの映画化。テレビはほとんど見てなかった(1話だけみたけど…)けれど、金閣銀閣が出てくる有名なエピソードを映画というそれなりの予算でやるってんで、ちょっと見てみようかなという気にさせられたんだけど…

中国の砂漠のシーンはなかなか良かったし、役者の人たちもがんばってるという印象は感じられた。特にウッチャンのカンフーシーンはなかなか楽しめした。あと、ヒロイン役の多部未華子は「理由」以来久々にスクリーンで見たけど、なんかこの手の映画とのギャップが逆に新鮮でよかった。

でも、まあ、映画の一番のターゲットはおそらく小学生ぐらいと思われ、最後まで見るのは正直つらかった…。アクションもちょっと微妙だし(このへんは中国の大作を見習ってスタッフを連れてくるとか…)、ギャグももろ低学年向けだし、なんか悟空もところどころで同じようなこと叫んでばっかりだし…

と、いう感じだったんだけど、映画館にいた小さい子供たちが大喜びで見てたんで、あれでよかったのかなとも思いましたが。

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ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

米映画

監督:デイビッド・イェーツ

出演:ダニエル・ラドクリフ ルパート・グリント エマ・ワトソン ゲイリー・オールドマン レイフ・ファインズ イメルダ・スタントン

魔法使いの少年少女が大騒ぎする大ヒットシリーズも第5弾となり、普通ならそろそろ飽きるころなんだけど、前回の「炎のゴブレット」で最大の敵ヴェルデモート(レイフ・ファインズ)が復活し、物語に緊張感が出てきた上に、シンプルなストーリーで、いままでで一番見やすかったというか、けっこう面白かった。

前作で復活した悪の帝王ヴェルデモートの存在に不安を覚えるハリー・ポッターたち主要キャラたちだけど、「魔法省」の大臣を始め偉い人たちはその復活を認めたくなく、逆に規制を強くする。その動きはホグワーツ(魔法の学校)にもあらわれ、厳しい先生が派遣され、学園内をどんどん取り締まるようになる…みたいなお話で、悪者との直接対決よりも、真の敵ではない内なる敵に悩まされる内容で、そんな中で悩みながらハリーたちも成長していく姿が描かれる。(ラストは悪者との対決も用意されているけど)

このシリーズ、はっきりいってお子様向のお話にはあんまり興味はなかったんだけど、ハリーたちを取り巻く大人たちを豪華な俳優陣が凄い(渋い)んで、おもわず毎回みてしまうんだけど、今回はなんといっても、魔法省から派遣される憎たらしいアンブリッジ先生にマイク・リーの傑作「ヴェラ・ドレイク」でアカデミー主演女優賞にもノミネートされたイメルタ゜・スタントンが、派手で憎たらしいオバさんを小気味よく演じていて、悪との対決に備えて暗くなりがちな作品のトーンをコミカルにいい味を与えている。

その他のキャストも相変わらず豪華で、レギュラーのマギー・スミスやアラン・リックマン(この人が出てるんでガマンして見続けているようなモンなんだけど)をはじめとして、シリウス・ブラック役のゲイリー・オールドマンもけっこう見せ場があるし、ヘレナ・ボトム・カーターまで出てくる他、たいした役でもないのにエマ・トンプソンもちゃんと出てるし、デビッド・シューリスもほとんどセリフもないのに…

で、ラストにはウェルデモートの軍団とハリーたちとの対決シーンも用意されているんだけど、ダンブルドア校長とヴェルデモートとの対決は「スターウォーズ エピソードⅡ」のヨーダとドゥークー伯爵の対決を彷彿とさせる展開と迫力でなかなかよかった。

なんか、やっと盛り上がってきたというか、初めて次に期待していいかなと感じました。

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2007年7月21日 (土)

舞妓Haaaan!!!

日本映画

監督:水田伸生

出演:阿部サダヲ 堤真一 柴咲コウ 小出早織 伊藤四朗 

正直言って、ほとんど期待をしていなかったんだけど、たまたまチケットを買わされたのと、植木等がちょっとでも出ているっていうことで見に行ったところ、これが予想に反してというか、けっこう面白かった。

阿部サダヲ扮する舞妓マニアの主人公が、堤真一扮する一流プロ野球選手と張り合いながら舞妓遊びをするために悪戦苦闘するみたいな内容は予告編や記事なんかで分かっていたけど、そこからがさすが宮藤官九郎脚本というか、想像も出来ないバカバカしい展開をみせる。

日本のコメディ映画は心が暖まる系かシュール系のどっちかという気がしていたけれど、これは珍しくアメリカ映画によくあるおバカ系のくだらない映画をキチンと作っている感じがして、とても好感が持てました。

この手のおバカ映画を成立させるにはやはり主人公のキャラが立っていなければならないけど、阿部サダヲはハイテンションな演技でその役割をキッチリ果たしている。

他の出演者もよかったけれど、特に阿部サダヲがはまってしまう舞妓・駒子役の小出早織という若い女優さんがよかったです。ほとんど白塗りの舞妓姿でばっかりの出演なんだけど、独特の丸顔にちょっと舌足らずなんだけど凛とした京都弁が、ホントの舞妓さんみたいで、なかなかでした。(柴咲コウも舞妓姿を披露するんだけど、顔立ちとかモロモロ含めても小出はよかったです)

とにかくメジャー系で公開規模も大きいのに、キッチリばかばかしく仕上がっている、なかなかない映画というか、けっこう得した気分になれました。

そしてなによりも植木等の姿がスクリーンで見られるだけでも見る価値あるかなと。

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2007年7月 8日 (日)

殯の森

日仏合作

監督:河瀬直美

出演:うだしげき 尾野真千子 渡辺真起子

今年相当話題になった、日本人の河瀬直美監督によるカンヌ映画祭グランプリ作品。その割には公開規模が小さい気がするものの、彼女のこれまでの作品から考えて、こなもんかなと思いつつ、やたら混んでいる中見にいってきました。

長編デビュー作「萌の朱雀」以降、いわゆる普通のストーリーのある商業映画とは一線を画し、ドキュメンタリーのようにそこに息づく人達の、日常生活をリアルに描きながら、心の動きを細やかに捉える作風はここでも変わらず、むしろ余計なものを更にそぎ落とし、シンプルだけど深い、レベルの高い作品だった。

真千子はまだ20代半ばぐらいだけど、事故で小さな息子を亡くし、失意が癒えないまま介護老人ホームに勤めている。そこに住む認知症の老人・しげきは若い頃に妻を亡くし、認知症となった今、妻への思いが更に強くなっている。ある日、しげきを妻の墓参りに真千子が連れていくことになったけど、車は途中で故障し、真千子が目を話したすきに、しげきは深い森の中に分け入って行ってしまう。

その森の中をさまよい歩き、体で老人とぶつかり合い、触れ合ううちに、真千子自身も自分の傷を癒す体験をしていくようになる…みたいなお話。

「殯(もがり)」というのは、「敬う人の死を惜しみ、しのぶ時間や場所」のことと劇中でも説明しているけど、大切な人を亡くした哀しみに向き合い、そしてその死により自分自身も生きているとは言えない状態だったところから立ち直る姿が、むき出しの感情と、人間を蹴倒しながらも包み込む自然の中でより際立って描かれていく。

主演のうだしげきさんは全くの素人で、普段は本屋さんかなんかやっているらしく、そういう人を主役に起用するのは、なんかキアロスタミ映画みたいでもあるけど、ここでは認知症の人をしっかりと演じていて、若干老人にしては元気そうには見えちゃうけど(認知症とはそういうものかもしれないけど)、心のキレイさはスクリーンを通じて感じられ、その体当たりの演技には敬意すら感じます。

そして「萌の朱雀」で中学生だった尾野真千子が、あれから10年経って難役に挑んでいる。特に中盤、感情を爆発させ、その後しげきと体を温めあうシーンは圧巻で、前半メッチャ控えめで怯えていた彼女から一変、思わず惹き込まれてしまいました。

まぶしいぐらいに濃い緑の奈良の森も作用していたんだと思うけど、「認知症」という深刻なテーマを描いていて、その描き方もとてもリアルではあったものの、実際には認知症というものによって、現実や世俗から一線を引いた人のこころを描いたファンタジーにみえました。

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女帝 エンペラー

中国・香港合作

監督:フォン・シャオガン

出演:チャン・ツィイー ダニエル・ウー グォ・ヨウ ジョウ・シュン

シェイクスピアの「ハムレット」を西暦900年代の中国王朝におきかえて製作された歴史大作。それなのに、主役はチャン・ツィイーで、タイトルが「女帝」ってのは違和感があったけど、そこは設定はハムレットからもってきつつも、中国の観客向けに相当の脚色が加えられている。

ハムレットにあたる中国の皇太子ウールアンを演じるのは「香港国際警察」とかジャッキー映画で活躍しているダニエル・ウーなんだけど、彼はここでは決して主役ではなく、主役はやはりチャン・ツィイーで、彼女はハムレットの母・ガートルードにあたる王妃の役。とはいっても、先王の後添えで、ウールアンとは義理の親子、しかも密かに想いあっているという設定で、このあたりから、原作の雰囲気や事情とだいぶん変わってくる。

設定も微妙に違えば、冒頭からこれほどかというほど、アクションをつぎ込んでくる。これがワイヤーアクションたっぷりで、なんだか舞踊をみているようで、中国の自然も相まって、最初はまあまあ楽しめたんだけど、ちょっとやりすぎというか、オーバーすぎで、微妙に引いてしまった。

でもって、ストーリーはハムレットのはずのウールアンの苦悩みたいなのは、そんなに描かれず、もっぱらチャン・ツィイーが策謀をめぐらしたり、王とイチャイチャするシーンで占められる。

そしてラストの展開は、原作のそれと同じ感じではあるものの、策謀をめくらせているのが王妃だけに、死ぬ人たちが若干いれかわる。その様子はハムレットぽくもあるけれど、別にハムレットでなくてもいいんじゃないの?的にも思えてしまう。

王妃はパンパン策謀をめぐらすし、王もガンガン人を殺すし、皇太子(ハムレット)は何を考えいるか分かんないしで、誰にも感情移入できないまま、けっこう長いお話に付き合わされたという感じ。そんな中で、オフィーリアにあたる皇太子の恋人役で、「小さな中国のお針子」に出ていたジュウ・ションだけは。相変わらず清楚で可憐な役で癒されました。

でもまあ、豪華な宮廷の様子や、チャン・ツィイーの衣装やらを見ているだけでも、けっこう楽しめるし、貫禄が増してきたチャン・ツィイーの演技や美しさも楽しめました。ホントはチャン・ツィイーはオフィーリアあたりをやって、王妃はコン・リーやマギー・チャンあたりがやったほうがいい感じになったと思うんだけど…

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街のあかり

フィンランド映画

監督:アキ・カウリスマキ

出演:ヤンネ・フーティアイネン マリア・ヤルヴェンヘルミ マリア・ヘイスカネン カティ・オウンネン

いやあ、カウリスマキ映画はやっぱりいい!世界でも唯一無二の佇まいのある映画をこうやって見られるだけでホントに幸せだなあと思います。

傑作「過去のない男」から約4年の待望の新作は、「浮き雲」「過去のない男」から続く敗者3部作の最終作ということなんだけど、もともと「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」を始めとして成功者を主役にしてというか、出てくることさえ珍しく、さえない負け犬たちを暖かく、淡々と描く、独特の映像と物語は1作1作なんともいえない余韻を味あわせてくれる。

「失業」「ホームレス」と続いてきた、いわゆる敗者3部作第3作の今回は「孤独」だそうで、主人公のコイスティネンはヘルシンキで夜警をやってる冴えない男で、口数も少なく、仕事仲間からも全く相手にされない孤独な日々を送っている。そんな彼にある日美女が話しかけてきて、たちまちコイスティネンは彼女に夢中になる。ところが彼女は窃盗団の一味で、コイスティネンが警備を受け持つ会社の金品を狙って差し向けられたもので、まんまと彼を利用して盗みを働いてしまう。その後も仕事を失い、服役し、住むところまで失い、ドン底まで落としいれられながらも、愚直なまでにそれらを受け入れていくコイスティネンの姿はこれまでのカウリスマキ映画の主人公たちを更に凝縮した、印象深いキャラクターになっている。

前作「過去のない男」が、記憶を失い、身包みはがされた男をホームレスや周囲の人たちが温かく受け入れられる話だったけど、今回は主人公に次から次へと不幸を見舞わせ、ほとんど救いの手を差し伸べない。主人公もそういう人でジッとそれらを受け入れつつも、希望(それも安易な)を捨てずに生きていく姿に、いつのまにか引き込まれていく。そして、最後の最後でキチンと心に残るラストシーンを用意してくれている。やっぱりこの人の映画はいいです。

主演のヤンネ・フーティアイネンは、これまでのマッティ・ペロンパーやマルック・ペルトラに比べると、年も若く、哀愁というか、味といったものが若干足りない気がしたものの、ホントに孤独で温もりを追い求める男を、独特な眼差しで、カウリスマキ映画の一部分になっている。

そして彼を陥れる美女、悪党たち、彼をひそかに想う女性、犬、車、ヘルシンキの街並みまで、この物悲しくも温かい映画をしっかりと構成していて、全体でひとつの詩のような印象を形作っている。

監督にはこれからも、ず~っと負け犬を描き続けて、その中にある小さな幸せを描いていって欲しいと願います。

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2007年7月 7日 (土)

シュレック3

米映画(アニメ)

監督:クリス・ミラー

出演(声):マイク・マイヤーズ エディ・マーフィ キャメロン・ディアス アントニオ・バンデラス ルパート・エベレット

緑色の怪物がおとぎの国で大活躍する、ドリームワークスが製作する大ヒットCDアニメシリーズの第3弾。

「1」では、おとぎの国のキャラたちが甘ったるくて慣れなかったことや、パロディが鼻についたことなんかで、ビミョーに好きになれなかったんだけど、「2」ではそのキャラたちに慣れたのと、新しいキャラたちも新鮮ながら映画に馴染み、展開もスピーディでテンポがあり、ギャグも笑えて。意外にもかなり満足させにれた。

で、そんなでそこそこ期待もした「3」だったけど、ぶっちゃけアイディアも展開も微妙に行き詰った感が否めなかった。(私だけがそう感じただけかも…ですが)話がとにかく単純というか、たいした新キャラも出ず、敵も前回と同じだし、新鮮さがほとんど感じられなかった。ギャーギャー騒ぐだけのおとぎキャラたちにも「1」と似たようなイライラ感が…。(ピノキオは好きだけど)

CGの技術はドンドン進歩して、映像はリアルになっているんだけど、シュレックみたいなキャラはあんまりリアルにしなくても…

でもまあ、エディ・マーフィーとかアントニオ・バンテラスとかの声のコメディ演技は相変わらず楽しく見ることができる。密かに自分が気に入っているのは、敵役・チャーミング王子役のルパート・エベレットで、実際にやっているようなニヒルな感じがCGのキャラでもよく出ていて、それらを楽しむだけでも、けっこう元はとれたような気に。

今回はシュレック夫妻に子供ができるのが、物語のかぎになっているようなんだけど、あんまりそのへんは興味なかったのが、乗れなかった原因かなあと。

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フランドル

仏映画

監督:ブリュノ・デュモン

出演:アドレイド・ルルー サミュエル・ボワダン アンリ・クレテル インジュ・デカエステカー

今年は日本人の河瀬直美監督がカンヌ映画祭のグランプリを受賞し、話題になったけど、これは、去年のグランプリ受賞作。

ブリュノ・デュモンという監督の映画は初めて見たけど、人の有様をとことんまで残酷に描きながらも、救いや美しさも垣間見せる、なかなか凄い映画だった。

フランスの田舎・フランドル地方で農業に従事している青年デメステルとその幼なじみの少女バルブはほとんど言葉も交わさないまま性交を交わし、一緒に過ごしているが、愛の言葉を交わすこともなく、ただ一緒にいるだけ。デメステルは秘めた思いを持ちつつも、バルブは他の男とも簡単に関係を持つ奔放な少女で、デメステルはそんな彼女のそばにいるだけで満足できている。そんな淡々とした田舎の若者の様子が、寒々としたフランドル地方の景色の中で、セリフも最小限で、ほんとにそこに生きている人々のようにリアルで素朴に描かれる。

ところが、その男たちが戦争に行ってから、映画のトーンが一変する。監督が描いているのは架空の戦争で、戦場がどこかも特定していない。油田が燃えているので、湾岸戦争やイラク戦争にも見えつつも、敵として描かれるのはアフガンやパキスタンのような西アジアの人にも見える。架空の戦争ながらもそこでの描写はとことん残酷で生々しく描かれる。地元ではさえない下層階級の青年たちが戦場では人が変わり(変わったというより、本質はこんなだとも見える)、敵もしくは敵と同じ肌の色の人を殺しまくり、レイプまでしていく。デメステルも例外ではなく、その手を汚していく。

一方、男たちを待つバルブは、夏になり残酷なまでに緑が濃くなってきたフランドル地方で相変わらず、心の乾きをムリヤリ癒すかのように行きずりの男とセックスを重ねながら、精神を壊し、入院までする。

そして、ほとんど戦友が死に、単身故郷に帰ってきた(仲間を裏切りながら、戦場を抜け出し)デメステルと、退院したバルブが再開し、汚れている二人のはずなのに、思いがけずも感動のラストが待っている。

とにかく、主役の男女2人はぜんぜん知らない俳優だったけど、その佇まい、存在感が凄かった。特にデメステル役の男優は憂いや思いを秘めつつ、矛盾や暴力の中でもある意味一図で朴訥な青年を独特な風貌とともに、なんともいえない雰囲気で演じている。

ブリュノ・デュモン監督は偽善を一切廃した、残酷な現実を観客に突きつけてくる一方で、純粋なラブストーリーともとれる展開もみせ、混乱させられながらも感動させられました。

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2007年7月 2日 (月)

ラッキー・ユー

米映画

監督:カーティス・ハンソン

出演:エリック・バナ ドリュー・バリモア ロバート・デュバル ロバート・ダウニーJr.

「LAコンフィデンシャル」、そして最近ではキャメロン・ディアズの「イン・ハー・シューズ」のカーティス・ハンソン監督の最新作で、ポーカーの勝負に人生をかけるギャンブラーたちの物語にドリュー・バリモアかラブ・ストーリーのエッセンスを効かせた娯楽作。

主演は若くして渋い演技をみせるんだけど、あんまり目立たないエリック・バナだけど、彼の雰囲気が、天才的だけど父親との確執に悩み、身も心もギャンブルに浸し込ましている孤独なギャンブラーにはまっていて、なかなかよかったです。

ドリュー・バリモアが出ているんで、「ラブ・ソングができるまで」みたいに主人公にベッタリくっついてラブラブになりながら、支えてくみたいな話かなあと想像していたら、ドリューのキャラはこれまでの明るくて爛漫なところは変わっていないけれど、さすがにカーティス・ハンソンの映画だけあって、コメディタッチなキャラはぐっと抑えつつも、本質的にはその延長線上にあり、暗くなりがちなストーリーや主人公を明るく支えつつも、かなり控えめな使われ方をしている。出番はこれまでの主役級の映画に比べたら若干少ないものの、大人の女性の一面を垣間見せたり、カントリー歌手の役で歌声を披露したりと、結構楽しむことは出来た。

エリックとドリューの恋愛はあくまでサイド・ストーリーのように描かれており、メインとなるのはギャンブラーたちが知恵と策略を張り巡らすポーカーの話で、主人公と、彼にポーカーを教えた伝説的なギャンブラーでありながら分かり合えず最悪の関係にある父親との対決の話であり、主人公の前に立ちはだかる父親はまるでダース・ベイダーのよう。その父親を演じるのが名優ロバート・デュバルであり、哀愁と厳しさとやさしさ、そしてユーモアをかね揃えた伝説のキャンブラーを絶妙に演じている。

エリック・バナにはちょっとかわいそうだけど、デュバルの演技とドリュー・バリモアが見れただけでも、この映画を見た元を取れたかなと。

そしてまた、ポーカーのシーンもリアルで迫真に迫り、他のギャンブラーたちもそれぞれ個性があって、ドキドキハラハラしながら見ることが出来た。ポーカー映画ではマット・デイモンとエドワード・ノートンが出ていた「ラウンダーズ」というなかなかいい映画があったけど、この映画ではポーカーのルールもさりげなく教えてくれてジワジワと盛り上げていくところはさすがハンソン監督で、そんなに片意地はらずに見られるけど、奥が深い勝負の世界が体験でき、かなり惹き込まれて見てしまいました。

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2007年7月 1日 (日)

ボルベール<帰郷>

スペイン映画

監督:ペドロ・アルモドバル

出演:ペネロペ・クルス カルメン・マウラ ロラ・ドゥエニャス ブランカ・ポルティージョ ヨアンナ・コバ チュス・ランプレアヴェ

スペインの奇才にして巨匠 ペドロ・アルモドバル監督の最新作。宣伝文句によれば傑作「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」に続く女性賛歌3部作の最終作ということらしいけど、ホントに3部作として作られたのか、そもそも女性賛歌というものが何なのかよく分からないけど、とにかく、前作の男ばっかりのホモ映画「バッド・エデュケーション」が分かりにくい(私が)もので、強烈に感動した「トーク・トゥ・ハー」に比べてあんまり乗れなかっただけに、逆境というか異様な状況にも負けずに強く生きていく女性たちを描いた本作には素直に感動させられた(新鮮な驚きもありながら)。

女性ばかりの主要キャラで、逞しく生きる姿を描くのは、「オール・アバウト~」に似た感じがあるけれど、こちらのほうがもっとシンプルで、パワフルさは「オール~」と変わらないけれど、ペネロペ・クルスを初めとした女性たちがはっきりしていて、よりストレートに伝わってきた。

「オール~」にも出演していて、その後ハリウッドスターになっちゃったペネロペ・クルスの久々のスペイン語の芝居だったけど、「オール~」のときはまだ線の細い印象があったのが、今回はメチャメチャ逞しい女性、悪く言えばオバちゃん役をずぶとく貫禄たっぷりに(でも母親とのシーンでは弱さも見せ)、そして美しく演じていて、これがメチャクチャよかった。この雰囲気はアメリカ映画ではなかなか出ないと思うし、スペイン映画、そしてアルモドバル映画の奥深さと強烈さを改めて感じました。

ストーリーはあんまり説明すると面白くなっちゃうんでしないけど、三代に渡る女性が、殺人、孤独、生活、死といった様々なものと深く関わり、戦い、助け合いながら生きていくというものを、アルモドバル風の極彩色なハデさの中に、ジンワリとした感動が随所に盛り込まれていて、よかったです。

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2007年6月30日 (土)

転校生 さよならあなた

日本映画

監督:大林宣彦

出演:蓮佛美沙子 森田直幸 厚木拓郎 寺島咲 清水美砂 古手川祐子 石田ひかり

大林宣彦監督の尾道三部作の記念すべき第1作で、甘酸っぱい青春映画(というか思春期の映画)の名作として今でも心に残る「転校生」を、いま、舞台を尾道から長野に移して、そして25年という時を経て大林監督自らの手によってリメイクされた。

元祖「転校生」では、「さよならワタシ」「さよならオレ」というセリフで元に戻った主人公が別れていくラストが印象的だったけど、こんどはサブタイトルが「さよなら あなた」であること、主人公は小林聡美とは全く違うタイプの美少女 蓮佛美沙子であることなんかから、見る前から前作とは違う印象があり、大林映画ファンとして期待と不安が入り混じりながら見に行ったんだけど…

これが今年の前半のベストワンといっていいぐらいの傑作で、ラストでは涙がとまらなかった。

大林映画はどれも傑作なんだけど、本作はその中でもとても印象に残る作品のひとつになりました。

中学3年の斉藤一夫は、両親の離婚によって尾道を離れ、母親といっしょに長野に引っ越してくる。一夫は小さい頃までは長野で暮らしていて、転入していった中学校で幼なじみの斉藤一美と再会する。なにかと小さい頃の話をしてベタベタとからんでくる一美に一夫はうっとうしさを感じつつも一緒に行動する。でもある事件をきっかけにふたりの心が入れ替わってしまい、それぞれ一夫は一美として、一美は一夫として生活を始めるんだけど…みたいなお話で、転校してくるのが前作では一美だったのと逆になったぐらいで、出だしから中盤まではほとんど一緒なんだけど、途中から全く違う展開をみせる。

ほぼ同じ展開ながらも、どの場面も懐かしさとともに新鮮さがいっぱいで、25年の時を経て熟成されて、最も大林映画らしい映画になっている。そして尾道という坂と海の町とは異なる山間の長野の街並も大林映画の背景として、活き活きと魅力的に映っていた。

出だしの傾いたカメラワークから始まり、独特の色合いと趣きのある映像、テンポ、そして古風な口調のセリフで独特の雰囲気をかもし出すキャラたち、見ていてあらゆる場面でツボにはまり、震えるぐらいに画面に引き込まれていった。

主演の2人、蓮佛美沙子と森田直幸は入れ替わった男子と女子を、小林聡美と尾美としのりとは雰囲気や趣きも違うけれど、これがまたいい感じになっていて、とても上手だった。蓮佛美沙子の整った顔で、斉藤一夫を体当たりで演じているギャップにメチャメチャ楽しませてくれる。斉藤一美役と途中までの元気な斉藤一夫役、そして後半の斉藤一夫役とラストの斉藤一美役といろんな顔をみせてくれ、特にラストの笑顔はとても印象的で、今後がメチャメチャ期待できる女優さんでした(でもこれを超える作品はなかなかないだろうけど)。森田直幸も大林映画の主人公という、繊細な少年を上手に演じていたし、一美役もなかなかでした。

主役たちを支える友人2人も大林映画の中でも異色の傑作である「理由」で大人たちに混じって重要な少年少女の役をやっていた今の大林映画の顔といってもいい厚木拓郎、寺島咲も爽やかだけどちょっとだけくせのある印象がいい味を出している。

そして大人たちもとてもあたたかく印象的な役をそれぞれ演じている。一夫の母親役の清水美砂もよかったけど、一美の両親の古手川祐子、田口トモロヲ、おじいちゃんの犬塚弘がとてもよく、特に古手川祐子は「理由」で出番は少ないものの悲劇的な役を印象的に演じていたけれど、今回はキチンといた普通の役でちゃんと大林映画の出演していることもなんとなくよかった。

そして、先生役の石田ひかりが役名こそ違うものの、「ふたり」の北山実加を彷彿とさせるセリフがあったりして、大林ファンを喜ばすというか、ビックリさせてくれる。

後半、「転校生」からはイメージできない「死」という問題が絡んでくるけれど、よるあるメロドラマ風映画になることもなく、むしろ生きることや少年の旅立ちという部分が引き立てられ、そしてラストの蓮佛の笑顔も非常に印象に残ってくる。

公開規模はあんまり大きくないみたいだけど、とにかくいろんな人に見てもらいたい、他にはないいい映画だと思います。

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2007年6月27日 (水)

ダイ・ハード4.0

米映画

監督:レン・ワイズマン

出演:ブルース・ウィリス ジャスティン・ロング ティモシー・オリファント メアリー・エリザベス・ウィンステッド

ブルース・ウィリス扮するジョン・マクレーン刑事が傷だらけでボロボロになっても、ボヤキながら、バリバリ武装した悪者たちをガンガンぶっ殺していく超有名なアクション映画シリーズがなぜか3から12年も経って作られた第4段。

でもやっぱり、ジョン・マクレーン刑事がかもし出す雰囲気は他の安モンのアクション映画と違って、やっぱり楽しみにして見に行きました。(予告編もナカナカ面白そうだったし)

マクレーン刑事は、3まではちゃんとあった毛もすっかり無くなって、奥さんとは離婚し、大きくなった娘を追っかけまわしては怒られるダメ親父ぶりに磨きがかかっているけど、また凄い事件に巻き込まれていく。今度の敵は完全武装もしている集団的なサイバーテロで、電気、通信、金融、交通といった全米のインフラをことごこく麻痺させていく。そいつらが利用して用済みになったハッカーたちを次々にぶっ殺している。たまたまマクレーン刑事がそのハッカーのひとりの護送を命じられ、迎えにいったところで、彼を殺しにきたテロリストたちに出くわしてしまい、なんだか分かんないうちに銃撃戦(ド派手な)になり、次から次へと襲われまくり、その弱々しいハッカーと協力しながら、その首謀者と対決していく…みたいなお話。

ジョン・マクティアナン(1と3)、レニー・ハーリン(2)といった凄い監督に続いて4の監督をしているのは、ちょっとマニアックだけどヒットしたバンパイア映画「アンダーワールド」シリーズのレン・ワイズマンで、出だしはなんとなく暗い雰囲気だったけど、銃撃戦が始まってからはキチンと「ダイ・ハード」になっていて、クライマックスまでガンガン派手なアクションが続いていき、ほとんど飽きずに見ることができた。

ジョン・マクレーンの相棒となるハッカーを演じるジャスティン・ロングという若手俳優が演じていて、傑作SFコメディの「ギャラクシー・クエスト」のオタク少年や、ホラーの「ジーパーズ・クリーパーズ」で怪物に目ん玉くりぬかれちゃう高校生役が印象的だったけど、ここでもビックリしたり怯えたりする演技はアクションを引き立ててくれてなかなかよかったし、ハッカーたちの伝説的な存在として登場するのは「チェイシング・エイミー」や「ドグマ」の監督ケヴィン・スミスで、名物キャラ サイレント・ボブを連想させるオタクキャラ(ここではよくしゃべるけど)で笑わせてくれる。あと、「ボビー」のウェイトレス役が印象的だったメアリー・エリザベス・ウィンステッドがマクレーンの娘(1では家で留守番をしていた)役で出ていて、3では無くなっていた「家族を守るために戦う」みたいな要素も復活してよかった。(ウィンステッドもかわいかったし)

問題となる悪役はさすがに物足りなさを感じざるを得なかったけれど、テンポのいい話はこび(ちょっと単純すぎたけど)で、そんなに気にはならなかった。まあ、1のアラン・リックマン、3のジェレミー・アイアンズに比べたらかわいそうといえばかわいそうなんだけど…

最初の「ダイ・ハード」は、主役意外のキャラの描き方や、ストーリーや伏線やクライマックの描き方に加え、ちょっとホロッとさせるところもあったりして、完璧というか、初めて見た時は衝撃的でもあっただけに、続く2、3は苦労して作ってるなあ~という印象が強かったけれど、この4もそれらと同じぐらい工夫しているのがよく分かる。

閉鎖的で限られた状況で戦うしかなかった1や2、犯人から名指しで利用された3と違って、今回マクレーンたちだけで何でも解決しちゃう(そういう映画なんだけど)ってのにはちょっと無理を感じちゃうというか、ほとんどマンガだし、敵の動きがアクロバティックすぎて、なんかリアルさを感じられなかったりと、つっこみたいというか物足りなさは若干感じつつも、全体的には(というかブルース・ウィリスの顔を見てるだけで)ダイ・ハードっぽくなってるんで、懐かしさもあり、面白かったです。(なんかまとまんなくなっちゃったけど)

ラストもダイ・ハードっぽい終わり方でなかなかよかったし…

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2007年6月23日 (土)

あしたの私のつくり方

日本映画

監督:市川準

出演:成海璃子 前田敦子 高岡蒼甫 石原真理子 石原良純 田口トモロヲ

静かな語り口で、心にス~っと染み込んでくる作品を多く作ってきた名匠 市川準監督の最新作は美少女アイドル(?)成海璃子を主演にむかえた久々のティーン映画なんだけど、市川監督の自然でなめらかな映像と成海璃子の驚くべき演技と目ヂカラで、目を離すところがひとつもない、完成度が高く、でも重くない、いい映画でした。

主人公の少女・寿梨は不仲な両親をとりもつため、クラスで浮かないように、いい子や普通の子を演じて、本当の自分が分からなく、心は疲れきっていた。小学校の卒業式の日にあまり近づかないでいたいじめられっ子・日南子と言葉を交わし、すこしだけ救われる。

そして、月日がたって高校生になったときに、音信が途絶えていた日南子が山梨に引っ越したことを知り、知り合いから彼女のメアドを聞き出して、匿名でメールを送る。そのメールにはげまされ、日南子はそれまでのいじめられっ子としての生活から抜け出し、明るく生まれ変わるんだけど…

自分を偽って悩んでいた女の子2人が自分を見つけていく姿は、モロ少女マンガなんだけど、市川準監督の静かだけど、しっかりした演出で大人でも惹きこまれ、楽しめるし、感動すらさせられる。メールをつかったちょっと実験的というか、面白い映像も効果的な演出になっている。

驚くべきは、成海璃子はじめ主要なキャストは小学生から高校生までを演じるんだけど、これがどっちも自然にみえるところがスゴかった。

成海璃子のラストの涙には素直に感動したし、石原真理子ほか周りのキャストが完全にかすんでしまうほど、あの若さでスゴイ女優でした。これからいろいろ出演作が続くだろうけど、これは代表作のひとつになるだろうなと。

ちょっと疲れたときに見たら、癒されるというか、なんか素直になれそうないい映画でした。

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プレステージ

米映画

監督:クリストファー・ノーラン

出演:ヒュー・ジャックマン クリスチャン・ベイル マイケル・ケイン スカーレット・ヨハンソン デビッド・ボウイ

「メメント」「インソムニア」、そして「バットマン・ビギンズ」ですらトリッキーなストーリーで独特の(でも暗い)作品を撮ってきたクリストファー・ノーラン監督がマジシャン2人の壮絶な戦いをトリックに次ぐトリックで描く最新作。

キャストも「X-MEN」のヒュー・ジャックマンと「バットマン・ビギンズ」のクリスチャン・ベイルといった影のあるヒーロー(悪くいうとあんまり華がない)たちを使うところもクリストファー・ノーランらしく、大作ながらもマニアックな映画になっている。

ストーリーはなかなか説明しにくいんだけど、とにかく凄いマジシャン2人が腕の限りをつくし、とにかく自分の人生を捨ててでもトリックを仕掛けて、だまし合いの死闘を続けていくといったもの。

ぶっちゃけマジックそのものについては、たいしたことなさそ~に見えちゃうんだけど、それにかけるマジシャン2人の気迫がたいしたもんだし、それを支える名優マイケル・ケインが渋みと深みでメチャメチャいい味を出している。(「バットマン・ビギンズ」の執事のときよりずっといい) そして怪しい科学者役であのデビッド・ボウイが出てるだけでも、見る価値大。(すんごく抑えたオッさんの役だけど)

ただ、宣伝で「映画そのものがトリックだ」とか、映画が始まる前に「結末は誰にも話すな」とか、ドンデン返しを匂わすものが多すぎ、なんか映画に集中できなかったというか、ドンデン返しは先入観がないから面白いんであって、それを売りにするのはあんまり… おかげであんまり驚けなかったし、ラストのあの行動はどうかと思うんだけど(マジシャンなんだから、最後までマジシャンらしくしてくれれば…)。

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2007年6月17日 (日)

ゾディアック

米映画

監督:デビッド・フィンチャー

出演:ジェイク・ギレンホール ロバート・ダウニーJr. マーク・ラファロ アンソニー・エドワーズ クロエ・セヴィニー

「セブン」のデビッド・フィンチャー監督による、実際の猟奇殺人事件とその捜査に関わる人たちを描いた、ノンフィクション・サスペンス映画。連続殺人とそれを負う刑事たちという内容は「セブン」と被るような印象もあったけど、「セブン」は天才的で超人的な犯人による想像を絶する事件をブラピとモーガン・フリーマンというヒーロー的刑事が追うという現実離れしたサスペンスだったけど、こっちは実際の事件を忠実に再現し、それを負う人々をじっくり時間をかけて追いかけていくといった相当毛色の違った映画になっていて、はっきり言って、これまでは「ファイト・クラブ」がNo.1だったけど、はっきりいってこれがフィンチャー映画の最高傑作といっていいほどよかった。

ストーリーは、1969年のサンフランシスコ近くでデート中のカップルが車内で射殺されるという事件が起こる。その後も似たような事件が起きた後、犯人から新聞社に犯行声明と暗号文が送られてくる。自らを「ゾディアック」と名乗り、警察や社会を挑発し、次の犯行をほのめかすその内容に世間は恐怖し、混乱するものの、用意周到な犯人によって、事件は解決せずに10年以上の年月が過ぎていく。その事件を解決しようと奔走する2人の刑事と、新聞記者、そして最初は好奇心みたいなものから首を突っ込むも、事件やゾディアックに惹き込まれ、ハマっていくイラストレーター(この映画の原作者)の姿が丁寧に描かれていく…みたいな感じ。

当時の音楽に合わせて、あの時代に生きる人々をリアルに描いているのは、サスペンスでありながらも、スコセッシの「グッド・フェローズ」のような雰囲気を持った重厚な仕上がりになっていて、事件はぜんぜん解決せずにそれぞれがとドロ沼にはまったように事件に魅入られて、人生を狂わせていく様子が2時間半を超える長い時間でジックリ描かれているけれど、フィンチャーの手腕によって画面にググっと引きこまれ、一緒に捜査に加わっているような感覚にもさせられ、全く長いとは感じずに見続けることが出来た。

出てる役者も、主役の3人、イラストレーター役のジェイク・ギレンホール、記者役のロバート・ダウニーJr.、刑事役のマーク・ラファロそれぞれが凄い集中力と演技力で映画をグイグイ引っ張っていく。フィンチャーはこの3人と顔を見せないゾディアックとを絶妙なバランスでスポットを当てて、映画を最後まで緊張感をキープさせていく。

主要3人の他のキャストも派手さはないものの、それぞれがしっかりと映画の一部を構成している。マーク・ラファロの相棒役のアンソニー・エドワーズは「ER」のDr.グリーンのときと違って、髪があって初めは誰か分かんなかったけど、いい味だしていたし、エリアス・コーディアスは「ザ・シューター」の変態役と違って落ち着いた役を落ち着いて演じていてよかった。その他、容疑者役のジョン・キャロル・リンチ(「ファーゴ」のフランシス・マクドーマントのダンナ役)も地味だったけどよかったし、ブライアン・コックス(「アダフテーション」他)、フィリップ・ベイカー・ホール(「マグノリア」他)みたいな激渋のベテラン俳優も随所でいい味だしていて、こけだけのキャストがしっかりと映画を構成していながら、サスペンスとして事件の情報を途切れさせずに伝えてくるだけでも、「セブン」とは格段の差になっている。

でも一番よかったのは、ギレンホールの奥さん役のクロエ・セヴィニーで、彼女が見られただけでもうモトとっちゃった感じでした。

あと、ゾディアックの犠牲者役で「ブロークン・フラワーズ」の花屋の店員役だったペル・ジェームズを見つけたときもメチャクチャ得した気分に…

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アポカリプト

米映画

監督:メル・ギブソン

出演:ルディ・ヤングブラッド ダリア・フェルナンデス ジョナサン・ブリューワー

「パッション」でキリストの死に迫り、そのショッキングな内容で観客に死者まで出しながらも大ヒットした後、今度はマヤ文明での部族間の争いを描いている。「パッション」もラテン語かなんか、当時の現地語で繰り広げられていたのと同じで、今回もマヤの人たちの言語だけで、英語いっさいなしで描かれる。

とは言え、「パッション」とかその前の「ブレイブ・ハート」とかと違って、内容はアクション中心のエンターテイメント作で、単純にドキドキハラハラしつつ、当時の人たちの生活様式やらファッション(ていうかほとんど着てないんで、タトゥーとか?)とかも楽しめる。

お話は森で狩りをしながら平和に暮らす部族がマヤ帝国の兵士に襲われ、ほとんど全滅、生き残りは奴隷や生贄にされるために連れ去られる。部族の長の息子“ジャガーの足”もマヤ帝国の首都みたいなところに連れてこられるんだけど、村に残した妻子を助けるために、脱出し、追っ手を次々に倒しながら逃亡劇を繰り広げる。

最初はマヤ文明がなんで滅びたのか?みたいな難しい話かと思っていたら、主役は森に住む素朴な人たちで、マヤ帝国の都市が出てくるのはちょっとだけで、あとほとんどは殺戮と逃亡シーンだけで、男が体ひとつで軍団に立ち向かう(というか逃げまくる)映画。でもこれが見せ場たっぷりでぜんぜん飽きずに見られる、娯楽作としてけっこう質の高い映画でした。

出てる人たちもほとんど無名の人たちで、耳なんかにでっかい穴空けちゃったりしちゃって、ほとんど役者には見えないんで、その辺からも緊迫感や臨場感が出ていて、けっこう素直に楽しめて、なかなか良かったです。

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300

米映画

監督:ザック・スナイダー

出演:ジェラルド・バトラー レナ・ヘディー ドミニク・ウェスト

紀元前のギリシャの都市国家のひとつスパルタが大群で進出してきたペルシア軍をたった300人の兵士だけで食い止めた史実を、「シン・シティ」の原作者でもあるフランク・ミューラーがコミックにしたものをCGたっぷりのダイナミックな映像で映画化したスペクタクル作品。

当時ギリシャ諸国にペルシアが攻め入ってきた「ペルシア戦役」の中でも最も有名なテルモピュレーの戦いをスパルタ王レオニダスを中心に描いているんだけど、コミックの世界観をそのまま映像化しようとしているんで、映像そのものは独創的ですごい迫力で、セリフ回しなんかもよけいなことはほとんど廃し、シンプルな戦士たちの物語になっているんだけど、もうちょい時代背景やら、当時のギリシャ諸国の状況とか、その戦いの前後のことだとかも説明してほしかったのと、とにかく出てくる人たちというか、主人公のレオニダスがテンション高すぎでちょっと引いちゃうのと、300人で何万人も相手にするんだから、もっといろいろ作戦があっていいと思うんだけど、とにかく根性だけでひたすら戦いまくるという、悪くいうと単調な戦いばっかりなんで、ぶっちゃけ途中で飽きちゃって…

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あるスキャンダルの覚え書き

米映画

監督:リチャード・エアー

出演:ジュディ・デンチ ケイト・ブランシェット ビル・ナイ

ジュディ・デンチとケイト・ブランシェットというどちらもアカデミー賞(助演女優賞)もいっている名女優が競演する話題作で、この映画でもジュディ・デンチが主演、ケイト・ブランシェットが助演女優賞にノミネートされている。

ロンドンの中学校にケイト・ブランシェット演じるシーバという美術教師が配属してきて、その学校に長くいるジュディ・デンチ演じるバーバラという教師は彼女の美しさに魅了され、2人は仕事を通じて仲良くなっていく。そうこうしているうちにシーバが15歳の男子生徒と肉体関係を持っていることをバーバラが知ってしまい、家庭や職を失いたくないシーバは秘密を胸にしまってくれたバーバラをますます頼るようになるんだけど、退職間近になるまで、独身で孤独な生活を送ってきて、レズッ気と執着心の強いバーバラはシーバをどんどん支配して、自分だけのものにしようとしていく…みたいなお話。

大女優ジョディ・デンチは孤独で不気味で哀れな女性を抑えた迫力で絶妙に演じきれば、ケイト・ブランシェットも美しく奔放な人妻をいろんな顔をみせつつ演じてくれて、名女優2人が火花を散らすというよりは、それぞれの役割をきつちりこなし、うまい具合に効果がでている。ケイト・ブランシェットの年の離れたダンナ役のビル・ナイもデイビー・ジョーンズのときと違ってちゃんと顔を出して渋い雰囲気を出している。

と、女優2人の演技にはかなり満腹になれ、映画全体も緊迫感をいい感じで保っていてかなり質は高いと思うんだけど、はっきりいって、ストーリーがちょっとショボいというか、そりゃ15歳の男の子に手を出しちゃダメだけど、あんなに大騒ぎになっちゃう話なのかなあと漠然と思っているうちに終わっちゃったって感じで、もうちょい盛り上がりが欲しかったかなあというのが、正直な感想でした。

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2007年6月16日 (土)

ザ・シューター 極大射程

米映画

監督:アントワン・フークワ

出演:マーク・ウォルバーグ マイケル・ペーニャ ダニー・グローバー エリアス・コーディアス

日本で「このミステリーが凄い」の第1位にもなったスティーブン・ハンターのベストセラー小説「極大射程」の映画化。

アメリカ海兵隊のスゴ腕狙撃手ボブ・リー・スワガーはエチオピアでの任務中に敵の強襲を受けるも、極秘任務中につき味方に見捨てられ、相棒が殺されてしまう。その事件後退役して山奥でひっそり暮らしているところに政府の人間がやってきて、大統領暗殺を防いで欲しいと頼まれる。フィラデルフィアの町で狙撃しやすい場所を探し当てて、協力していたが、暗殺事件は起こり、同時にスワガーも襲われて、そのまま暗殺事件の犯人にしたてあげられてしまう。重傷を負いながら命からがら逃げ延びたスワガーはその凄い能力を活かしつつ、事件の真相を暴き、黒幕に復習をはじめる…みたいなお話。

評判のミステリー小説(読んでないけど)の映画化で、監督は「トレーニング・デイ」(デンゼル・ワシントンがアカデミー主演男優賞獲った作品)なんかのアントワン・フークワだし、主演は「ディパーテッド」でアカデミー助演男優賞にノミネートされて最近シブさも出てきた(ちょっと地味になってきた印象もあるけど)マーク・ウォルバーグだし、予告編を見ているとダニー・グローバーは珍しく悪役っぽいしで、けっこう期待して見に行ったんだけど…

マーク・ウォルバーグは超スゴ腕のスナイパーを、スゴいんだけどマンガっぽくならずに地味目にシブく演じていて、なかなかよかったし、最初スワガーに襲われ後に協力者になるFBIの新米捜査官役のマイケル・ペーニャは「クラッシュ」(娘想いのカギ職人)や「ワールド・トレード・センター」(ニコラス・ケイジといっしょに生き埋めになる消防士)のときのボウズ頭とは違って、ちょっと髪が伸びていて最初誰か分かんなかったけど、前2作でも出ていた優しそうなとこや、誠実そうなとこがここでも出ていて、死人がバンバンでる緊迫した内容を和らげつつ、重要な役割を果たし、いい味出していた。

で、戦闘シーンとか狙撃のウンチクやらはさすがに面白くみせてくれるんだけど…はっきりいってストーリーも内容もゼンゼンだった。主人公が陰謀に巻き込まれるところまではなかなか引き込まれてみてたんだけど、解決編となるはずの後半が中身がたいというか、超単調で単純な復讐劇になってしまう。前半意味ありげな黒幕たちも後半は典型的なイヤ味な悪者になっちゃうし、主人公の行動も何をしたいんだか分かんないうちに結局悪者を殺すだけになっちゃうし、悪者も悪者でなんで最後に狙ってくれっていう感じで全員が同じ場所に集まって酒なんか飲んでるんだ?って感じだし、せっかく主人公をリアルに描いているのに展開がシュワルツェネッガーの「イレイサー」とかスティーブン・セガール映画みたいなB級になっちゃってて、なんか真面目に見ていて損した気分にもさせられちゃいました。

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ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

米映画

監督:ラリー・チャールズ

出演:サシャ・バロン・コーエン ケン・デヴィティアン

カザフスタンのテレビレポーター ボラット・サカディエフがカザフスタン国営テレビのドキュメンタリー番組制作のためアメリカにやってきて、アメリカの様々な文化をレポートしている様子をあたかもカザフスタンのドキュメンタリー番組を見させられているようにみせる偽ドキュメンタリーのコメディ映画で、メチャメチャ低予算な作り方にも拘らず、アメリカでメチャメチャヒットした作品。日本ではアメリカのコメディはあんまりヒットしないんで心配していたけど、小規模ながらもなんとか公開されたもの。

この内容はというと、とにかく猛毒のブラックコメディで、アメリカにやってくる前にまずボラットのキャラクターを説明するためにカザフスタンのボラットの住む村の様子から描かれるんだけど、これがまずカフスタンの人が見たら激怒するか大笑いするかぐらいのメチャクチャデタラメな描き方(ホントのカザフスタンを知ってる訳じゃないけど)で、その後アメリカ各地でメチャクチャなことをするボラットの行動はカザフスタン(架空の)では普通なんだよと印象づけている。

で、アメリカに着いてからがメチャメチャで、ニューヨークのオフィス街で野○ソをするは、女性蔑視、障害者差別、ユダヤ人差別(というより悪魔として敵視)、イラク戦争支持などなど、一般的なアメリカ人だったら激怒してしまいそうな内容をザクザク掘り下げ、グサグサ刺してくる。と思えば毛むくじゃらの男ふたりが全裸で乱闘したりと下ネタも盛りだくさんの下品な展開ももあり、一見メチャメチャくだらなくて、見ててイヤ気がさすような極端な内容なんだけど、ボラットを変人扱いし、敵視し、時には友好的な姿も見せるアメリカ人たちもメチャメチャおバカに見え、ボラットのバカさ加減とアメリカ人のリアクションとで思わず笑ってしまう。

実はユダヤ系のイギリス人らしい主演のサシャ・バロン・コーエンは脚本も書いているそうで、死ぬほど不快なギャグを放ちつつも、憎めない笑顔と瞳をみせ最後まで高テンションで映画を引っ張っている。

下品でくだらなく強烈で不快がギャグが連発されるんだけど、そのどれもが今のアメリカ(もしくは西側の先進国)が抱える問題や矛盾をググっと浮かび上がらせたりして、くだらないけど、けっこう笑えて、ちょっと考えさせられる(ほんのちょっとだけ)作品でした。

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2007年6月 9日 (土)

リーピング

米映画

監督:スティーブン・ホプキンス

出演:ヒラリー・スワンク スティーブン・レイ デビッド・モリッシー

「ミリオン・ダラー・ベイビー」で2度目のアカデミー主演女優賞を獲ったヒラリー・スワンクだけど、ああいうギリギリの役では凄くいい感じになるんだけど、普通っぽい役をやるとなんとなく華がないというか、印象が薄くなってしまう。前回アカデミー賞を獲った「ボーイズ・ドント・クライ」の後に出たSF大作「ザ・コア」も大コケだったし(自分は結構面白いと思ってたんだけど)…

で、今回も「ミリオン~」とはガラリとジャンルも雰囲気も違うオカルトものに出演。ロバート・ゼメキスとジョエル・シルバーがホラーものを作るために作ったダーク・キャッスル・エンターテイメント製の映画で、テレビではイナゴ少女ばっかりクローズアップしている、かなりキワもの映画かなあと思っていたら、意外に静かに淡々とストーリーが進んでいく。

奇怪な殺人事件と怪奇現象の調査を依頼されたヒラリー・スワンク演じる大学教授がアメリカ南部の小さな町にやってくるけど、訳の分からないまま不思議な事件が続いていく。そして町の人たちから嫌われ怪しまれている少女を追いかけ、調査していくうちに、悪魔崇拝のとんでもない災いへといきついていく…みたいなお話。

ホラー映画としても微妙に地味だし、サスペンスでもないし、ちょっとダレながら話が進んでいき、CMで出てくるイナゴの大量発生のシーンあたりからガゼン盛り上がってくるんだけど、クライマックスで「なるほどぉ」という展開から「えぇ~?」みたいなところに落とされ、やりすぎというか、脱力感が残る映画でした。

まあ、ただの「イナゴ」映画じゃなかったことは確かだけど。

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こわれゆく世界の中で

英映画

監督:アンソニー・ミンゲラ

出演:ジュード・ロウ ジュリエット・ビノシュ ロビン・ライト・ペン

「イングリッシュ・ペイシェント」「リプリー」「コールド・マウンテン」と重厚な歴史ものがつづいていた名匠アンソニー・ミンゲラの新作で、めずらしく現代を舞台にした小規模だけど、人の心情の深いところを描いた人間ドラマ。

「コールド・マウンテン」でも主役をやっていたジュード・ロウが、「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー助演女優賞を獲ったフランスの名女優ジュリエット・ビノシュ、そしてショーン・ペンの奥さんのロビン・ライト・ペンといった渋~いメンバーが、なにか物足りなさの中で分かり合えずに思い悩みつつもふれあいを模索していく人たちの日常を淡々と演じている。

ジュード・ロウはロンドンのキングス地区という治安の悪い地区の再開発を手がける建築家役で、ロビン・ライト・ペンとは結婚はしていないものの、10年ぐらいその娘ともいっしょに暮らしているんだけど、倦怠期というか、心がすれ違い修復できないでいる。そんな中、彼の事務所が何度も窃盗団の被害にあい、パソコンやら電化製品をガンガン盗まれるといった事件が起こる。ある日ジュード・ロウがその窃盗団の一味の少年を追いかけ、その家を突き止める。少年はボスニアからの移民で、ジュリエット・ビノシュ演じる母親と2人暮らしだった。最初は犯行の証拠をつかめためなのか、好奇心でこの母親に近づくんだけど、次第に惹かれるようになり、関係を持つようになるんだけど…みたいなお話。

静かな中で感情を隠したりぶつけ合ったりする3人の男女をそれぞれがシブくて印象深く演じていて見ごたえは十分なんだけど、ブッチャケ、なんか話が盛り上がらないっていうか、ストーリーがあってないような(あるんだけど)感じのうちになんとなく終わってしまったっていう感じがしてしまって、ちょっとものたりなかったかなあと。

そんな中で、「ディパーテッド」でマット・デイモンの恋人の精神科医という重要な役ながら、影の薄かったビーラ・ファミーガという女優さんが、チョイ役ながらも街の売春婦役で印象的だったのが、なんとなく得した気分でした。(途中で「デイパーテッド」のあの人だあなんて気付いたりして)

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パッチギ! LOVE&PEACE

日本映画

監督:井筒和幸

出演:井坂俊哉 中村ゆり 藤井隆 西島秀俊 風間杜夫 手塚理美

井筒監督の傑作「パッチギ!」の続編。

前作では1968年の京都を舞台に日本人高校生と朝鮮学校の女学生の恋に、その兄貴のケンカ三昧を絡みあわせた愛と青春の熱いドラマに、在日朝鮮人のコミュニティーの様子を丁寧に描いたいい映画だった。

今回はその5年後の話で、塩谷瞬が演じていた前回の主役の高校生は登場せず、兄貴アンソンと妹キョンジャを中心に彼らの家族の話が展開していく。前作でキョンジャを演じてブレイクした沢尻エリカも出演せず、キャストもほとんど一新し、舞台も東京に写して新たな物語として描かれている。

前作のラストに生まれたアンソンの息子が難病を患ってしまったために、アンソン一家は医者を求めて引越しを繰り返し、いまは東京の江東区の朝鮮人街で暮らしている。そこにアンソンたちのケンカに巻き込まれて国鉄をクビになった岩手出身の佐藤くん(藤井隆)が転がりこんでくる。

アンソンは息子をアメリカで治療させるために危ない橋を渡って金を稼ごうとし、妹キョンジャはスカウトされて、在日であることを隠しながらタレントとして活躍していくようになる。

そんな2人の苦悩のドラマに兄妹の父親が若いころ、戦火の中、日本軍から逃れ生き延びていく姿がインサートされていく。

みんなが肩を寄せ合って強く活き活きと生きる姿が描かれているのは、前作と一緒で、話も変化にとんでいて面白い。沢尻エリカに代わってキョンジャを演じる中村ゆりも爽やかというか、いい意味で普通っぽいところがなかなか良かった。

ただでてくる日本人がヤなヤツばっかりで、ちょっと疲れてしまう。在日を蔑視する心のいやしい日本人たちを描いて、見に来た人たちの目を覚まさせようというのは分かるんだけど、日本人たちがあまりにも典型的すぎて…  劇中で描かれる好戦映画もあまりにもベタベタで、その映画に意を決して意義を唱えるキョンジャの姿もちょっと微妙に見えてしまった。(あそこであんなこというなら、なんで途中で…なんて思っちゃうし)

あと、ケンカのシーンに必然性が感じられなかったり、主役2人が一番感極まってるシーンではもっと涙を流してほしかったり(凄いガンバってるけど)と、若干微妙なところどころありつつも、藤井隆がけっこうよくて、物語全体を軽く盛り上げてくれてて、なかなかよかったです。

ただ、子供が最後に…

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2007年5月26日 (土)

主人公は僕だった

米映画

監督:マーク・フォスター

出演:ウィル・フェレル エマ・トンプソン ダスティン・ホフマン マギー・ギレンホール クイーン・ラティファ

超シリアスな人間ドラマ「チョコレート」、ファンタジックな感動作「ネバーランド」、不条理なサスペンス「ステイ」といったどちらかといったら硬派な印象のあったマーク・フォスター監督が、いまかなり乗っているコメディ俳優ウィル・フェレル主演のコメディ映画を撮ったっていうだけで、必見なんだけど、これがただのコメディ映画じゃないというか、ほとんどコメディ映画じゃなかった。

ウィル・フェレル演じる国税局の職員ハロルドはある日突然、自分の行動、考えを文章で同時に表現する女性の声に付きまとわれることになる。そしてその声はハロルドが近々死ぬ運命にあることを告げる。その運命を変えるべく、声の謎を暴き、運命を変えようとハロルドは奔走する。

一方、一人の女性作家(エマ・トンプソン)はひとりの男が主人公の小説を書いていた。彼女は主人公を必ずと言っていいほどラストで殺してしまう作家として有名で、今回も主人公を殺す方法が思い浮かばず、スランプに陥っていた。

その小説の主人公がハロルドであり、同じ現実世界に暮らしながらも、作家の書く小説の通りハロルドは行動し、死への運命を着実に歩んでいくことになる…しかし生きたいと願うハロルドだけど…みたいなお話。

訳の分からないまま、死を宣告されるクソまじめな国税局員ハロルドを演じるウィル・フェレルの演技がメチャメチャいい。「オースティン・パワーズ」の悪の一員ムスタファとか、「ズーランダー」の悪徳デザイナーとかエキセントリックで濃い役で強烈な印象とコメディセンスを発揮していた彼も今回はそのクセを極力殺しつつも、随所にジワジワ染み出る可笑しさで哀しくも見たらおもわず笑ってしまう主人公をいい味で演じている。生きようともがく彼の姿は可笑しいんだけど、それが余計に哀しみも誘い、そのバランスが絶品。

ウィル・フェレルの作る雰囲気でコメデイとして成立しているものの、マーク・フォスターの演出はかなりシリアス寄りで、そのシリアス部分を引き立たせるのがアカデミー女優エマ・トンプソンの演技で、なりふりかまわない天才肌の作家をかなりリアルに演じ、作品をキリッと引き締めつつ、リアルでググッと引き込ませてくれる。

そして名優ダスティン・ホフマンがハロルドの相談相手となる文学の教授を飄々とそしてかっこよく演じ、最近ではかなり印象深い役を演じている。(すっかり助演が多くなっちゃったけど…)

そしてハロルドが恋に落ちるパン屋の女性役のマギー・ギレンホールもこれまでの中でもかなり好印象な女性を爽やかに演じている。

雰囲気は前作「ステイ」に似てなくもないんだけど、不条理なコメディという形をとりながら、生きることや日常のなにげないことに喜びが感じられる、なかなか素直に感動できるいい映画でした。

ウィル・フェレルの日本での知名度とか考えると、あんまりヒットはしないと思うけど、期待せずに見に行くとけっこう得した気分になれる映画だと思います。(この邦題はちょっと微妙だと思うけど…)

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2007年5月25日 (金)

パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド

米映画

監督:ゴア・ヴァービンスキー

出演:ジョニー・デップ オーランド・ブルーム キーラ・ナイトレイ ジェフリー・ラッシュ チョウ・ユンファ

二枚目だけどマニアック、カルトな映画でこそ魅力を発揮してきたジョニー・デップが最もイメージが合わないディズニーの超大作に主演し、奇跡的にもその魅力をはじけさせ大ヒットに至った「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの第3弾にして完結編。

前作でエリザベスに裏切られ、タコの化け物に飲み込まれたジャック・スパロウを助けるべく、復活したバルボッサとともに旅に出るウィルやエリザベスたち…

前作「デッドマンズ・チェスト」がこれまた3部作の2作目としてはかなりの出来で、完結編に向けてメチャメチャ盛り上げる終わり方を見せ、チラチラ飛び込んでくるチョウ・ユンファやローリング・ストーンズのキース・リチャーズ出演のニュースなんかを見せられ、期待感は相当盛り上がっていたんだけど…

多分見る人によってとらえ方はだいぶ違うと思うけれど、正直な感想を言えば、なんか無理やり終わらせたというか、いろいろと「なんで?」みたいな展開が多くて、なるべくしてたどり着いた完結編という気はしなかった。

それでも、ジョニー・デップのジャック・スパロウをスクリーンで見ていられるだけで楽しいし、デップの表現力の多彩さに引き込まれるし(今回はジャックがたくさん見られるし)、アカデミー賞俳優ジェフリー・ラッシュ扮するバルボッサも不真面目なジャックに代わって物語をアクの強さで引っ張っていくし、他の海賊役の役者も見慣れてきて見てて楽しめるようになったし等で、シーンシーンでは楽しむことが出来る。

で、ストーンズのキース・リチャーズもメチャメチャいい雰囲気でいい役演じてるし…

それに反して、オーランド・ブルームとキーラ・ナイトレイに関しては、今回の展開のせいもあるけれど、はっきしいって微妙…

野山を駆け巡り、タコの化け物に襲われたり、ジャッキー映画ばりのアクションも出て、驚くほどバラエティーに富んでいた「デッドマン~」に比べて、ほとんどが船上、海上での戦い(それも乱戦)ばかりで、全体の展開も単調さは否めない。

と、なんか否定的なことばっかり言ってしまっているけれど、面白いか面白くないかといえば、やっぱり単純に面白い。映像やアクションも凄いし、なんといってもジャック・スパロウ役のジョニー・デップを見ていられるだけでかなり贅沢なことだと思うし。

過大な期待感がなくなった今、もう一度みたら、多分もっと楽しめるじゃないかなと思います。素直にみたらもしかしたらものすごい傑作かもしれないし…

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2007年5月19日 (土)

スパイダーマン3

米映画

監督:サム・ライミ

出演:トビー・マグワイア キルスティン・ダンスト ジェームズ・フランコ トーマス・ヘイデン・チャーチ ブライス・ダラス・ハワード

面白い!想像をはるかに超えて面白かった!

「1」も「2」もかなり面白かったけど、ヒーロー物としてかなりシンプルな作りで言ってみれば単調な内容だったけど、今回は複数のキャラや悪者が絡み、ふつうなら3つぐらい映画が作れそうなストーリーが上手く重なりあっていて、300億円使ったっていう、お金の使い方も上手く、個性派のサム・ライミ監督がここ何年もスパイダーマンに集中してきただけあって、練りに練られていて、涙と笑いもある娯楽作品としては相当贅沢な映画でした。

CGを使ったハデな映像がバンバン出てくる陰で、ピーターをはじめとした気さくなキャラたちが身近なことに悩み成長していく、他の安っぽいヒーロー物にはないドラマもあるとこがいいです。

「2」でハリーやMJに正体をバラしたスパイダーマン=ピーターは、MJとラブラブな関係を保ちながら、ハリーからの誤解に悩んでいた。そしてとうとうグリーン・ゴブリンとなったハリーと対決することになる。

そうこうしているうちに、ピーターのおじさんを殺した真犯人マルコが脱獄し、変な研究所に迷い込み、体が砂のように細かくバラバラになる「サンドマン」になってしまう。このサンドマンの存在を知り、復讐心に燃えつつも「1」で殺した相手が犯人じゃなかったと知り、ピーターは罪の意識に苛まれる。そんな中、宇宙からの謎の寄生生物にとりつかれ、邪悪なパワーが増した「ブラックスパイダーマン」に変わってしまう。

そして、ブラックスパイダーマン、サンドマン、グリーンゴブリンが入り乱れたクライマックスに雪崩れ込んでいくっていう濃い~内容。

トビー・マグワイア、キルスティン・ダンスト、ジェームズ・フランコといった主要メンバーもこなれてきてなかなかよかったけれど、サンドマン役のトーマス・ヘイデン・チャーチがメチャメチャよかった。「サイドウェイ」のだらしないプレイボーイ役とは雰囲気も全然違うけど、病気の娘のために犯罪に走る悩める悪者でいい味出している。

そして「ヴィレッジ」「レディ・イン・ザ・ウォーター」といったシャマラン作品やラーズ・フォン・トリアーの「マンダレイ」みたいな超個性的な作品で主役を張っていたブライス・ダラス・ハワードがチャラチャラしたお嬢さんキャラで出ているのにはビックリしたのとともに凄い得した気分でした。(普通の女性役って初めて見たし)

あと、ピーターのおばさんや編集長みたいな脇キャラも個性がしっかり出ていてるのがこのシリーズのいいところで、「1」で死んじゃったウィレム・デフォーとかピーターのおじさんとかが回想シーンとかでキチンと同じ役者が出てきて、3部作がキッチリつながって見える丁寧さもいい。

メチャメチャお金のかかったド派手な「3」だけど、テーマとして根底に流れているのは「許し」であり、いまのアメリカの状況を憂いた一本筋の通った映画でもありました。

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2007年4月30日 (月)

ツォツィ

英・南アフリカ合作

監督:ギャヴィン・フッド

出演:プレスリー・チェエニヤハエ テリー・ペート ケネス・ンコースィ モツスィ・マッハーノ

2006年にアカテミー賞外国語映画賞を受賞した、南アフリカのスラム街に生きる若者を生々しく描いた人間ドラマ。

南アフリカ共和国というと、アパルトヘイトとネルソン・マンデラぐらいしか知らず、言語も英語だとばかり思っていたけれど、英語とは異なる現地の言葉で生活している。この映画も外国語映画賞をとったぐらいなので、登場人物たち(白人の刑事まで)はその現地語を話しているんだけど、南アフリカの現在の状況(の一部)を教えられるとともに、現地語で語られるドラマには真実に迫るものがあり、英語で描かれる欧米製のアフリカの映画とも異なり、リアルさをかきたて、心にグッと迫ってくる。

アパルトヘイトは廃止されたとはいえ、貧しい黒人たちは教育もなく、スラム街のようなところで、ひしめき合いながら生きている。そこで親もなく、犯罪に手を染めながら自力で生きてきた少年ツォツィが主人公。「ツォツィ」というのは、南アフリカで「チンピラ」「不良」とかを意味するスラングのことらしいんだけど、幼くして親のところから逃れ、土管みたいなところで生きてきた彼には暴力しか頼るものがなく、誰にも本名も教えずそう名乗って生きている。

そんなツォツィが山の手に住む裕福な黒人の夫人を襲い、高級車を奪って逃走したところ、なんとその後部座席には赤ん坊が乗っていて、見捨てることが出来なかったツォツィはスラムの自分の部屋に赤ん坊を連れ戻り、世話をすることにする。

若干「プロジェクトBB」っぽい展開ではあるものの、この映画はあくまでもシリアスに赤ん坊と接するうちに微妙の変化していくツォツィの感情を丁寧に描いていく。

とはいえ、映画は説明的なセリフは一切なく、ツォツィが何を考えて行動しているのか十分理解しきれないまま、進んでいく。だけど恐らくツォツィ自身も自分が何をしたいのか、どうなりたいのかが分からずもがいていて、そんな姿を見ながら一緒に考えるからこそ、ラストはかなり感動させられる。(特にラストカット!)

ツォツィ役のプレスリー・チュエニヤハエという南アフリカの俳優はほとんど無表情で最初は何を考えいてるのかさっぱり分かんなかったけど、誰にも心を見せずに生きてきたツォツィの役としては相当ハマッて見えました。

ツォツィに銃で脅され赤ん坊にお乳を与えさせられる、スラム街に住む女性役の女優さん(テリー・ペート)も、貧しいながらも気高く生き、ツォツィを癒していく女性をやさしく演じていて、とても印象深かった。

この手のアフリカものというか、スラムものはよくドキュメンタリータッチで手持ちカメラで撮影されることが多いけれど、ギャヴィン・フッドという南アフリカの監督は、きちんと丁寧にスラムの様子を写し出し、山の手というか都市部とスラムの間を象徴的に描いたり、かなり入りやすく物語に集中することが出来る。

ツォツィの理不尽な行動に中盤までは納得できずにみていた部分もあったけれど、終わってみれば文化や環境は全く違いながらも、共感できた映画であり、そんな目でもう一度みたくなる作品でした。

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ママの遺したラブソング

米映画

監督:シェイニー・ゲイベル

出演:ジョン・トラヴォルタ スカーレット・ヨハンソン ゲイブリエル・マック デボラ・カーラ・アンガー

最近はセクシーさと上手さをかねそろえて、大躍進しているスカーレット・ヨハンソンだけど、この映画はけっこう前に作られたものらしく、ここではまだ少女の役を演じている。

離れ離れに暮らしていた母親が死に、パーシー(スカーレット・ヨハンソン)が故郷に戻ってくると、母の家には同居していた男ふたりがそのまま居ついてしまっていた。その男たち、元大学教授(文学専門の)のジョン・トラヴォルタと、作家志望で元教授の伝記みたいなものを書いている青年は、働きもせず酒ばかり飲んでダラダラ過ごしいてる状況で、はじめはいがみ合い、おたがい相手を追い出そうと口論したりするんだけど、だんだん打ち解けあい、それぞれの人生の再生に向けていろいろしていくみたいなお話。

スカーレットは相変わらずというか、このころからというか色っぽいけれど、揺れる少女の心を上手く表現している。

驚くのはトラヴォルタのヨレヨレぶりで、白髪で相当薄くなった頭は天然なのかメイクなのかのほうが、演技よりもメチャメチャ気になってしまった。

トラヴォルタが文学の教授で、もうひとりの青年も作家志望なだけに、いろんな文学が引用されて、それぞれがいい言葉で感心させられる。また、話の筋もなかなか感動的なんだけど、ほとんどのことを言葉で説明しちゃって、動きが少ない映画なんで、はっきりいって途中でけっこう飽きてきてしまう(少なくとも私は)。そんなことを考えながら見ていたらいつの間にか終わっていた…そんな映画でした。

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2007年4月29日 (日)

ラブソングができるまで

米映画

監督:マーク・ローレンス

出演:ヒュー・グラント ドリュー・バリモア ブラッド・ギャレット クリスティン・ジョンソン

ヒュー・グラントとドリュー・バリモアっていうラブコメ映画の重鎮ふたりが初競演した、音楽業界ネタのモロど真ん中のラブコメ映画。

ヒュー・グラントが扮するアレックスは、80年代に大人気を博したポップ・グループのメンバーなんだけど、バンド解散後はまったく売れず、今は遊園地や同窓会なんかをまわって、かつてのヒット曲を歌う生活を送っている。そんな彼がある日、売れっ子の歌手から曲作りを依頼されるんだけど、作詞がなかなかはかどらず、偶然出会ったドリュー・バリモア扮するかつて文学を専攻していた女性に作詞の才能があるのが分かり、二人で曲を作る共同作業を始める…みたいなお話。

出会って最初は何とも思わない男女2人が次第に惹かれあい、付き合うようになり、途中で意見が合わなくなって別れ、ラストでよりを戻すといった、この手の映画のパターンそのままなんだけど、この2人の熟練したラブコメ演技によって、軽~い気持ちで楽しむことができる。

ヒュー・グラントの歌手役は見ていてこっちが恥ずかしくなるようなところもあるものの、二枚目半役は相変わらず巧い。(というより、こればっかという感じだけど)

ドリュー・バリモアは最近の「50回目のファーストキス」「2番目のキス」に比べたらちょっとソフトな感じがするけど、クシャっとしたとする表情は相変わらずで、なんかホッとさせられました。

あと、ドラマ「ER」ではメチャメチャ怖い看護師長役だったクリスティン・ジョンソンが、ドリューバリモアの姉さん役でけっこう笑わせてくれるんで、こんど「ER」の見方もちょっと変わりそうです。

肝心の人気バンド時代のシーンなんかはイマイチ笑えないし、二人が作る曲もいいんだか悪いんだか良くわかんなかっりしたけれど、2人の掛け合いやら、コメデイセンスやらをゆる~く楽しむのもいいもんでした。

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バベル

メキシコ映画

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イリャニトゥ

出演:ブラッド・ピット ケイト・ブランシェット ガエル・ガルシア・ベルナル 役所広司 菊池凛子 アドリアナ・バラッサ

菊池凛子がアカデミー助演女優賞ノミネートで日本のニュースでもメチャメチャ話題になったメキシコの奇才アレハンドロ・ゴンザレス・イリャニトゥ監督の最新作。

タイトルの「バベル」は旧約聖書に出てくるひとつのエピソードで、かつて人間の言葉はひとつだったものを、神の怒りに触れ、言語を別たれたことから持ってきたそう。この言語の隔たりとともに人間関係、心の隔たりによっておこる悲劇と再生を、モロッコ、日本、アメリカ=メキシコを舞台にそこに生きる全く異なる人々の、でも「隔たり」ということを内包していることでは共通した物語が平行して進行していく。

イリャニトゥ監督は衝撃的なデビュー作「アモーレス・ペレス」でも用いた、いくつものエピソードを積み重ねて、突き刺さるような人間の衝動や哀しみや愛情を表現していく手法は、さらに洗練され、ググッと胸に迫ってくる、迫真で重厚な一作になっている。

エピソードは大きく4つに別れていて、モロッコを旅行するプラピ=ケイト・ブランシェット夫妻のうち妻が銃弾に倒れる事件を描いたもの、撃ってしまったモロッコ人一家の悲劇、ブラピ夫妻の子供を米国で面倒みている家政婦が息子の結婚式に出席すめためにメキシコに帰る話と、事件で使われた銃のかつての所有者だった役所広司とその娘である聾唖の女子高生(菊池凛子)が描かれる日本の話。

菊池凛子は助演女優賞ノミネートとはいえ、役所広司の出番はちょっとだけで、日本でのエピソードでは堂々主役を張っている。母親に自殺され、心に傷を負い、周囲との関係を構築できずにもがき苦しむ聾唖の女子高生を文字通り体を張って衝撃的に演じている。飛びぬけた無邪気さと、突き刺すような表情、そして思い悩み慟哭する姿をグロテスクに美しく演じている。「ナイスの森」のツンケンした眼鏡の委員長役ぐらいでしか記憶になかったんだけど、かなりビビるぐらいの迫力で、他のエピソードとは若干異質なパートを引っ張っていっている。

役所広司は出番は少ないながらも重要な役で、この国際的な映画で最もといっていいぐらいの印象をしっかり残しており、やっぱり凄いです。

で、話題になっている菊池凛子以外にも、前作「21グラム」でのショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロのように、他のキャストも凄い演技をしていて、息つくヒマもなく、映画がすすんでいく。

ブラッド・ピットは、妻を撃たれ、全くの異国の地であるモロッコで途方にくれる男をかなりいい感じで演じている。最近は「オーシャンズ~」とか「Mr.&Mrs.スミス」みたいなお気楽な役が多かったけど、白髪もぜんぜん隠さずに苦悩する普通の中年男を演じきっている。最近では一番いいです。

ケイト・ブランシェットも撃たれて瀕死の状態ながらも、圧倒的な演技力と存在感をみせつけてくれる。この2人の組み合わせがメチャメチャ合っていて、アンジェリーナ・ジョリーなんかよりぜんぜんいい。

「アモーレス・ペレス」の主役でメキシコの貴公子と呼ばれるガエル・ガルシア・ベルナルが出ているパートでは、ガエルはあくまでも脇役で、主役はブラピ一家の家政婦を演じるアドリアナメバラッサというメキシコの女優さん。メキシコでの息子の結婚式があるのにブラピ夫妻の事件により、代わりの子守も用意してもらえなくなり、やむを得ず子供たちもつれてメキシコに行ってしまうが…みたいなお話。彼女もこの映画でアカデミー助演女優賞にノミネートされているぐらいで、「私はなにも悪いことはしていない。ただ、愚かなことをしてしまっただけ」と嘆く、善良な不法就労者の女性を演じ、涙を誘う。

そして、モロッコにおける加害者側のモロッコ人一家のパートは、ぜんぜん有名人は出ていないけれど、無垢なだけに悲劇性の強い少年たちの物語をストレートに演出していて、この映画の雰囲気作りを決定付けている。

時間をちょっとずつずらしながら各エピソードが有機的につながりながらも、それぞれが凄い光を放っている。言語の隔たりの他、国家、貧富、世代、苦悩、いろんな隔たりを描きつつ、どのエピソードも悲劇を描いているんだけど、ところどころに希望や意外な繋がりが描かれ、ただの悲劇ではなく、見終わった後、いろいろ考えさせられる濃厚な映画でした。

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ハンニバル・ライジング

英・チェコ・仏・伊合作

監督:ピーター・ウェーバー

出演:ギャスパー・ウリエル コン・リー リス・エヴァンス ドミニク・ウェスト

「羊たちの沈黙」(大傑作!)、「ハンニバル」(微妙…)、「レッド・ドラゴン」(まあまあ…)と続くハンバル・レクターシリーズの最新作にして、レクター博士の幼少時代から、青年となり殺人鬼として目覚めていく姿を描く、いわゆる「エピソード1」的な映画。

悪役で殺人鬼でありながら、あふれる知性と洞察力、そしてそれらを上回る不気味さ、そしてアンソニー・ホプキンスの至高の演技によって、映画史上でもダース・ベイダーと並ぶぐらいのキャラクターとして君臨している役を、その若き日の姿っていうことで、フランスの若手俳優ギャスパー・ウリエル(最近では「パリ、ジュテーム」でガス・ヴァン・サントのパートでいい味出していた)が演じている。

「ハンニバル」がヒットしたおかげで、時代を遡って、せっかく自由になったレクターを監獄に戻して「レッド・ドラゴン」を作っちゃう時点ですごいなあと半分あきれていたけれど、今度は若いころを描いちゃうっていうんでけっこうビックリ。(半分楽しみではあったけど)

トマス・ハリスによる「ハンニバル」の原作の中にレクターの少年時代が回想シーンでちょっと出てきていたんで、まさかそれを膨らませて映画にしちゃったのか?と思っていたら、キチンとハリスにより「ハンニバル・ライジング」っていう原作が描かれていたんですねえ。

お話は、第二次世界大戦終盤、リトアニアの貴族(城主)の子息として平和に暮らしていたハンニパルだけれど、ドイツ軍がリトアニアに侵攻し、ドイツ軍とロシア軍の戦闘に巻き込まれ、両親と死別し、幼い妹と敗走するドイツ兵(実際にはナチスに協力するリトアニア人)に捕まり、壮絶な体験をする。その後、孤児院に入り、そこを出て、叔父さんを頼ってフランスに行く。その叔父さんは日本人女性(コン・リー)と結婚しており、その女性と暮らすうちに日本文化も吸収しながら育つ。そして、パリで医学生となった後、その元ドイツ兵たちを探し出し、復習を果たすといった感じのもの。

トマス・ハリスの原作は、日本の俳句やら詩やら日本文化がタップリ紹介されたり、あいかわらず面白かったんだけど、映画ではかなり端折られている。ただし、今回はトマス・ハリス自らが脚本を書いているだけあって、雰囲気というか本筋は守られていて、原作読んでると物足りなさは残るものの、「ハンニバル」の端折りかたよりは全然よかったです。

アンソニー・ホプキンスには遠く及ばないものの、ギャスパー・ウリエルのハンニバルもそれなりの雰囲気を醸し出していてなかなかでした。(立ち方とか、「羊たち~」のハンニバルそっくりだし)

「SAYURI」に続き日本人役に若干無理を感じちゃうコン・リーだけど、日本語なんて一個もしゃべらないし、その辺気にしなければ、アジアを代表する女優としてやっぱりキレイだし、貫禄と眼力と色気でいい味だしている。

「ノッティングヒルの恋人」「ヒューマン・ネイチュア」なんかで抜群のコメディセンスヲ見せたリス・エヴァンスが元ナチスの悪いやつを憎たらしく演じてるんだけど、これがけっこうハマッてて、美しくてスマートなハンニバルといいバランスが取れている。

「真珠の首飾りの少女」で光と影を巧みに活かしながら中世ヨーロッパを濃密に描いていたピーター・ウェーバー監督はこの手のスリラーをやるのはかなり意外だったけど、ここでもパリの街並みなんかを重厚に映し出し、ハンニバルのキャラをけっこうちゃんと浮かび上がらせている。

ちょっと物足りなさを感じちゃうのは、ハンニバルはバンバン殺しまくるんだけど、その相手がみんな悪いやつばっかりで、半分正義の味方的な一面もあり、本当の殺人鬼としての話にはまだなってないところ。あとやっぱり、ちょっと端折りすぎかなあと…

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クイーン

英・仏・伊合作

監督:スティーヴン・フリアーズ

出演:ヘレン・ミレン マイケル・シーン ジェームズ・クロムウェル

イギリスのベテラン女優ヘレン・ミレンが現在のイギリス女王エリザベスⅡ世を演じて、アカデミー主演女優賞を受賞した話題の社会派ドラマ。

これまでエリザベスⅠ世だったら、ケイト・ブランシェットやジョデイ・デンチ(アカデミー助演女優賞!)など、いろんな女優が演じているのを見たことあるけど、在位中の女王を主役に持ってきて、しかもかなりの完成度というかリアルさだったので、ビックリ。そしてこれまた在任中のトニー・ブレア首相も準主役クラスでもってきて、女王とのやりとりをスリリングでユーモアたっぷりに描いている。

物語は1997年、ダイアナ妃が死去した後の1週間を中心に描かれている。王室を離れても絶大な人気を誇っていたダイアナ妃の死により、イギリス中が大きなショックと深い悲しみに陥っている中、女王はこれを冷静にとらえ、あくまでも王室を離れた一私人の死であるとし、王室としての正式なコメントも対応も差し控えていた。この女王の対応に国民は不満を募らせ、マスコミを中心とした王室バッシングにまで発展していく…といったもの。

王室の伝統を重視し、国民のヒステリックな反応が理解できずに静かに悩む女王の姿と、就任間もないトニー・ブレアの対応が政治的ドラマとして、シンプルだけど、テンポよく濃密に描かれている。

王室の人たちのセリフがテンポよく、威厳や品がありながらも、人間味たっぷりに描かれていて、見ていて楽しくなる。宮殿の中を犬が駆け回ったりといったディテールやファッション、女王自ら旧式のランド・ローバーを運転しちゃう姿なんかが意外でありながらも感心させながら見せてくれる。

中でもやっぱりヘレン・ミレンが凄く、終始女王として画面に圧倒的な存在感を示しつつも、人間らしさやユーモアをところどころ散りばめながら、映画をガッチリ引っ張っていっている。(特に鹿の場面はもう…)

トニー・ブレア役のマイケル・シーン(「ブラッド・ダイヤモンド」のダイヤ業者の重役役)も見た目もそっくりだけど、史上最年少の英国首相を人間味あふれる家庭人として、小気味よく演じている。(なんとなくいい人に描きすぎている気もするけど…)

「ハイ・フィデリティ」「ヘンダーソン夫人の贈り物」他多数の職人スティーヴン・フリアーズの演出は、ヘレン・ミレン他のリアルで上品なドラマにダイアナ妃や当時悲しみにくれていた人たちの実際の映像を差し込み、現実と虚像を巧みに混ぜ合わせて、物語を盛り上げてくれる。

ただ、よ~く考えてみると、たぶん王室の人たちやブレアなんかは実際にはあんなことを言ったり思ったりしている訳ではなくて、実在の人たちを想像を膨らませて、いかにもそんな感じに作り上げちゃうってのは何か意味があるのかなあと思っちゃったんだけど、映画を全部見終わった後にフと思ったぐらいだから、やっぱり映画中はドップリ浸かってたってことで、そういう点でもなかなかの映画だったと思います。

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2007年4月28日 (土)

ブラック・ブック

オランダ・独・英・ベルギー合作

監督:ポール・バーホーベン

出演:カリス・ファン・ハウテン セバスチャン・コッホ トム・ホフマン デレク・デ・リント

「ロポコップ」「トータル・リコール」「氷の微笑」「スターシップ・トゥルーパーズ」「インヴィジブル」とハリウッドのB級大作映画監督としてすっかり有名であり、アクの強い独特の演出・ストーリーで怪作を撮ってきたポール・バーホーベン監督が故郷オランダに帰り、第二次世界大戦下のオランダを舞台に戦争の荒波の運命を翻弄されるユダヤ人女性を描いた歴史(メロドラマ)大作。

俳優陣はもちろん、スタッフもほとんどがオランダ人で、これまでのハリウッドの超大作とは趣が異なり、手作り感覚にあふれ、他のヨーロッパの歴史物のような重厚感を漂わせているけれど、さすがにバーホーベン映画だけあって、もの凄く早い展開と、オーバーでアクの強い演出は健在であり、凄い展開に半分あきれつつも、圧倒され、笑いながら楽しめる。

お話はオランダの裕福な家庭で育ったユダヤ人女性が、家族をナチスに殺され、ドイツ占領下のオランダでレジスタンスに加わり、工作活動を行うようになる。そこで、ナチス将校にスパイとして近づくが、この将校がナチスの中でも特にカッコよく、人道的でもあったりして、次第に惹かれていき…みたいな感じ。

ハリウッドのセレブ俳優は一切出ていないけれど、どの俳優さんも気合が入りまくっていて、画面中に緊張感が漂わせている。特に主役のユダヤ人女性を演じる女優さんはぶっちゃけあんまり華はないんだけど、すごい気迫で、グイグイ物語を(翻弄されながら)引っ張っていく。ユダヤ人に見えないするために陰毛まで金髪に染めたり、裸で汚物まみれにされたりと、ハリウッド映画では考えられない体当たり演技に多少引きつつもメチャメチャ感心させられます。

唯一知っている顔は「善き人のためのソナタ」の劇作家役だったドイツ人俳優セバスチャン・コッホぐらいで、やさしいナチス将校役で若干ウソ臭いけどいい味出している。

次々に激しい展開をみせる内容には目が回るけれど、歴史ものとしてもそれなりに成立しているし、単純に面白かったです。

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2007年4月20日 (金)

ロッキー・ザ・ファイナル

米映画

監督:シルベスター・スタローン

出演:シルベスター・スタローン バート・ヤング アントニオ・ターヴァー ジェラルディン・ヒューズ

「なぜ今さら?」と多くの人が思ったはずの、まさかのロッキーの最新作。高齢になってリングにあがるロッキーよりも、今になってロッキーを撮ろうとするスタローンのほうに痛々しさを感じないでもなかったけれど、見ればロッキーはやっぱりロッキーであってそれなりに熱くなりました。

前作の「ロッキーⅤ」でそれなりの理由があって引退し、リング以外でも家族と強く生きていくみたいな完結をしたはず(執拗にリングに上がらせようとする悪徳プロモーターニハ言葉もをかわし、若手ボクサーをストリートファイトでぶったおすラストにそれなりに感動したんだけど…)だし、なによりもエイドリアンが死んじゃってるという設定に、見る前は引きまくりだったんだけど…

いろんな疑問を持たせつつも、スクリーンに立つロッキーはやっぱりロッキーであって、試合をする後半もいいけど、フィラデルフィアで静かにレストラン経営をして暮らすロッキーの姿が、ロッキーのその後の生活を描いていてなかなかよかった。タリア・シャイアがもう女優をやってないという理由にもよるのかもしれないけれど、エイドリアンのいない生活に耐え切れず、何か打ち込むものが欲しいとボクシングに再挑戦しようとする姿には、そんなに抵抗なく、割と素直にみることが出来た。

ストーリーはかなりシンプルで、強すぎて対戦相手がいなく人気がガタ落ちの現チャンピオンが、人気回復の手段として、ボンシングに復帰しようとしているロッキーをエキジビジョンマッチの相手に指名するというもの。

ロッキーの復帰に大反対のサラリーマンをやっている息子(Ⅴではスタローンノ息子のセージ・スタロローンがやっていたのに、今回は違う人がやっている)との確執もあっさり解決しちゃったり、他の女性の息子との絡みとか、サイドストーリーはものかごくあっさり描いちゃって、ちょっと肩透かし的なところは否めず、試合シーンも衰えや痛々しさは隠せないものの、そんな痛々しさも含め今のロッキーを描いており、あの音楽がかかってくるとやっぱりそれなりにかなり盛り上がります。

細かいことにはこだわらずにロッキーの雰囲気を味わうにはそれなりの出来になっていたんじゃないかと思われます。

それにしても、ロッキーは別として、ポーリー(エイドリアンの兄さん)役のバート・ヤングがぜんぜん変わってないのには笑ってしまいました。

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2007年4月17日 (火)

サンシャイン2057

米映画

監督:ダニー・ボイル

出演:キリアン・マーフィー 真田広之 ミシェル・ヨー ローズ・バーン クリス・エヴァンス

ビックリした! 「トレインスポッティング」のダニー・ボイル監督による宇宙モノのSF映画に真田広之やミシェル・ヨーが出るっていうんで、けっこう期待は高かったけど、それ以上で、こんなに面白いとは思わなかった!

前作のゾンビ物「28日後…」がカルトっぽい内容だっただけに(「ゾンビもの」はほとんどカルトッぽいけと)、今回もそんな感じのものを想像していたら、これがかなり真面目な正統派SF映画だった。「28日後」みたいに低予算かと思っていたら、宇宙船の描写やら船内の様子とかキッチリ描かれていたりして。

2057年、太陽が活動を弱め、地球は氷河期に入り、人類は滅亡の危機に瀕している未来、活性化させるために大量の核爆弾を太陽にぶち込むという、人類を救う最後の任務を帯び、巨大な宇宙船で太陽に向かう乗組員たちのお話。彼らが太陽にかなり近づいた辺りで、救命信号を傍受する。それは彼らより数年前に同じ任務で地球を出発して途中で行方不明になった宇宙船からのものだった。その宇宙船と接触をとるために進路を変えたところから、様々な事件が彼らを襲うようになり…

宇宙船という密室の中でのサスペンス・心理劇に加え、宇宙空間でのアクション(船外活動)、至近では人間など全く無力な圧倒的な太陽の描写、そして危機に立ち向かう乗組員たちの使命感と勇気などなど、正統的な作りだけど、最近なかなか作られなかったまともなSF映画っていう感じ。宇宙服のヘルメットの内側にモニターがあったりするディテールもよかったし。

ソダーバーグの「ソラリス」や、デ・パルマの「ミッション・トゥ・マーズ」、あとは「2010年」(「2001年宇宙の旅」の続編)に似た感じがあって、「アルマゲドン」的な要素もあるけど、こっちのほうが全然よかった。あえて言うと、小松左京の「さよならジュピター」といい勝負。

クルーひとりひとりもキッチリ個性的に描かれていて(白人がイマイチパンチに欠けたけど…)、極限状況に追い詰められていく様がリアルに伝わってくる。

真田広之は「宇宙からのメッセージ」(深作欣二監督の「スターウォーズ」のパクリ!)以来のSFが、海外の本格的なもので、しかも船長役だけど、これがメチャメチャかっこいい(ぶっちゃけ出番はあまり多くないけど)。で、香港のアクションもの「皇家戦士(だったと思う)」で真田と競演したミシェル・ヨーがここでは、女性的だけど芯の強い科学者をメチャメチャいい味で演じている。英語で言い争うシーンなんて、とても上手くて感心してしまった。

そして、「28日後」のときも主演だったけど、その時は誰だか分からなかったキリアン・マーフィーも、名作「麦の穂をゆらす風」を経て、上手さや存在感を増し、繊細だけど最後はキッチリ仕事をする科学者を、弱さと強さを交互にみせて、キッチリ主役を張っている。

あと、もうひとりの女性乗組員役のローズ・ヴァーンは、ミシェル・ヨーと対象的な癒し系の役ですごくよかった。

意外にも濃厚なSFの贅沢さを味わえる作品だった。…ただ、宇宙船のどこでもフツーに重力があるのにあんまり説明してくんないんで、ちょっと「??」とひっかかるトコもあるにはあったけど…

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2007年4月16日 (月)

蟲師

日本映画

監督:大友克洋

出演:オダギリジョー 江角マキコ 大森南朋 蒼井優 

あのマンガ・アニメ界の重鎮、「AKIRA」の大友克洋の新作が実写映画で、しかも他人の書いたマンガの映画化っていうんで、2倍オドロキだけど、前作の「スチームボーイ」も公開時を遅らせてまでこだわって作った人だけあって、わざわざ人のものを映画化しようとしたってことは、それなりの内容なんだろうなあと思って見に行ったら…

100年前の日本、特に山深い里なんかには「蟲(むし)」といわれるモノノケみたいのがいっぱいいて、人間と共存している。その蟲を熟知し、蟲に憑かれた人を助ける職業「蟲師」というものがあって、そのひとりであるギンコという蟲師を描いたお話。

子供のころ、山崩れで母親をなくした少年が、ヌイという蟲師の女性(江角マキコ)にひろわれる。そんなギンコの子供時代の暗い記憶と、大人になって蟲師として村々を渡り歩くギンコの姿を交互に見せていく。そしてクライマックスには自分の過去に多いに関係のある、恐ろしい蟲と対決していく…みたいな内容。

「虫」ではなく、「蟲」といういう字は宮崎駿の「風の谷のナウシカ」で初めて知った言葉だったけど(マンガのナウシカには蟲を操る「蟲師」という職業も出てきてたけど)、この映画では日本独特のモノノケのようなものとして描いている。

深い森にもやがひろがる静寂なオープニングや木々の陰からちょっと姿をみせる蟲たちは「ナウシカ」ではなく、「もののけ姫」を連想させる。実写でそんな雰囲気を出すだけでもたいしたもんだなあと感心させられ、大友監督のこだわりがとても感じられる。そして、むかしの言葉をリズムよく巧みに発するギンコ役のオダギリジョーをはじめ、登場人物のセリフまわしといい(特に前半に出てくるおかみさんがすごくいい)、幻想的なストーリーの流れやビジュアルは、なかなか他の日本映画では味わえない雰囲気を出している。

ただ…

江角マキコは前半すっごいいい味を出していたんだけど、後半の変りようにはただ引くしかなく…、ラストもストーンッと終わってしまって、いい感じでマジメに見ていたのが、ズルッとなってしまった。

狙いかもしれないけど、もうちょい余韻を楽しみたかった。かなり微妙な気分にさせられたけど、そんだけ中盤までは惹きつけられてたんだなあと、逆に感心させられてしまいました。

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ブラッド・ダイヤモンド

米映画

監督:エドワード・ズウィック

出演:レオナルド・ディカプリオ ジェニファー・コネリー ジャイモン・フンスー

ダイヤモンドの利権を巡って、内戦が繰り広げられ(それだけじゃないだろうけど…)、毎日のように、簡単に人命が失われるアフリカノシエラレオネという国を舞台に、元傭兵でダイヤモンドの密売人のディカプリオが、ものすごい貴重なダイヤを手に入れるために、ダイヤの発見者で内戦に巻き込まれ、家族と引き離された男と、激戦地である奥地へと命がけで入り込んでいくといったお話。

監督のエドワード・ズウィックは、「ラスト・サムライ」もよかったけれど、「戦火の勇気」や「マーシャル・ロー」みたいな、現代の戦争やテロを扱った社会派のサスペンスでそうとういい味を出しいてる人なんで、今回も内戦で混乱するアフリカをリアルに描いている。

デイカプリオは「ディパーテッド」ではなくこっちでアカデミー主演男優賞にノミネートされたほど、気合の入った迫真の演技で、高めの声のせいもあって少年っぽさが抜けなかったけれど、今回のでやっと大人の男を演じているといった印象。(て、いうか貫禄がありすぎていきなりオッサンになってしまってるけど)

と、なかなか豪華な内容になっているんだけど、最近は「ホテル・ルワンダ」みたいに内戦の悲劇をリアルに誠実に描いた作品に比べて、どーしても引いてみてしまう。ただ「生きる」だけでも奇跡であるはずの世界でダイヤなんぞを必死で探していているお話になんか乗れない。もちろんダイヤはただの象徴であって、それに犠牲になっているアフリカの現状を描こうとしているのはなんとなく、分かるんだけど、主要キャラ以外の人たちが簡単に死んでいくのと、デイカプリオもバンバン殺して超人的な活躍を見せてるがなんか…

そんな話をぐぐっと現実的にしているのが、これでアカデミー助演男優賞にノミネートされた黒人俳優ジャイモン・フンスーの仏頂面とリアルな演技。スピルバーグの「アミスタッド」でもそうだったけど、しいたげられながらも、怒りと信念を胸に秘めた男を演じさせたら上手く、ここでもハデなアクションものになりそうな映画を社会派のいい話にしている。

と、文句みたいなことも書いたけど、ラストにかけての展開にはなかなかグッとされられるし、見終わったあとにいろいろ考えさせられる映画でした。

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2007年4月15日 (日)

オール・ザ・キングスメン

米映画

監督:スティーヴン・ゼイリアン

出演:ショーン・ペン ジュード・ロウ アンソニー・ホプキンス ケイト・ウィンスレット

1940年代後半、強烈な個性で絶大な人気を誇った実在のルイジアナ州知事をモデルにした小説を、その知事役をショーン・ペンが演じる社会派ドラマ。

1949年、汚職がはびこるルイジアナ州で、それを告発し、貧乏人のための州政を目指した役人ウィリー(ショーン・ペン)は、最初はライバル候補の票を割るために現職知事に利用されて立候補したけれど、その強烈な個性と、人を惹きつける魅力によって、民衆の心を掴み、知事に当選する。しかし、その後は圧倒的な支持率を保ちながらも、自らも権力に取り付かれ、政敵を排除するために画策したり、汚職に手を染めたりしていくが…的なお話。

ショーン・ペンが映画の中心人物ではあるものの、物語の語り手は新聞記者で、どんどんショーン・ペンに惹きつけられて彼のために働くようになる男を演じるジュード・ロウのほう。ショーン・ペンの魔力のような魅力に惹きこまれながら、自分の周りの人物を巻き込み破滅にむかっていく様子も描かれていく。

ショーン・ペンのアクの強さや迫力はこの知事役にピッタリな他、この知事と対立する判事役のアンソニー・ホプキンスはあいかわらず激シブのインテリの役をいい味と静かな迫力で演じ上げていて、この二人の競演シーンは鳥肌がたつぐらい。あとはケイト・ウインスレットとジュード・ロウなんかも「ホリディ」とはうってかわってシリアスなほうが似合っていて、豪華な役者さんたちで、重厚な政治ドラマに仕上がっている。

ただ、ショーン・ペンは悪の匂いをプンプンさせているんだけど、具体的な悪いことが描かれないことと、ジュード・ロウがなんであそこまでショーン・ペンのために働くのかがイマイチ分かんなかったことで、最後までちょっと気分が乗れなかったのが残念。シーン、シーンの演技には息を呑むほどなんだけど…

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プロジェクトBB

香港・中国合作

監督:ベニー・チャン

出演:ジャッキー・チェン ルイス・クー マイケル・ホイ ユン・ピョウ カオ・ユンフェン シャーリーン・チョイ

今年で53歳となるジャッキー・チェンの作品、それも主演のアクション映画の新作をまだ見られるというだけでも、もう何もいうこともないです。

しかも今回は最近の特撮バンバン使った「神話」や部下がバンバン殺される「香港国際警察」のようなちょっとダークなものと違って、オーソドックスな香港独特のコメディになっていて、スケールはあまり大きくないものの、見ていてホッとする作品でした。

題名に「プロジェクト」がついているってだけで、往年の傑作「プロジェクトA」のシリーズか?的なノリで宣伝されているけど、ぜんぜん違って、舞台は現代で、ジャッキーは泥棒役。どろぼうチームのリーダーがあのマイケル・ホイなんだけど、ある日彼が立てた計画は、なんと、富豪の家から赤ちゃんを盗み出すというものだった。ドロボーとはいえジッャキーだけあって善人役なんで最初は大反対だったけど、結局誘拐することになってしまい、赤ちゃんの世話で悪戦苦闘してしまうというお話。

アクションの数やスケールは他の作品に比べるとグッと減っているけど、子育て教室で苦労する姿や見ていてちょっとはずかしくなる人情話のほうが、ホッとするというか、ミョーに和むというか…

あと、マイケル・ホイのほかにもユン・ピョウまで出ていて、けっこうおトクな作品になっている。「ツインズ・エフェクト」のシャーリーン・チョイも相変わらずいい味を出してる。

最近はスタントマン利用疑惑なんかが出ていたりとかしているけど、とにかく元気で動きまわるジャキーがスクリーンで見られるだけで、それだけで十分です。

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春のめざめ

ロシア映画(アニメ)

監督:アレクサンドル・ペトロフ

正にひとつの芸術と言っていい、美しく幻想的なロシア製のアニメーション。ロシア人のアニメーション作家アレクサンドル・ペトロフという人は驚くべきことに、油絵を動かし、アニメーションにしてしまった。日本製のアニメともハリウッドのCGアニメとも全く異なる、濃厚で美しく、奥行きのある絵の動きに27分間という上映時間、クギづけにされてしまった。

舞台は19世紀、帝政末期のロシアで、16歳の貴族の子息である主人公アントンが女神のような年上の女性と、アントンの家に奉公する美しい少女の2人に同時に憧れを抱き、空想と現実の両方の世界をいったりきたりしながら、少年時代の甘酸っぱいひとつの季節を過ごしていくといったお話。

油絵によるアニメっていうことで、最初はおとぎ話のようなものを想像していたけど、登場人物の仕草や女性の艶かしい動きや美しさは、十分に大人の物語であり、あふれる色彩の中で、自分も主人公の少年となって、擬似体験をしたような気分にさせられる。その技術の高さと独創性には本当にビックリさせられる。

とにかく、いままで経験のしたことのない映像であり、毎日のようにアニメが大量生産され、たれ流されている日本だからこそ、この国でもこういうものをじっくり見ることが、もっと広まったらと切に感じてしまいした。

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2007年4月 6日 (金)

華麗なる恋の舞台で

カナダ・米・ハンガリー・英合作

監督:イシュトヴァン・サボー

出演:アネット・ベニング ジェレミー・アイアンズ ブルース・グリーンウッド マイケル・ガンボン

「バグジー」や「アメリカン・ビューティー」なんかで実力派として存在感をバシッと示してきたアネット・ベニング主演で、ハンガリーの巨匠監督がイギリスの劇作家サマセット・モームの作品を映画化した、1930年代の舞台女優の奔放な恋を描いた作品。

イギリスの人気舞台女優ジュリアは夫である劇場経営者(ジェレミー・アイアンズ)とはいい関係を保ちつつも、距離を置いた生活を送っている。夫の元を訪ねてきた若い青年と恋に落ちてしまうけれど、その青年にハマり込んでしまい、若い彼に嫉妬し悩まされていくが…みたいなお話。

出だしからピントがなんとなくズレたような映像と、古臭く芝居がかった演技やセリフ、そしてなんでこんな男に夢中になるのか分からない平凡でたいしたことなさそうな男にハマッテいく展開に、確かにアネット・ベニングの演技は上手いけどなんか空回りしている感もあり、う~ん??…と思いつつ正直がまんしながら見なければならなかった。途中で出てくる若い恋敵の女優もイマイチだし。唯一マイケル・ガンボン(ハリー・ポッターの校長(2代目))がジュリアの昔の恩師で心の声としていろんなところに出没するのはよかったけど。

ところがいよいよクライマックとなる舞台のシーンでそれまでの微妙な展開や雰囲気を一掃する衝撃的で面白く、スカッとする展開を見せる。気のせいか、それまでのちょっとぼやけた映像がググッと鮮明なった気がした。

その演出の巧みさに驚くとともにアネット・ベニングの上手さにはあらためてビックリさせられてしまった。それまではグシャグシャになったり、しわくちゃになったりすることも厭わなかったのに、ラストでは一変して美しくみえるところはさすがって感じでした。

とにかく90分がまんして見ていたら、ラストにはググッと驚かされ、痛快な気分になれると思います。

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2007年4月 5日 (木)

ハッピーフィート

米映画(アニメ)

監督:ジョージ・ミラー

出演(声):イライジャ・ウッド ロビン・ウィリアムズ ブリタニー・マーフィー ニコール・キッドマン ヒュー・ジャックマン

「マッド・マックス」の監督というよりは、最近では「ベイブ」の監督といったほうが分かりやすいジョージ・ミラー監督が作ったフルCGアニメはペンギンを主役にしたミュージカ映画。

最近はアメリカ産のCGが定期的に公開されるようになったけど、初期のピクサー作品や「シュレック」のときのような新鮮さや興味をひくものはなくなってしまったけれど、あの子豚や動物たちを使って、粋な冒険物語を作り上げた監督(「~都会へ行く」はイマイチだったけど…)がペンギンを使ってミュージカルを作る、しかも米国ではメチャメチャヒットしたっていうんで、けっこう期待も高まったんだけど…

お話は、皇帝ペンギンの一族の中で生まれたマンブルは卵のときの事故のせいか、歌で自分を表現することが最も重要とされるペンギンの世界の中で、生まれつきの超音痴だけど、歌の代わりにタップダンスが大得意。歌は歌えなくても、ダンスで自分を表現することに才能を見いだすものの、一族の伝統を重んじるペンギンたちからは疎まれ、遂には旅に出る…みたいなお話。

声の出演も豪華で、イライジャ、ブリタニーあたりはまあまあかなと思うけど、ロビン・ウィリアムスに加え、両親にニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンがやっているのにはちょっとビックリしたけど、この二人の歌のうまさにもビックリ。

で、映画全体としては、両親が出会い、卵を産み、マンブルが生まれて子供時代までは、ペンギンの生態も丁寧に描いていたり(「皇帝ペンギン」でみたのとほとんど同じ感じ)、子供のペンギンはかわいく、なかなか興味深く見れたんだけど、マンブルが青年になったあたりから、ぶっちゃけあんまりかわいくないし、さすがにペンギンと氷ばっかりの映像で…

正直ちょっと飽きてきちゃって微妙な感じになってきちゃったあたりで、かなり凄い展開をみせて、並のCGアニメとは一線を画す内容にはけっこうビックリさせられました。

単なるペンギン世界の楽しい映画ではなく、シリアスに環境問題を訴える展開にはかなり驚かされたとともにかなり新鮮に感じたけれど…そこからラストにかけての展開が超急で、ハッピーエンドはハッピーエンドなんだけど、ちょっと無理やりって感じが否めなかった。

ペンギンたちが楽しく歌い踊るミュージカルだったけど、クライマックスに持ってきた現実に目を覚まされ、そこからの都合のいい展開にちょっと?とさせられる微妙なお話だと私は感じたんですが…

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2007年3月26日 (月)

ホリデイ

米映画

監督:ナンシー・メイヤーズ

出演:キャメロン・ディアス ケイト・ウィンスレット ジュード・ロウ ジャック・ブラック エドワード・バーンズ

それぞれロサンゼルスとイギリスの田舎(ロンドンの近く)に住む、キャリアウーマンで一人暮らしの独身女性が、それぞれ失恋の傷を癒すために、クリスマスにお互いの家を交換して休暇過ごすというお話。

この女性をキャメロン・デイアスとケイト・ウィンスレットが演じ、それぞれが休暇先で出会う男性をジュード・ロウとジャック・ブラック(!)が演じていて、「恋愛適齢期」でダイアン・キートンとジャック・ニコルソンを使って大人のラブコメを作ったナンシー・メイヤーズが監督するってんで、完成度の高い大人のコメディを想像して見にいったんだけど…

キャメロンとジュード・ロウのカップルは割とありがちだけど、ジャック・ブラックとケイト・ウィンスレットのラブコメなんてなかなか見られないんで楽しみにしていたんだけど、はっきりいってなかなか入り込めなかった。

主要人物それぞれが不幸でもなく、親近感もあんまりなく、リアルさが感じられず、ぶっちゃけ展開にあんまり興味をもてなかった。でもってロスとイギリスの話を交互にもってくるんでそれぞれがなかなか盛り上がらずに…。

ジャック・ブラックらしさはチラッとみえて、そのシーンはよかったんだけど(ビデオ屋のシーンには思わぬサービスもあり!)、男としてはあんまり特徴というか、共感できるとこもあんまりなく…  出てきたキャラの中ではキャメロンと冒頭で別れちゃうエドワード・バーンズが一番人間っぽいような気が。

何気なくみていたけど、やっぱりラブコメって難しいんだなと改めて感じちゃいました。

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2007年3月25日 (日)

パリ、ジュテーム

仏映画

監督:ブリュノ・ポダリデス グリンダ・チャーダ ガス・ヴァン・サント ジョエル&イーサン・コーエン ウォルター・サレス&ダニエラ・トマス クリストファー・ドイル イザベル・コイシェ 諏訪敦彦 シルヴァン・ショメ アルフォンソ・キュアロン オリヴィエ・アサヤス オリヴァー・シュミッツ リチャード・ラグラヴェネーズ ヴィンチェンゾ・ナタリ ウェス・クレイヴン トム・ティクヴァ フレデリック・オーピュルタン&ジェラール・ドパルデュー アレクサンダー・ペイン

出演:スティーブ・ブシェミ ジュリエット・ビノシュ ニック・ノルティ ファニー・アルダン イライジャ・ウッド ナタリー・ポートマン ジーナ・ローランズ ベン・ギャザラ

パリの街を舞台に、18人の世界中の監督が短編を競作した贅沢で上品な映画。

それぞれの作品は5分程度のメチャメチャ短いものだけど、シンプルなだけにそれぞれの監督の個性が凝縮されていて、作者の違う展覧会で絵画をひとつひとつみてまわるような贅沢な時間が過ごせます。

監督たちはあのコーエン兄弟をはじめとして、ガス・ヴァン・サント、「サイドウェイ」のアレキサンダー・ペイン、「セントラル・ステーション」のウォルター・サレス、「パフューム」のトム・ティクヴァ他と驚くほど豪華で様々だけど、この中にホラー映画の巨匠ウェス・クレイヴンまでいるのに更にビックリ!(これがまたちょっとコミカルな大人のお話でよかった)

こんなに多様な監督たちがそれぞれの物語を描いているので、一体感などないかと思っていたらパリという街の持つ雰囲気なんかが、18もある別々の映画にがどこかでつながっているような、ひとつの映画になっているような感じがする。(クリストファー・ドイルのだけが微妙に浮いていたような…)

個人的には久々のスティーブ・ブシェミの独特の雰囲気を楽しめるコーエン兄弟のパートが楽しめたけれど、日本人監督・諏訪敦彦のパートの短い時間でじわっとくるいい一編でした。日本人の作品にジュリエット・ビノシュが出ているだけでもなかなか感動だったけど、ウィレム・デフォーの使い方も絶妙でよかったです。

あとは「そして、ひと粒のひかり」のカタリーナ・サンディノ・モレノが久々に見られてうれしかったウォルター・サレス編もよかったし、全く知らなかった南アフリカノオリヴァー・シュミッツという監督のパートもよかった。

とにかく外れのほとんどなく、かなりお得な映画でした。

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パフューム ある人殺しの物語

独仏スペイン合作

監督:トム・ティクヴァ

出演:ベン・ウィショー ダスティン・ホフマン アラン・リックマン レイチェル・ハード=ウッド

18世紀のフランスで、人並外れた嗅覚を持ち、究極の香水を作るために若い女性を次々と殺していく(若い女性のエキスで香水を作る)男のお話。

欧米で大ベストセラーになったサスペンス小説の映画化で、スピルバーグやスコセッシも映画化権の獲得に競ったらしいけど、結局「ラン・ローラ・ラン」(見てないけど)、「ヘヴン」(クシシュトフ・キエシロフスキの遺稿の映画化)のドイツ人監督トム・ティクヴァの手で映画化された。

処女を殺して香水のエキスを集めるという、ひとつ間違えばバカバカしくみえてしまうお話をトム・ティクヴァ監督は重厚で丁寧に、そして不気味に作り上げ、最後まで見るもののテンションを落とさない作品に仕上げている。

殺人者でありながら純粋な感情しか持ち合わせない無口な主人公のかわりにジョン・ハートによるナレーションは淡々とこの世界の雰囲気を盛り上げ、なにより中世のパリやフランスの街を描く美術が素晴らしくよく、それから闇の使い方がとても上手く、上等なサスペンスになっている。ラストのエエ~っ!?といった展開もなんとなく受け入れられてしまう、テクヴァ監督の手腕にはちょっとビックリ。

「24」のトニー・アルメイダ似の殺人者の主人公を演じるベン・ウィショーというイギリス人俳優地味で不気味な役に溶け込んでいて、感情移入できるはずもない特異なキャラクターの行動ひとつひとつにだんだん惹き込まれていく。

脇を固める豪華な名優も控えめだけどすごく、主人公の香水の調合の師匠役のダスティン・ホフマンは異様な緊張感の続く物語をホッと緩和させてくれる貴重な役を軽妙に演じていてやっぱりさすがといった感じ。アラン・リックマンも相変わらず渋い。

そして、主人公の最後の標的となる美しい娘役のレイチェル・ハード=ウッドは後でプロフィールを見て15歳と知って超ビックリするぐらい、妖艶で美しい。(この監督は赤毛の女性をとても美しく撮っている)

とにかくクライマックスにはちょっと引いてくまうぐらいの展開が待っているものの、納得というか逆にちょっと感動も覚えるぐらい映像は美しく、統一感のあるなかなかの映画でした。(見る前のイメージよりも全然良かった!)

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2007年3月21日 (水)

ラストキング・オブ・スコットランド

米映画

監督:ケヴィン・マクドナルド

出演:フォレスト・ウィティカー ジェームズ・マカヴォイ ケリー・ワシントン ジリアン・アンダーソン

シブい脇役という印象の強かった(クリント・イーストウッド監督の「バード」は残念ながら見ていないんで)、黒人の演技派俳優フォレスト・ウィティカーが残虐で有名なウガンダのアミン大統領役を演じ、アカデミー主演男優賞を獲っちゃった作品。

「グッドモーニング・ベトナム」とか、「フェノミナン」とか、主役だったジムジャームッシュの「ゴースト・ドッグ」とか、悪役だった「パニックルーム」でさえ心の優しい役がピッタリはまっていて、それだけに歪んだ狂人であるアミン役は迫真のド迫力でありながら、繊細な心の揺れなんかも細やかに演じていて、オスカーとったのもなるほどと納得させられます。

で、お話は最初はアミンの主治医となり側近となっていくスコットランドの青年医師の視点で、最初はカリスマ的な指導者だったアミンが次第に恐怖の独裁者になっていく姿をジワジワ盛り上げて描いている。

もっと政治的というか伝記的な映画かと思って見にいったんだけど、見終わった後、権力を持つ恐怖の人物に惹きつけられつつも巻き込まれていく人を描くサスペンス映画だったという印象が強かった。特にラストにかけて。

単なる好奇心からドンドン深みにはまっていく医師役のジェームズ・マカヴォイ(「ナルニア国」のヤギみたいな人だったらしい…)は、恐れを知らない不敬な若者が次第に本当の恐怖に怯える役を上手く演じている。この人のうまいビビリ方がウィティカーのアミンの狂気を更に際立たせている。

当時「食人大統領」という映画まで作られた(そんな記憶が)アミンだけど、ウィティカーの演じるアミンはただ訳の分からない悪人を怖そうに演じているだけではなく、恐怖によってジワジワと狂気にハマっていく弱い人間という一面を影に潜ませながら演じていて(そう見えた)、アミンが変貌していく姿には怖いながらも引き込まれていきます。

とにかくシンプルだけど「濃い」映画でした。

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2007年3月19日 (月)

アンフェア the movie

日本映画

監督:小林義則

出演:篠原涼子 江口洋介 椎名桔平 加藤雅也 寺島進 濱田マリ 大杉漣 成宮寛貴

篠原涼子扮する女刑事「雪平夏見」が主人公の連続テレビ番組の映画化。篠原涼子のかっこいい刑事姿が評判だったけど、それにつられてついついテレビシリーズも見てしまって、スペシャルドラマまで見ちゃったけれど、途中からドンデン返しが売りになり、身内が必ず黒幕というパターンになってしまって、逆に「またかい?」という気に… 割と面白かったのは西島秀俊が篠原に撃ち殺されるあたりぐらいまで。

今回の映画もドンデン返しというか犯人探しが売り中の売りになっちゃってる。登場人物みんなが怪しいみたいな作りにしちゃってるんで、篠原以外の登場人物の動きが中途半端になってしまい、警察ドラマとして大切なひとりひとりのキャラがあんまり立ってこない。

でもって東京都民みんなを殺せちゃうバイオテロっていう設定が浮世離れしていて、全然緊迫感がないし、ドンデン返しのために作られたストーリーと展開はアラというか矛盾ばっかしだし…アクションもグダグダだし…でもまあ篠原涼子がかっこいいんでなんとなく許せちゃうってかんじの映画(?)。

成宮寛貴なんか何で出てきたのか分かんないキャラだけど、元からいた加藤雅也とか寺島進なんかはいいきゃらなのになんかもったいない感じが。「踊る~」みたいに加藤雅也を主役にしてもう1本作ってみても面白いんじゃないかと思うんだけど…(もうちょっと丁寧に)

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2007年3月18日 (日)

輝ける女たち

仏映画

監督:ティエリー・クリファ

出演:ジェラール・ランヴァン カトリーヌ・ドヌーヴ エマニュエル・ベアール ミュウ・ミュウ ジェラルディ・ペラス

半裸の女性たちがステージの上できらびやかに踊り、エマニュエル・ベアールがステージで妖艶に歌う、今年のフランス映画祭のオープニング作品としての華やかな予告編から受ける印象とはちょっと違い、家族ひとりひとりを淡々と追いかけた落ち着いた映画(出ている人は十分華やかだけど)でした。

フランスのニースにある伝統的なキャバレーのオーナーが死に、離れ離れになっていた家族が集まる。それぞれに確執や秘密を持ちながら、上手く相手との関係を築けなかった家族のそれぞれが、キャバレーをまかされ(またはまかされず)、その運営を中心にそれぞれの関係を再構築していくといったお話。

いきなりの刺激的なステージシーンなんかはさすがフランス映画だなあと思わされ、かカトリーヌ・ドヌーヴやエマニュエル・ベアールなんていうフランスの大女優が競演していたりと、大人のフランス映画としてはとても贅沢な作品なんだろうけど…

展開がスローというか、いったいそれぞれが何をどうしたいのかがあんまり見えず、「う~ん…」とついていけないまま、いつの間にか映画が終わってしまっていた。この手の映画を見るにはまだまだ子供だったということなのか、フランスの大人たちにとって名作でも日本人向ではないのかよく分からないけど、正直ギブアップでした。

もうちょっと精進しなければ…

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デジャヴ

米映画

監督:トニー・スコット

出演:デンゼル・ワシントン ポーラ・パットン ヴァル・キルマー ジム・カヴィーゼル

凄い!はっきりいって今年No.1の大傑作といっていいぐらいメチャメチャ面白かった!

職人監督のトニー・スコットの映像も、名優デンゼル・ワシントンの演技も最高だけど、とにかく脚本というかストーリーが凄い。サスペンスとSFとアクションとラブ・ストーリーが見事に交じり合って見た事もない映画になっている。

その内容には「マトリックス」を見た時以上の驚きと衝撃を覚え、1シーン1シーン興奮している自分が分かるぐらいクギ付けにされてしまった。

ニューオリンズのミシシッピー川を運行するフェリーが爆発炎上し、大勢の犠牲者を出す。(冒頭のこの爆発シーンがハンバじゃない) この捜査には警察、FBI等様々な機関が捜査を進めるが、その中でATF(アルコール・タバコ・火器局)の捜査官ダグ・カーリン(デンゼル・ワシントン)も捜査のために現場にやってくる。そこで卓越な頭脳によって捜査を進めるうちに…これ以上説明するともうネタバレになってしまうのでなかなか説明に苦労するけれど、ひとつ言えるのは予告編やCMではこの映画の魅力はこれっぽっちも表現できてなく、とにかく見なければ分からない凄い内容。

複数のジャンルを濃縮しているにもかかわらず、それぞれのジャンルの中でも高いレベルに位置できる作品であり、特にあるジャンル(TS物としか…)では頂点に立つ作品だと私は思います。

「トップ・ガン」以降、アクション・サスペンスを中心とした娯楽映画で高い水準のものを作り続けてきたトニー・スコット監督は、この奇抜なストーリーを、軽快なテンポでそれでいて独特の光加減による重厚な映像により、職人技を発揮している。とくにハリケーンの傷も癒えていないニューオリンズの町並みのレトロな雰囲気が斬新な内容に落ち着きを与えてくれている。

そしてアカデミー賞俳優デンゼル・ワシントンがいつにも増してカッコよくて上手い。アカデミーをとった「トレーディング・デイ」は悪役だったけれど、冷静で頭脳明晰でありながらも正義感の塊みたいな捜査官とか刑事とかをやらせたら、人種に関係なくこの人ほど似合う人はいないけれど、今回は特にすごくいい! トニー・スコット監督とは「クリムゾン・タイド」「マイ・ボティーガード」をやってて息もピッタリだし。

そして、ヒロインというか重要な女性役のポーラ・パットンはほとんど新人ながらもその美しさには目を見張るぐらいで、これからちょっと要チェック。デンゼルとこの人の存在があって、この映画も命が宿ったって感じです。

あとちょっと太めになっちゃったヴァル・キルマーも、太った分なんか愛嬌が出てきた感じで、いい味だしてました。

内容については説明しちゃうとホントに面白さが半減してしまうけれど、ラストのラストまで驚きと感動が詰まっていて目が話せないとにかく凄い作品。その独創性と完成度で個人的にはアカデミー賞あげてもいいと思うぐらいです。(ドンパチが多すぎて全くの対象外だろうけど…「羊たちの沈黙」の例もあるし…)

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グアンタナモ、僕達が見た真実

英映画

監督:マイケル・ウィンターボトム マット・ホワイトクロス

出演:アルファーン・ウスマーン ファルハド・ハールーン リズワーン・アフマド アシフ・イクバル ローヘル・アフマド シャフィク・レスル

イギリスの俊英マイケル・ウィンターボトム監督の最新作であり、アメリカのアフズニスタン侵攻と、テロリスト捜索という「正義」の名のもとに行われる力によるルール無視の非人道的捜査の犠牲になった無実の若者たちの悲劇をドキュメンタリータッチで描いた究極の社会派問題作。

ウィンターボトム監督の作品は、ラブ・ストーリー、歴史もの、音楽もの、SFと様々でいつも驚かされるれけど、「ウェルカム・トゥ・サラエボ」「イン・ディス・ワールド」といった世界の紛争の影響を受ける人々を描く社会派作品では真実に迫るインパクトが強い。特にパキスタンの少年たちが命がけでのイギリスへの亡命の旅を描いた「イン・ディス・ワールド」は無名の少年たちの視点で現地の言葉ばかりで、手持ちのデジタルカメラで撮影した映像のリアルさと実際に起こった事件の衝撃度が強く、そんな中で懸命に生きる少年の姿に心を打たれる印象的な映画だった。

「グアンタナモ」というのは、キューバにある米軍基地で、9.11以降アルカイダ関連のテロリスト容疑のある人々が収容されているところの名前。イギリス国籍を持ちながらも、パキスタン系で、アメリカのパキスタン侵攻時にその場に居合わせたためにテロリストの容疑をかけられて収監され、2年以上拷問ともいえる取調べを受け続けた、実在の無実の若者たちを描いている。

淡々と事実だけを描くドキュメンタリータッチの映像は「イン・ディス・ワールド」の手法に似ているけれど、今回はそれに実際のその若者たちのインタビュー映像を挿入し、彼らの言葉に忠実に映像化されていることが分かる。

とにかく、リアルに描かれる戦場や収監施設や米軍兵たちによる拷問まがいの取調べのリアルさにはおどろかされ、シーンがすすむに連れ、デタラメでありつつ圧倒的な力により一個人を追い詰めていく恐怖に戦慄するばかり。

そんな非道い状況をリアルに描かれている問題作でありつつも、そんな状況に最後まで屈せずに、前を向いて生きようとする彼らの姿には感動をも覚え、また一方的なハドい状況の中でも米兵とのちょっとした会話なんかも細やかに描く内容には、ウィンターボトム監督の手腕はすごいなあと感心させられる一作でした。

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ナイトミュージアム

米映画

監督:ショーン・レヴィ

出演:ベン・スティラー ロビン・ウィリアムズ カーラ・グギーノ オーウェン・ウィルソン スティーヴ・クーガン

夜になると博物館のすべての展示物、全身化石のティラノサウルスやら猛獣たちやら歴史上の人物やらが動き出して大騒動になる、CG満載のハリウッドの娯楽大作だけど、これが見事なほど娯楽に徹していて、素直にかなり面白い!

素直の笑えるコメディ俳優としては多分アメリカではNo.1と思われるベン・スティラーは、ここでもトラブルに巻き込まれるダメなパパ役を自然に演じている。そのベン・スティラーが仕事を転々としてやっとありついた職が博物館の夜間警備員。ところが、夜になると展示物が動きまわり、追い掛け回されたりと、散々な目に合わされながら、息子との関係を強めたり、悪者から狙われる博物館の秘宝を守ったりといった大冒険を繰り広げるといった笑いと感動がつまったファミリー向映画。

ファミリー向とはいいつつ、「ピンク・パンサー」の監督によって作られたこの作品は、特殊効果を多用しながらも間も絶妙で、単純ながらも飽きさせない構成とストーリーで、最後の最後ので楽しめる。

役者も有名無名、新旧かかわらず作品にしっくり馴染んでいて、素直に入っていけ、特にロビン・ウィリアムズはベン・スティラーのサポート役にまわりつつも、しっかり個性も見せつけ久々によかったし、ベン・スティラーの名優でもあるオーウェン・ウィルソンと英俳優スティーヴ・クーガンの米英コメディ(もできる)俳優コンビも小さい役ながらいい味を出している。

CGとか特殊効果ばっかりでスカスカの映画も多いけれど、これはホントに見る人の側にたったエンターテイメントになってて(アメリカの人には歴史の勉強にもなってるみたいで)、あんまり深く考えずに単純に楽しむにはいい映画でした。

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今宵、フィッツジェラルド劇場で

米映画

監督:ロバート・アルトマン

出演:ギャリソン・キーラー メリル・ストリープ リリー・トムリン ケヴィン・クライン ウディ・ハレルソン ジョン・C・ライリー リンジー・ローハン トミー・リー・ジョーンズ

アメリカ映画界の大巨匠、といってもハリウッドの商業的映画とは一線を画すような斬新な作品を作り続けてきたロバート・アルトマン監督が昨年の11月20日にガンによって死亡したというニュースを「めざましテレビ」で見たとき、朝の出勤の身支度をしている最中だったけど、ショックと驚きで2・3秒動きが止まってしまった。(たしか東京の恵比寿ガーデンシネマがオープンしたときの第1回作品だったと思う「ショート・カッツ」は、複雑な群像劇を登場人物ひとりひとりを際立たせながら、見事にひとつの世界を描き、感動と衝撃を受けたもんでした。)

その監督が最後に撮った遺作がいよいよ公開された。(というか、まだまだ新作を見ていたかったので、とうとう公開されてしまったという気持ちも)最後の作品であるにもかかわらず実験的、だけど成熟した大人の映画として、心に残る印象的な映画でした。

映画は、アメリカ全土で長寿で根強い人気を博するラジオのライブ番組「プレーリー・コンパニオン」という作品の企画者でもあり、人気パーソナリティーであるギャリソン・ギーラーという人の企画で、この「プレーリー・コンパニオン」のライブの様子を映画にしていまおうという内容。

この番組は、観客を入れたホールで行われる長時間にわたる音楽(カントリーが中心)などのショーを、ラジオでライブ中継するというもので、映画゛は番組の構成はそのままに、番組はアメリカ全土の人気番組から、地方局(ミネソタ州)だけの放送で、親しまれながらも最終回を迎えるという設定に変え、ギャリソン・キーラーはパーソナリテイーとして本人役で出演している他は、主要な歌手たちをメリル・ストリープやウディ・ハレルソンといった俳優たちを起用し、ステージや控え室をドキュメンタリータッチで描いていくといった内容。

このステージの表裏で歌手たちやスタッフたちが目まぐるしくも活き活きと動き回るだけでなく、ケヴィン・クライン扮する探偵もどきの飄々とした警備主任や「サイド・ウェイ」のヴァージニア・マドセン扮する謎の女なんかが絡んできて、コメディとサスペンスの要素が入り混じっていながらも、あたたかい雰囲気につつまれた映画だった。

複数のカメラでひとつのシーンを同時に撮影するという、ドキュメンタリータッチでライブ感覚たっぷりなんだけど、ひとつ間違ええたらグタグタになりそうな手法を見事に使いこなす監督の手腕にも相変わらず驚かされるとの同時に、企画・脚本もしたギャリソン・キーラーというおじさんの芸達者ぶりも楽しかった。

ショーの終わりや人生の終わりといった何かの終わりをを前向きに受け止めようといったメッセージも込められたあったかい作品であり、番組の中盤にある「老人の死は悲劇じゃない」といったセリフは、もしてかしたか死を予感していたかもしれない監督の観客への言葉にも聞こえ、染みました。

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絶対の愛

韓国映画

監督:キム・ギドク

出演:ソン・ヒョナ ハ・ジョンウ パク・チヨン

世界で高い評価を受ける韓国の奇才キム・ギドク監督の最新作。ここ1年ぐらいで「うつせみ」「弓」に続いて本作と立て続けに作品を発表するペースにも驚かされるれど、どの作品も衝撃的で先鋭的なクオリティの高いものばかりで驚かされる。

これまでの作品での主人公たちは社会に順応できなかったり、社会との関係を断絶しているアウトサイダーが多かったけれど、今回は都会で洒落た生活を営む男女が主人公で、一瞬他の「韓流」と呼ばれる娯楽映画かとも思える設定。

そして、これまでのあまり言葉を発せず、その奇異な行動等で観客を引き込んでいった主人公たちと違って、今度の主人公たちはベラベラとよくしゃべり、アクションもオーバーで、現代の普通の社会人といった感じで、キム・ギドク作品としてはなんとなく雰囲気が違う感じで違和感を感じながら見ていたけど…途中かやっぱりギドク作品といった濃い内容になってくる。

主人公はどこにでもいそうな普通のカップルだけど、女のほうがとにかく男にベタ惚れで、メチャメチャ嫉妬深い。そして男の愛が十分でないと感じ、それは自分の顔や体(それだけでない彼女という存在そのもの)に飽きているのではと思い始める。

そして、精神的に追い詰められた彼女は整形手術を受け、顔を変え、全くの別人となって男の前に現れる…といったお話。

最初は、サイコではありつつも、これまでのギドク映画の登場人物と違い、どうでもいいことで悩んでいる自分勝手で、単なるエキセントリックなだけな女に見えてしまうのと、なんとなくいい暮らしをしている頼りない男に感情移入が出来ず、う~んと思って見ていたら、女の整形後として現れる女優はなかなか上手く、最初は可愛らしく爽やかな印象をあたえつつ、どんどん狂っていく様子が美しくて怖くてなかなか良く、不条理ながらも、サスペンスタッチのラブストーリー的な内容に引き込まれていった。

「整形」というとなんかチャチい印象だけど、そんな表面的なことだけでなく、愛というものや、アイデンテティというものが絶対なのか、永遠なのかということについてググッと突いてくる尖った映画じゃないかと思います。

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2007年3月 9日 (金)

市川崑物語

日本映画

監督:岩井俊二

出演:市川崑

90歳を超えてもなお、一線級で現役を続ける大巨匠・市川崑監督の足跡を俊英・岩井俊二監督が独特のタッチで綴るドキュメンタリー映画。

古い写真の被写体と背景を微妙にずらしながら立体的に手法(押井守の「立喰師列伝」のよう)とほんのわずかな再現映像(でも味のある)のほかは、とにかく「文章」をひたすら読まされる映画。(途中から市川映画の映像が差し込まれるけど)

ところがこの文章が市川映画独特のタイトルロールのようでもあり、「リリィ・シュシュ~」でも多用していた表現の発展形のようでもあり、テンポよく、巨匠の人生の要点を流れるように浮かび上がらせてくれる。

巨匠の足跡は、戦中戦後の日本の歴史でもあり、日本映画の歴史でもあり、波乱万丈ではないものの、魅力的であり、波のように次々に紹介される作品群とともに、どんどん惹きつけられて行った。

特筆すべきは、この映画の核ともいえる脚本家でもある市川監督の妻・和田夏十との関係。岩井監督も2人の関係に心酔していることがよく分かるぐらい丹念に濃密に表現されている。この素晴らしい女性の足跡と、所々で挿入されるやさしい目が印象的な写真によって良質で感動的なラブストーリーも味わうこともできる。

そして後半、「犬神家の一族」(最初のやつ)が紹介されてから、映画少年だった岩井俊二の市川映画体験談も交じり合ってきて、市川崑の物語とともに岩井俊二の映画に対する感覚も少し味わえる。岩井監督の解説によって「犬神家~」がいかに傑作であるかを改めて知ることができた。(他の市川作品ももちろん)

市川作品をまだ10本程度しか見ていない自分としては、これまでの作品全部見たくさせられる小気味いいドキュメンタリーでした。

幻となったという市川監督と岩井監督による「本陣殺人事件」もあったと知らされ、たまらなく見たくなってしまった。とにかく今後も元気に少しでも多く映画を撮り続けてほしいです。

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2007年3月 4日 (日)

ゴーストライダー

米映画

監督:マーク・スティーヴン・ジョンソン

出演:ニコラス・ケイジ エヴァ・メンデス ピーター・フォンダ ウェス・ベントリー サム・エリオット

「スパイダーマン」「Xメン」などのマーベルコミックスのひとつで、バイクを乗り回す全身炎に包まれたガイコツがヒーローの異色のマンガの映画化で、アカデミー賞俳優ニコラス・ケイジがガイコツに変身する主人公を演じている。

悪魔メフィストは自分の手足となって働く人間と契約して、「ゴーストライダー」としての力を授ける。主人公ジョニーも父親の命を助けるために悪魔に魂を売り、ゴーストライダーになってしまう(本人は知らないけど)。ある日、メフィストに対立する別の悪の集団が現れ、ゴーストライダーになり、恋人を守りつつ、悪と戦うって感じのお話。

見た目は悪役で、とても正義のヒーローには見えない怪人なんだけど、不気味だけど妙にかっこよく、ニコラス・ケイジも楽しんで演じてるって感じでインパクトも強くてけっこうよかった。エヴァ・メンデスのなんとなく安っぽい感じのヒロイン役が作品全体のトーンにあってて、なかなかよかった。

悪役も「イージーライダー」ピーター・フォンダも久々で不気味な魅力を出している他、もうひとりの悪魔で実際の敵役となる悪いヤツに「アメリカン・ビューティー」の不思議な少年役だったウェス・ベントレーだったのにはビックリ。こっちはちょっと微妙だったけど…。

ゴーストライダーへの変身とかバイクとかビジュアルも結構よかったけど、ゴーストライダーになるまでがけっこう長くてダレちゃうのと、敵が弱っちすぎるのとで、微妙に盛り上がりに欠けるような気も… アメリカじゃそうとうヒツトしているみたいなんで、続編が出来ればもうちょいブッとんだ映画になるような気も(ニコラス・ケイジ次第だと思うけど)。

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さくらん

日本映画

監督:蜷川実花

出演:土屋アンナ 安藤政信 菅野美穂 木村佳乃 夏木マリ 永瀬正敏 椎名桔平

マンガを原作に、蜷川幸雄の娘で写真家の蜷川実花が、江戸時代の遊郭を舞台に土屋アンナ扮する遊女の葛藤と成長を描く豪華絢爛な時代劇。

そのルックス、行動や発言によってカリスマというか他にない存在となっているモデルの土屋アンナだけど、役者としての存在感もただものではなく、「下妻物語」のヤンキー娘にはビックリするとともにググっとひきこまれたし、ちょっとしかでていないけれど、「茶の味」でも主人公を虜にする静かだけど、キラッと光るヒロインもなかなかよかった。

その土屋アンナが豪華絢爛な遊女役で主役をはるっていうんで、これだけでも見もので、予告編も他の遊女を蹴り倒すシーンなんかもあり、かなり期待は高まったんだけど…

さすがに蜷川監督の映像はビジュアルはかなり凄く、土屋アンナをはじめとする女優陣も映えていたんだけど、ちょっと内容というかストーリーが単調で、微妙な印象でした。土屋アンナ扮する主人公も威勢がよくでいいキャラなんだけど、なんかグズグズ泣き言が多いというか、後半はちょっと飽きてくるというか…

ちょっとジャンルは違うけど、時代物で、時代考証も無視したビジュアルと音楽で迫るという点では「マリー・アントワネット」のほうが数段上と感じました。

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日本映画

監督:黒沢清

出演:役所広司 葉月里緒菜 小西真奈美 伊原剛志 オダギリジョー 加瀬亮

ホラー(系)の監督として、娯楽性と芸術性を絶妙なバランスで表現できる日本でも稀有な存在である黒沢清監督の待望の新作。

これまたメチャメチャ期待の高かった前作「LOFT」が若干消化不良気味だっただけに、今回はちょっと期待度を下げて見に行ったけれど、これがシンプルでかなりよかった。

お話は、役所広司演じる刑事が湾岸のある殺人事件を捜査していくうちに、その被害者と思われる女性の幽霊につきまとわれ、しかも自分がその容疑者ではないかとの疑問を抱えながら、連鎖する事件と幽霊の謎をつきとめていく…といったお話。

幽霊ものという意味では「LOFT」と同じだけど、今回のほうが洗練されているというか、幽霊としてしっかり怖いながらも、主張もちゃんとあり、ビジュアル的にも面白く、現代の怪談話として、単純に怖くて面白い。とにかく、目ん玉見開きっぱなしの葉月里緒菜がメチャメチャ怖い!

役所広司のシリアス演技は相変わらず黒沢清映画のカラーにピッタリはまり、映画全体を自然にグイグイ引っ張っている。今回は特にシンプルな内容なので、特に主役の人の力量にかかっている訳で、やっぱりさすがと思わせられる役者さんでした。

オダギリ、加瀬といった傑作「アカルイミライ」のメンバーも出ていて、黒沢清ファンにはオイシイ映画にもなっている。

ただ、次は是非幽霊ものじゃない人間ドラマがみたいかなと…

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2007年3月 3日 (土)

ボビー

米映画

監督:エミリオ・エステベス

出演:アンソニー・ホプキンス フレディ・ロドリゲス ウィリアム・H・メイシー シャロン・ストーン デミ・ムーア マーチン・シーン ヘレン・ハント ローレンス・フィッシュバーン イライジャ・ウッド

ジョン・F・ケネディの弟のロバート・ケネデイ上院議員(通称「ボビー」)は、1968年6月5日、大統領予備選の最中、ロサンゼルスのホテルで暗殺される。

その同じ日にそのホテル「アンバサダーホテル」に居合わせた20数人の人達の一日を、名優アンソニー・ホプキンスを初めとして新旧の豪華俳優陣で描いた映画。「有頂天ホテル」をシリアスで政治的にしたような映画。

監督はあの俳優のエミリオ・エステベスで、かつての青春映画や「張り込み」みたいな軽~い感じの演技からは想像できないぐらい、政治的なメッセージと濃厚な内容だったのでビックリした。演出もオーバーな表現は極力抑え、ブライアン・デ・パルマ並の長回しを使ったりして、ボビーの昔の映像と上手く合わせながら、たくさん出ている俳優達をそれぞれの出番は少ないながらも、いい味を出している。おまけに脚本も書いているっていうんでさらにビツクリ。

アンソニー・ホプキンス、エミリオのお父さんマーチン・シーンはもちろんだけど、シャロン・ストーンが老けた姿を隠そうともせず、かなりいい味を出している。「氷の微笑2」の超若作りの記憶が新しいだけに、かなり新鮮だった。同じく久々のデミ・ムーアとの競演シーンは必見。

あと、ローレンス・フィッシュバーン、ヘレン・ハント、ウィリアム・H・メイシーなんかもいい味出しているし、イライジャ・ウッド、リンジー・ローハンといった若手も意外にいい味出している。特にウエイトレス役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドっていう女優はこれから要注意。アシュトン・カッチャーとかのドラッグのシーンは微妙だけど…

映画の冒頭とラストにボビーの演説が挿入され、ベトナム戦争からの撤退を掲げて大統領戦に挑み、アメリカの希望とされてきた彼の人物像がとても素晴らしく、感動を呼ぶとともに当時の状況と今イラク戦争に悩まされているアメリカの状況が重なり合い、色々考えさせられる。…だけど、ボビーも選挙の演説用に作ったコメントなんで、正しい内容ばかりであることは当然で、それで映画全部を締めくくっちゃうってのはちょっと微妙な印象だっでした(当然、彼が生きていれば…とは考えさせられるけど)。

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2007年2月21日 (水)

となり町戦争

日本映画

監督:渡辺謙作

出演:江口洋介 原田知世 瑛太 岩松了 余貴美子

同名のベストセラー小説の映画化。

架空の日本の現代、とある地方の町がある日突然となりの町と戦争をすることになった。その町に住むサラリーマン(江口洋介)が訳の分からないまま、偵察員に任じられて、役場の戦争推進室の職員の女性(原田知世)と偽装結婚をし、となり町に偵察のために移り住む…といったお話。

最近の江口洋介はけっこういい味出していると思うし、原田知世に至ってはメチャメチャ大ファンなんだけど…この映画だけはダメだった。というより「最低の映画」だった。

渡辺謙作という監督は以前、永瀬正敏と宮崎あおい主演の「ラブドガン」という映画を撮った人で、その映画も相当不満足度が高かったんだけど、今回は割と有名な原作もあるし、キャストをみてもそうそう変なものにはならないと思っていたんだけど…

戦闘シーン等は一切排し、セリフだけで戦争が起こっている状況を伝え、その不条理な自状況に戸惑う主人公にジワジワ戦争の感覚を染み込ませていくというコンセプトはたぶん原作の通りなんだろうけど、全く伝わってこない。

町同士が戦争するというありえない状況を用意し、その状況に戸惑う主人公を、自分たちは戦争には無縁と考えている今の日本人に置き換え、もっと「戦争」というものを感じ、考えさせるという意図があるのだろうけど、肝心のその描き方が上っ面だけどうか。おちょくっているとしか思えない内容であり、戦争の犠牲者たちを完全に冒涜しているとしか思えない。

シュールな内容は別に悪いしは思わないし、シュールな表現によって難しい内容を婉曲的(ときには直接的)に表現したり、シュールな表現によって主要なテーマを隠しつつも徐々に明らかにしていく等いろんな手法があるんだろうけど、この監督は「ラブドガン」のときもそうだったけど、シュールに逃げているとしか思えない。

こんな映画だけど、江口洋介と原田知世の2人はそれぞれがんばって演じているのが分かる。特に原田知世は映画の矛盾を全部背負いながらもも独特の透明感は失わずにいるだけでも、見る価値は少しはありました。戦争という「業務」に従事せざるを得ないという女性の矛盾と、こんな映画に出てしまっているものの一生懸命やらなければならないという矛盾が入り混じって見えてしまったのは私だけでしょうが…

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2007年2月19日 (月)

あなたになら言える秘密のこと

スペイン映画

監督:イザベル・コイシェ

出演:サラ・ポーリー ティム・ロビンス ハビエル・カマラ ジュリー・クリスティ レオノール・ワトリング

感動作「死ぬまでにしたい10のこと」と同じく、スペイン映画界の奇才にして巨匠のペドロ・アルモドバルが製作総指揮をつとめ、イザベル・コイシェが監督した、スペインの資本・スタッフによる英語の映画で、前作でヒロインを演じたサラ・ポーリーもまた主人公を演じている。邦題の日本語が何か変な気もするけど、配給会社が「こと」シリーズにしたいのも分かる気が…

どっかの国(英語圏)の何かの工場で、無遅刻無欠勤で誰とも話さず黙々と働き、工場での昼食も帰ってからの夕食も全く同じものしか食べず(チキンと米とリンゴのみ)、孤独に生きている謎の多そうな主人公が、なかば強制的に1ヶ月の休暇を与えられ、とある街にやってくる。そこには海上に石油掘削の基地があり、その基地で起きた火災により重症を負った男性を世話する看護婦が必要とされ、看護婦経験もある彼女がその役を引き受け、その男性がいる基地に移り住むことにした。

火災で全身に火傷を負い、目も見えなくなった(一時的に)患者をティム・ロビンスが演じている。とんでもない秘密を抱え、硬く心を閉じている彼女と、明るく振舞いながらも心に深い傷をもった患者が次第に心を通わせ、秘密を打ち明けていく様子を、基地という閉鎖された空間で、他の少ない職員たち含めた淡々とした時間の流れの中で静かに、ジンワリと描いている。

前作やアトム・エゴヤン映画のような芸術的なのだけでなく、「ドーン・オブ・ザ・デッド」でさえキリッとした気品を漂わせていた若き名女優サラ・ポーリーの演技はここでもさすがで、クライマックスまで謎を引きずりながらもその表情や仕草に心を動かされてしまう。演技もいいど、この人のハリウッド女優にはない透明感はメチャメチャ貴重!(この人はカナダの人らしいです)

映画の大半をベッドの上で身動きできない役のティム・ロビンスもさすがの名演技で、壊れそうに繊細なサラ・ポーリーを動けないからだでしっかり包み込んでいる。

アルモドバルの大傑作「トーク・トゥ・ハー」の主人公だったハビエル・カマラや同じく「トーク・トゥ・ハー」の眠れるヒロインで「死ぬまでに~」にも出ていたレオノール・ワトリングとか、アルモドバル映画でも顔だった人達が要所で出ていて、いい味をだしてます。

主人公の秘密が凄すぎて、ある意味「ズルい」と感じなくもなかったけど、サラ・ポーリーとティム・ロビンスのふたりによって自然とリアルに感じさせられ、衝撃と感動を受けます。見る人はあんまりパンフとか見ないで見たほうが絶対いいです!

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2007年2月18日 (日)

Gガール 破壊的な彼女

米映画

監督:アイヴァン・ライトマン

出演:ユマ・サーマン ルーク・ウィルソン アンナ・ファリス エディ・イザード

「ゴースト・バスターズ」のアイヴァン・ライトマン監督によるヒーロー物のパロディ的なコメディ映画。

ルーク・ウィルソン(「ロイヤルテレンバウムス」とか「キューティ・ブロンド」とか)扮する平凡な男が地下鉄で声をかけて付き合うようになった女性(ユマ・サーマン)が実は「Gガール」という正義の味方(ほとんどスーパーマンみたいな感じ)だった。最初は良かったけれど、嫉妬深くて、エキセントリックな彼女に嫌気がさし、別れようとしたことろで、更に彼女は逆上し、スーパーパワーでいろいろ凄い嫌がらせを受けるようになり、悪玉一味まで出てきてどんどんドタバタしてくるみたいなお話。

設定は突飛だけど、ベテランのコメディ監督の演出にはどこかホッとするものがあり、前作の「エボリューション」のほうがかなりハチャメチでスケールも相当大きかったのに比べて、規模は小さいけれどコンパクトにまとめられていて安心してゆったり見れる映画でした。

正直もうちょいスペクタクルシーンとかガツンとあったほうが楽しめたんだろうけど(アメリカではあんまりヒットしなかったみたいで、続編とかもなさそうだし)、アイヴァン・ライトマンが健在だったことを確認できただけでも良かったかなと。

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善き人のためのソナタ

独映画

監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

出演:ウルリッヒ・ミューエ マルティナ・ゲテック セバスチャン・コッホ ウルリッヒ・トゥクール

1984年、東西冷戦下の東ドイツが舞台。当時の東ドイツでは国家保安省(「シュタージ」というらしい)が国民の行動・思想を厳重に取り締まり、国民も多数の人が隣人をシュタージへ密告しあう、暗い時代だったそうで、そんな状況を背景にしたドイツの社会派映画。

主人公はそのシュタージの情報収集のベテラン将校で、上官に命じられて反体制思想を持つ疑いのある劇作家の家を盗聴することとなる。最初はガチガチの体制側で容疑者たちを震えあがらせるほどの情報収集のプロだった彼が、劇作家そしてその恋人である女優を四六時中監視していくうちに、感情に変化が生じ…というような内容。

長い名前の監督さんも、東ドイツ出身らしい俳優さんたちも全然知らなかったけど、抑圧された状況下で、感情表現も最小限ながらもそれぞれに変化していく監視者、劇作家、女優の姿をハデな演出は一切用いず、淡々と、でも恐ろしく、また細やかに描かれていく。

主要キャストそれぞれが上手くそれぞれの役の苦悩や悩みを静かに演じあげている。特に中盤、「レーニンは部下にベートーベンのなんとかいうソナタを聞くのを禁じた。それを本気で聞いた人間は悪人にはなれないから」みたいなセリフの後に劇作家が弾くピアノの曲(「善き人のためのソナタ」)を盗聴器越しに聞いた将校が静かに涙を流すシーンはさすがで、そこから姿勢が変わってくる将校の姿が真にせまってくる。

クライマックスからラストにかけての展開はサスペンス、衝撃、感動が待っており、ほとんど予備知識なしで見て、かなり得した気分にしてくれるいい映画でした。

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ドリームガールズ

米映画

監督:ビル・コンドン

出演:ジェイミー・フォックス ビヨンセ・ノウルズ エディ・マーフィー ダニー・グローバー ジェニファー・ハドソン

3人組の黒人女性ボーカルグループ「ドリームズ」の下積みからサクセスストーリーと確執を描く豪華なミュージカル映画。

アカデミー俳優ジェイミー・フォックスが彼女たちをスターに育て上げるマネージャーを演じ、ビヨンセがグループのメインボーカルでダイアナ・ロスをモデルにしたスターになる女性、そしてエディー・マーフィーがジェームス・ブラウンをモデルにしたみたいなスター歌手を演じている。

予告編を見ていても、全編ビヨンセの歌で押しまくる映画なのかなと思っていたら、最初のドリームズのメインボーカルでルックスの関係なんかでビヨンセにメインを譲ることになるメンバーを演じるジェニファー・ハドソンが圧巻の迫力と上手さでビックリ!菊池凛子には悪いけど、アカデミーの助演女優賞もこの人で決まりじゃないかなと思うぐらいの存在感。

もちろんビヨンセの歌もよく、加えてエディー・マーフィーの上手さにもビックリ。出すぎないまでもしっかり存在感と悲哀を表現していてこっちにもアカデミー賞(助演女優)あげたいぐらい。

ステージ・シーンだけ歌であとは普通のドラマかと思っていたら、日常会話中も歌いだす完全なミュージカルだったけど、R&Bでまとめあげられたソウルフルなミュージカルはシカゴなんかよりもシッカリした満足感があり、ビヨンセを中心としたファッションなんかもメチャメチャよくて思ったよりも楽しめました。

歌は歌わないけど、ダニー・グローバーも久々にいい味出していてよかったです。

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DOA デッド・オア・アライブ

米映画

監督:コーリー・ユン

出演:デヴォン・青木 ジェイミー・プレスリー ホリー・バランス ケイン・コスギ エリック・ロバーツ

たぶん「Xボックス」かなんかのゲームの映画化だと思うけど、格闘家(なぜか女性ばっかり)が謎の島に集められて、トーナメント形式で腕を競うアクション映画。

なんとなく見にいってしまったんだけど、ここまでヒドいとは…。

美女といいつつ、三流のキャパクラ嬢みたいのがギャーギャー騒ぐばっかりの脱力系映画で、90分弱の上映時間が長くて長くて…超苦痛でした。

しばらく今年ワースト1は動かないんじゃないかなと。

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ジョジョの奇妙な冒険 ファントム・ブラッド

日本映画(アニメ)

監督:羽山淳一

出演(声):小西克幸 緑川光 水樹奈々 小山力也 井戸田潤 小沢一敬

週間少年ジャンプに連載されていた「ジョジョ」の第一部ジョナサン・ジョースター編が満を持してというか、何故か今ごろ劇場用アニメとして映画化された。原作者の荒木飛呂彦のデビュー25周年、ジョジョ連載20周年記念的に作られたらしい。

実はジョジョはジャンプ連載時からハマりまくっており、現在の「スティール・ボール・ラン」まで単行本は全部もっているぐらい好きで、特にスタンドで出る前の波紋の初期のころが一番よったと感じていただけに、今回の映画化のニュースには興奮したれけど、なるべく期待しないようにして見に行きました。

これが最悪…

ディオじゃないけれど、まず画力が「貧弱、貧弱ゥ~」で、ちょっとキャラが小さくなるとだれだか分からなくなるし、アクションシーンとかゾンビの描き方とかとにかく脱力させられるばかり。美術(背景)も水溜りだかシミだか分からないレベルの低さで…。

物語構成やセリフも原作の魅力をことごとくそぎ落として、あらすじだけをブツブツ区切りながらなぞるだけで、最後まで見てるのが辛かった。

だれかもっとマニアックな人に(資金を使って)もう一回作り直してくれないでしょうか?

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世界最速のインディアン

ニュージーランド・米合作

監督:ロジャー・ドナルドソン

出演:アンソニー・ホプキンス ダイアン・ラッド アーロン・マーフィー クリス・ウィリアムズ

「インディアン」というのはネイティブ・アメリカンのことではなくて、主人公が乗るバイク「インディアン・スカウト」のこと。

1962年に1920年製のこのバイクを改造し、世界最速記録(1000cc以下のバイク部門)を樹立した実在のニュージーランド人バート・モンローっていう人のお話を映画にしたもので、この人が年金暮らしの63歳だったっていうこともドラマになっている。(その後も自身で記録更新をし、今でも彼の記録は超えられていないそうです)

この実在の人物を演じるのは名優アンソニー・ホプキンスで、年をとっても純粋に夢にかける老人をこれまでになく生き生きと爽やかに演じている。

コツコツと貯めた資金でニュージーランドからレース会場であるアメリカ・ユタ州の塩平原まで旅をしながらいろんな人とのふれあいを描いていく姿は、デビッド・リンチの「ストレイト・ストーリー」にも似ていて、その出会いひとつひとつがあったかくて、アンソニー・ホプキンス演じるバートの人柄がジンワリ伝わってきて、しあわせな気分になれる。

スポーツ(レース)ものというよりも、ロードムービーとしてかなり質の高い作品になっている。

そして後半、いよいよレース会場に着くものの、登録の不備やらマシンの整備やらいろいろありながらようやくレースに臨み、平原を疾走していく姿はなんともカッコよくて感動的。

監督のロジャー・ドナルドソンは「13デイズ」とか「リクルート」とかハリウッドの商業映画の印象が強かったけど、実はニュージーランドで映像作家としての活動を始め、1971年には実際のバート・モンローのドキュメンタリー映画を作っていて、その頃からこの作品の構想を練っていたというだけあって、ハデな大作とは一線を画す、バートの人柄が画面全体から伝わる素朴で爽やかないい映画でした。

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守護神

米映画

監督:アンドリュー・デイビス

出演:ケビン・コスナー アシュトン・カッチャー

「海猿」は映画もテレビドラマも(もちろん漫画も)見たことないけど、たぶんアメリカ版「海猿」的な映画で、沿岸警備隊のレスキュー隊員の活躍と、その養成学校での若者の成長を描いた映画。

ケビン・コスナー扮する沿岸警備隊の伝説的なレスキュー隊員が、救命活動中の事故で同僚を亡くしてしまい、その傷を癒す意味でも一時的に養成学校の教官を命ぜられる。そこでアシュトン・カッチャー扮する生意気な訓練生たちをビシビシ鍛えていくっていうお話。

アンドリュー・デイビス監督は「逃亡者」ではヒットを飛ばしたものの、その後はあんまりパッとしない印象だったし、ケビン・コスナーも最近はあんまりパッとしない感じだったけど、今回の作品はまあまあ楽しめました。

いかにもCGって感じのスペクタクルシーンにはあんまり感じるモンはないけど、出だしのレスキューシーンとかもなかなか良かったし、訓練シーンもCGとか使わずリアルで良かったし、沿岸警備隊ってのが軍隊組織だってのが初めて分かる等、ディテールとかもしっかりしててけっこう感心したけれど、ぶっちゃけストーリが単調で、ちょっと盛り上がりに欠けているような…。ラストにかけての展開はなんかドタバタって感じだし…。

でも総合的には久々に渋くてカッコいいケビン・コスナーが見れる点はよかったです。(アシュトン・カッチャーってのは印象が薄くてビミョウだったけど)

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バブルへGO!! タイムマシンはドラム式

日本映画

監督:馬場康夫

出演:阿部寛 広末涼子 薬師丸ひろ子 吹石一恵 劇団ひとり 伊武雅刀

巨額の債務を抱えて、経済破綻は間違いない日本を救うために、バブル崩壊を食い止めるために1990年にタイムスリップするというドタバタコメディ。

バブル時代に「私をスキーに連れてって」とか「彼女が水着に着替えたら」といった、トレンディで消費意欲をくすぐる映画を製作したホイチョイプロが久々に映画を手がけて、バブルに浮かれまくる日本(東京)をリアルにノリノリに再現している。

あんまり映画として云々いう内容でもないけれど、面白さだけを追求した内容はリッパで、ストーリーもそれなりにあって飽きずに楽しめました。ストーリーよりも飯島直子とか八木昭子とかがメイクで当時そっくりで出てくるほうが面白かったけど。

カメオ出演ではない主要キャストでは、映画をひっぱる広末涼子がスクール水着から芸者姿、エロダンスなどとけっこうハジケちゃっててよかったです。

あと最近はメチャメチャ映画に出ている薬師丸ひろ子もフケ役と昔メイクの両方楽しめて、ふっきれている感じがすごくよかった。

バブル経済とは何だったのかとか考えてたら、あまり楽しめないので(というかそんな硬い話じゃないし)、とにかく頭カラッポにして、バブルノ雰囲気とかボティコンとかのファッションとかを楽しむだけでもいいんじゃないかという映画でした。(個人的には吹石一恵のすごいボティコン姿が見れただけでも得した気分でした)

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魂萌え!

日本映画

監督:坂本順治

出演:風吹ジュン 三田佳子 寺尾聡 豊川悦司 常盤貴子 加藤治子

桐野夏生のベストセラー小説を坂本順治監督で映画化。坂本順治の作品は「どついたるねん」をはじめとして、男臭いイメージが強く、女性が主演の「顔」や「ぼくんち」でも硬派でたくましい主人公が印象的だったけど、今回はこれまでのイメージを覆すやわらかい映画になっている。

主人公は夫が定年を迎える平凡な熟年の主婦で、夫が心筋梗塞で急死した後に愛人と対面することになったり、遺産相続を強引に息子に迫られたりと、生活が一変する。そんして、ちょっとした試練や事件を乗り越え、経験しながら、少しずつたくましくなっていくというお話。

たぶん実年齢よりも少し上の主人公を演じる風吹ジュンがすごくいい!60歳になってプチ家出やら、情事やらと、ちょっとした冒険を重ねて、新たに人生を楽しもうとする女性を細やかに演じている。

その他のキャストも映画に溶け込んでいい味を出しているんだけど、中でも坂本映画の常連でもあるトヨエツがメチャメチャ情けない男を哀しくもコミカルに演じていて、とてもいい味を出している。出番はそんなに多くないけど、あれだけでも「愛ルケ」よりもよかったです。

60歳の女性、それも平凡な主婦を主人公にした映画はなかなかないと思うけど、貴重でありながらも、すごく大事なことを静かにジンワリと見せてくれる映画でした。

あと、cobaの音楽もなかなか良かったし。

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2007年2月17日 (土)

幸せのちから

米映画

監督:ガブリエル・ムッチーノ

出演:ウィル・スミス ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス タンディ・ニュートン

ウィル・スミスがどん底の貧乏生活から子供を抱えながら一流証券マンまでのぼりつめるサクセスストーリーを、実の息子を息子役に迎えて描く、見る前から分かる感動作。

最初から感動を押し付けるような作品はあんまり好きではないものの、実際見るとそんなに恩着せがましいところはなく、サクセスストーリーの部分よりもどん底で苦労する姿がなかなかグッとくる。(サクセスの部分をもうちょっと描いてもいいような気もするけど)

メチャクチャ厳しい競争の中、成功したウィル・スミスの影で落とされた人達もたくさんいるはずなんだけど、そのへんはあんまり気にならない感動作でした。

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どろろ

日本映画

監督:塩田明彦

出演:妻夫木聡 柴咲コウ 中井貴一 原田芳雄 土屋アンナ 瑛太 原田美枝子

手塚治虫の怪奇時代劇漫画を実写映画化。ニュージーランドロケにワイアーアクション(「HERO」とかのアクション監督)、そしてVFXたっぷりの娯楽大作になっている。

監督は「黄泉がえり」の塩田明彦監督で、その流れからいくとあんまり違和感はないけど、宮崎あおい主演(中学生ぐらいのとき)の「害虫」の印象のほうが強く残っており(「黄泉がえり」やった時点でも意外だったのに)、まったく違うジャンルで、逆にかなり新鮮でした。(「害虫」の衝撃度にくらべると、かなりベタになっちゃってるけど)

お話は、架空の戦国時代、中井貴一扮する戦国武将が天下を取るために魔物と取引をした。その取引とはその武将の子供の体48ヶ所を魔物たち(48体)に差し出すというもので、48ヶ所をとられて捨てられた赤ん坊は呪医師に拾われ、怪しい技術で作られた体を与えられ、腕に魔物退治用の刀を仕込まれ、成長し、その体を取り戻すために魔物たちを倒す旅に出るというもの。

その主人公・百鬼丸に扮する妻夫木聡は、なんか顔立ちが手塚治虫漫画にあっていて、アクションもけっこうがんばっている他、目もみえず耳も聞こえない百鬼丸(心で全部感じるらしい)の淋しい感じがででいて、なかなか良かった。

百鬼丸と出会い一緒に旅をするどろろ役の柴咲コウもどろぼうの少年(?)役がなかなか新鮮でした。

でも一番目を引くのは、怪しい武士の奥方役の土屋アンナで、出番は少ないけど、おそろしい魔物役がメチャメチャ印象的で、ハマってました。

ちょっと魔物たちがちゃちいのと、後半の展開がバタバタなのとで、若干の物足りなさも感じないではないけど、これなら続編も見たいかなと。(あと体は24ヶ所残ってるらしいので)

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2007年1月26日 (金)

不都合な真実

米映画

監督:デイビス・グッゲンハイム

出演:アル・ゴア

クリントン政権時代の米国副大統領で、2000年の大統領選でジョージ・W・ブッシュに衝撃的で疑惑の逆転負けを喫したアル・ゴアが地球温暖化に警鐘を鳴らすドキュメンタリー映画。(今年のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされてる)

この人は昔から環境問題、特に地球温暖化問題に力を入れてきた人だそうで、ゴア氏の講演会を映画館で見せられるといった内容。

と言ったら、堅くて退屈そうなイメージが湧くけれど、これが全く想像と違い、ユーモアや知的な格言、アニメやCGを交えながら、グングン引き込まれながら、地球の現状を改めて認識させられ、考えさせられる、衝撃的でマジメな内容だけど「面白い」映画でした。

何よりも、ゴア氏の語り口は観客を引き付ける話術と、誠実で真摯な姿勢には驚くばかりで、大統領選に負けたときに勝手に抱いていた情けないイメージとは程遠いリッパな人物であり、「この人が大統領だったら」と何度も想像させられながら見させられる。

環境問題は最も選挙の争点にはなりにくい要素だとは思うけど、最後にキッチリ政治問題として力強く語る姿は感動的でもあり(そんなに説教臭くもなく)、素直にCO2を減らそうという気になるすごい映画でした。

すごくオモシロイ「見るべき映画」です。

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2007年1月21日 (日)

ディパーテッド

米映画

監督:マーティン・スコセッシ

出演:レオナルド・ディカプリオ マット・デイモン ジャック・ニコルソン マーク・ウォルバーグ マーチン・シーン アレック・ボールドウィン

メチャメチャ待望していたスコセッシの最新作!

香港映画「インファナル・アフェア」は日本公開時からハリウッドがリメイク権を購入したことを宣伝文句にしてたくらいだけど、なんとスコセッシが監督するとはビックリで、しかもトニー・レオンの役がディカプリオでアンディ・ラウの役がマット・デイモン。ディカプリオは「ギャング・オブ・ニューヨーク」「アビエイター」と立て続けにスコセッシ作品に出ていて、慣れたというかぶっちゃけ「もういいんじゃない?」という感じさえあったけど、全く異質で同等以上に主役級のマット・デイモンがするっていうのにはビックリ。

それよりも、スコセッシがひさびさにマフィア(ギャング)映画を撮って、しかもあのジャック・ニコルソンが出演するっていうだけで、もう大興奮でした。

あとあんまり話題にならないけど、マーク・ウォルバーグまで出ているのはかなりポイントが高いことだと個人的には思うんですけど。特に顔もキャラもかぶり気味のマット・デイモン(「オーシャンズ11」のマット・デイモンの役は最初ウォルバーグがやるはずだったとか)と共演するってのは楽しみにしていたんだけど…。

で、ニコルソンのナレーションで始まるオープニングは、最初からスコセッシらしい雰囲気でググッと引き込まれる。舞台をボストンに設定し、アイリッシュのマフィアたちを描き、マットの少年時代にいろいろ教え込むニコルソンの姿は、「グッド・フェローズ」のレイ・リオッタ(の少年時代)とデ・ニーロの関係のようであり、その後のディカプリオが潜入していく様子など、重厚で贅沢で、もう香港映画のリメイクだなんで完全に忘れ、独立したスコセッシ映画(しかも最近の文芸色の強い2作とは違う)として楽しんでいたんだけど…

当然なのかもしれないけど、中盤あたりからの展開がオリジナルそっくりになってきてから、徐々に不安になってきたんだけど、オリジナルと同じストーリーを追うばっかり忙しい展開は、乱暴すぎるというか、はっきりいうとちょっとガッカリでした。しょうがないんだろうけど、前半で築いた雰囲気がガガガガと崩れるようで。

主要キャラのほかにも、警部役のマーチン・シーンとかニコルソンの片腕のレイ・ウィンストンとか、いいキャラ(キャスト)がいただけに…。

でもラストは少しひねっていたのは、少しよかったです。

思い入れをなくして素直にみたらもっと楽しめると思うのでもう一回見てみようかなと。

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それでもボクはやってない

日本映画

監督:周防正行

出演:加瀬亮 役所広司 瀬戸朝香 山本耕史 もたいまさこ

「Shall we ダンス?」から11年ぶりらしい、周防監督の最新作で、日本の裁判制度を真っ向からとらえた話題の作品だけど、これが時間をかけただけあって、凄い完成度の面白い映画でした。

加瀬亮扮する主人公のフリーターはある日満員電車で女子中学生に痴漢に間違われて、警察に連行されるけど、犯行を全面否定し、起訴され、裁判で無罪を勝ち取るために戦うというお話。

ところどころにホッとする笑いは散りばめられているけど、これまでの作品に比べてコメディ度はグッと抑えられていて、とにかく警察の取調べ、留置所、検察での取り調べ、公判とひとつひとつ順を追って丁寧に分かりやすく表現することに細心の注意がくばられ、留置所にも裁判にも全く知識がなく不安と恐怖に押し流される主人公に限りなく近い視点から、作品の世界にドップリつからさられる。

とはいえ周防作品独特の軽快なタッチは失われておらず、メチャメチャ自然体でストーリーに入り込め、そこで描かれる裁判制度の矛盾(というより司法、捜査機関にいる人達の姿勢や仕組み)に驚き、怒りながら、笑ったり、ホロっとさせられる、かなり贅沢な作品に仕上がっている。

特に裁判官が交代してから、緊張感が一気に高まっていく展開はさすがで、ラストについても納得というか、ああやって終わるのがベストと思わせられた。

どこにでもいそうな男を演じさせられたらメチャメチャいい感じを出す加瀬亮はここでも凄くいい味を出していて、主演という大役ながら作品全体のトーンにすっすり溶け込んでいて、可哀相な主人公にリアルになりきっている。

その他のキャストもそれぞれピッタリで、法廷のシーンも「愛ルケ」のダラダラ裁判シーンと違って、まるで傍聴しているかの臨場感でみせてくれる。

いやあ、メチャメチャ勉強になり、日本の裁判制度について考えさせられたけれども、異常な満員電車もなんとかならないものかと改めて強く感じさせられました。

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2007年1月20日 (土)

マリー・アントワネット

米仏日合作

監督:ソフィア・コッポラ

出演:キルスティン・ダンスト ジェイソン・シュワルツマン スティーヴ・クーガン

マイケル・コルレオーネの娘役として出演した「ゴッドファーザーPARTⅢ」でのビミョーな演技がまだ記憶に残っているけれど、「ロスト・イン・トランスレーション」の大成功で、「フランシス・フォード・コッポラの娘」という肩書きよりも、ひとりの映画監督としての地位を確立したソフィア・コッポラの第3作目。

東京の街をゲリラ的に低予算で撮り上げた前作とはうってかわり、今回はタイトル通り、歴史上最も有名な王妃を主人公に、18世紀のヴェルサイユ宮殿を舞台に超豪華絢爛に描いたコスチューム・ドラマ。

「ヴァージン・スーサイズ」でも「ロスト~」でもフツーとはちょっと違う視点の映画を撮ってきたソフィア・コッポラは、この王妃の物語をフツーの歴史物にはせず、マリー・アントワネットを現代のセレブのようにドハデに遊びまくる姿をロックのリズムにのせ軽快にテンポよく描きながら、宮廷という特殊な場所で思うままにならないひとりの少女(女性)を浮き彫りにさせていく。

マリー・アントワネットのいたオーストリア側ではバックの音楽はクラシック調だったのが、フランス側になった途端、エレキギターが響いてきて、音楽や美術、小物等、きめ細やかな心配りがされていて、単調なストーリーの中でも飽きずに見ていられた。

たぶん、歴史的に大間違いであろうドハデなファッションやケーキや料理の数々により堅苦しい歴史ものというジャンルを忘れさせ、極端な状況におかれた極端なヒロインを表現するのに、インパクトばっちり。

「ヴァージン~」に続くソフィア映画主演となったキルスティン・ダンストは、見る角度によっては井筒監督にいうように「ブサイク」にも見えるけれど、ある角度からでは美人に見えたりして、そんな超美人でもない彼女としてハシャいだり悩んだりする姿は、イヤミのないマリー・アントワネット像を新たに想像したって感じ。

ルイ16世役のジェイソン・シュワルツマン(タリア・シャイアの息子!てことはソフィアのいとこ)も「天才マックスの世界」は見ていないけど、「ハッカビーズ」なんかでも見せていた飄々とした感じはここでも出ていて、いい感じでした。

あと、フランス宮廷を舞台にしながら、アメリカとかいぎりすの俳優ばっかだったけど、「キングス&クイーン」のマチュー・アルマリックがほんの一瞬でも出てくるところに、監督が楽しんで撮ってる感じもして、よかったです。

マリー・アントワネットの悲劇や善悪よりも、数奇な女性の日常をカジュアルな映画としてみせてくれる、けっこう「あり」な映画でした。

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2007年1月19日 (金)

愛の流刑地

日本映画

監督:鶴橋康夫

出演:豊川悦司 寺島しのぶ 長谷川京子 佐藤浩市 陣内孝則 津川雅彦 富司純子

渡辺淳一作のエロ小説「愛ルケ」の映画化。連載していた新聞は取っていたけど、ほとんど興味もなく、たま~にチラチラ覗き読む程度であらすじを知っている程度だったけど、そのドロドロカップルを寺島しのぶとトヨエツがやるっていうのであっては、見ざるを得ないかったんで…。

小説ではたしか、ヒロイン冬香が死ぬのは中盤ごろで、その後はえんえんと裁判の様子が続いていたと思うけど、映画では冒頭セックスシーンから入り、いきなりヒロインは死んでしまう。その後警察の取調べや裁判の証言等で出会いから事件に至るまでが少しずつ明らかにされていくといった内容。

監督はテレビの演出家の人らしいんだけど、展開というか全体の雰囲気がなんとなく緩慢なのと、裁判のシーンはセットは安っぽく、カメラも人物を捕らえきれてないっていうか、焦点が定まらず見にくいのとで、見ていてチョイきつかった。

でもまあ、超実力派・寺島しのぶとトヨエツの演技によって、なんとか最後まで見られます。

衝撃的傑作「赤目四十八瀧心中未遂」をはじめとして破滅的な女性を演じさせたらリアルでイロッぽくものすごく完成された感のある寺島しのぶは、ここでもというかここでは出番の約半分ぐらいがセックスシーンという役を文字通り体当たりで、でも無理なく演じきっている。

その寺島と「やわらかい生活」でい~い感じのカップル(?)を演じてみせた豊川悦司も、「やわらかい~」とは真逆な関係だけど、そんな彼女を受け止め、その後苦悩する姿を自然に演じている。小説の主人公のイメージはショボくれたオッサンだったけど、そのギャップがけっこうよかったです。

そして多分原作には出てこない展開だと思うけど、クライマックスで富司純子が出てくるシーンにはけっこうグッときた。富司純子は「犬神家」といい、本作といいホント子供との親子役が続いている(「犬神家」は助清役の尾上菊之助)けど、ここでも寺島しのぶとのシーンや裁判のシーンとか短いけどシマっててよかったです。

あと、ハセキョーがウザいと感じたのは私だけでしょうか?裁判シーンはほとんどボウ読みでいっぱいいっぱいだし、よけいな色気もよけいだったし。

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2007年1月17日 (水)

デート・ウィズ・ドリュー

米映画

監督:ジョン・ガン ブレット・ウィン ブライアン・ハーズリンガー

出演:ブライアン・ハーズリンガー ドリュー・バリモア

面白いっ!メチャメチャくだらないけどメチャメチャ面白い!今年見た映画の中では「長い散歩」に次いで現在第2位。(まだ7本しか見てないけど)

映画関係者を夢見るけれど、なかなかかなわず定職にもつけないでいる見た目ショボい白人の男(ブランアン・ハーズリンガー)が、クイズ番組で手に入れた1,100ドルを元手に、30日間で子供の時から熱狂的なファンだった女優ドリュー・バリモアとデートするまでをドキュメンタリー映画に収めるべく、友人ふたりに撮影させ、奮闘する姿をえんえん撮り続けるというもの。

マイケル・ムーアのがアポなし映画だとしたら、こちらは究極のアポ入れ映画。

といっても全く無名のビンボー人たちがドリュー・バリモアとコネがあるわけでもなく、ドリューの友人の友人の友人みたいのに頼みに行ったり、PVを事務所に送りつけたり、パーティー(「チャリエン・フルスロットル」の!)に忍び込んだりと知恵を絞りながら悪戦苦闘したり、ちょっとしたチャンスに一喜一憂したり、悩んだりする姿には笑わせられながらもその飾らない姿とくじけずホジティブな姿勢に、いつのまにか本人といっしょにドキドキハラハラさせられ、ものすごく引き込まれてました。

関根勤の著書に「バカポジティブ」という本があるけど、まさにバカポジティブを地でいっていて、30日間憧れのドリューに会うことためだけに突き進む(ほとんどは無駄足、寄り道だったりするけど)バカさ加減はくだらないけどけっこうグッときます。

そして、クライマックスには超感動というか、ハッピーになれる映画でした。

いやあ、ドリューいいですねぇ。

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2007年1月16日 (火)

長い散歩

日本映画

監督:奥田瑛二

出演:緒形拳 高岡早紀 杉浦花菜 松田翔太 原田貴和子 木内みどり 奥田瑛二

俳優・奥田瑛二の監督第3作にして、モントリオール映画祭っていうのでグランプリを受賞した作品だそうだけど、これが評判通りの大傑作!前作「るにん」も松坂慶子以下キャストが江戸時代の罪人になりきり、鬼気迫る迫力の快作だったけど、今回のは限りなくシンプルで静かな中に、人の優しさや哀しさ、無情、現実、ファンタジーがギュッと詰まった濃い作品だった。

内容はもうすっかり知れてると思うけど、緒形拳演じる主人公・松太郎は厳格な人物(元校長先生)だけど、家庭を顧みないうちに妻を亡くし娘との関係も断絶し、ひとりで安アパートに越してくる。その隣りの部屋には高岡早紀扮する母親が5歳の娘・幸と(ヒモの男と)住んでいた。けれどこの母親は娘を虐待しまくっていて、松太郎は我慢できずにそんな環境から幸を救い出し、2人で旅に出る。やがて松太郎は誘拐の容疑で手配され追われるようになるが、幸に青い空を見せるために逃亡しながら旅を続ける。家族に愛を示せなかった老人と虐待され心を閉ざしていた少女が次第に心通わせていく姿を、母親、旅で出会う青年、刑事たちといった周囲の人物も丁寧に描きながら、じっくりと見せてくれる。

とにかく緒形拳の演技が凄い。すごいといっても孤独な老人が一大決心をして大冒険に出る姿にジワジワといつのまにかググッと引き込まれている。

その他、高岡早紀も憎たらしいけど哀しい女性を体当たりで演じているほか、他のキャストも凄い集中力でキッチリした映画になっている。

虐待を真正面からガッチリ描きながらも、それ以外の人間関係をじっくりと見せつつ、飽きさせない泣けるエンターテイメントにもなっている、奥田監督、入魂の一作で、最近の日本映画の中で最も評価されてもいい作品のひとつと言ったら大げさかもしれないけれど、それぐらいのモノを感じました。

UAの歌うエンディングにも泣けるし。

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2007年1月14日 (日)

ラッキーナンバー7

米映画

監督:ポール・マクギガン

出演:ジョシュ・ハートネット ブルース・ウィリス ルーシー・リュー モーガン・フリーマン ベン・キングスレー

けっこう豪華なキャストが顔を揃える、ドンデン返し型のクライム・サスペンス。

ジョシュ・ハートネット演じる主人公はニューヨークの友人の家を訪ねてきたれど、留守の友人に間違われて、敵対するギャング両方から多額の借金返済を迫られ、片方からは借金返済の代わりにもう一方の殺人を依頼されるなど、どんどん事件に巻き込まれていくんだけど…みたいなお話。

テンポのよさと、かなりひねった展開にはなかなか飽きずに、確かにけっこう面白いんだけど、ちょっと後味がよくないなあっていうのが正直な感想です。なんでかっていうと、とにかく人が死にまくるもんで…。あんだけ殺しといてハッピーエンドもないかなと。

役者でいうと、ジョシュ・ハートネットは若いころのブラピの雰囲気も出てきてなかなか良かった他、ルーシー・リューが(意外に)よかった。2大ギャングに扮する2大アカデミー俳優モーガン・フリーマンとベン・キングスレーはなんでこんな役を?て思うぐらいちょっともったいない気が…。ブルース・ウィリスは最近では一番カッコいいけれど、もうちょいインパクトが欲しいかなと…。

ラストの展開でググクッと盛り上がり、謎が明かされていくんだけど、それとともになんとなくイヤな気にさせられてしまう復讐映画でした。(面白いことは面白いんだけど)

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人生は、奇跡の詩

伊映画

監督:ロベルト・ベニーニ

出演:ロベルト・ベニーニ ニコレッタ・ブラスキ ジャン・レノ トム・ウェイツ

「ライフ・イズ・ビューティフル」で、イタリア語映画にがら米アカデミー主演男優賞を取るなど世界的大成功を収めた後「ピノッキオ」でちょっと外した感があったイタリアの大コメディスター ロベルト・ベニーニの新作で、現代のラブ・ストーリー(コメディだけど)になっている。

「ライフ~」は第二次世界大戦下、そしてユダヤ人収容所の過酷な状況下、夫婦愛、親子愛を描いていたけど、今回は2003年のイラク戦争真っただ中のバグダッドに愛する女性を救いにいく詩人の姿をベニーニ特有のマシンガントークとやさしい笑いでロマンチックで可笑しい作品になっている。こんなにも早くイラク戦争を舞台にするという点では、社会派的な目をかなりのもんだけれど、ベニーニのタッチで全体的にやさしい映画になっている。

今回はラブ・ストーリー色を強めるためか、これまでの役よりもエキセントリックさは抑えられているけど、相変わらず恋に一直線な男を相変わらずパワフルで愛らしく演じきっているベニーニの姿が見られるだけでもこの映画を見る価値はあると思うけれど、今回はジャン・レノがイラク人の詩人でいい味を出している他、ジャームッシュの「ダウン・バイ・ロー」で共演したトム・ウェイツが渋い歌声を披露してかなり贅沢になっている。

ベニーニ作品でかならずヒロインを演じているベニーニの実際の奥さんでもあるニコレッタ・ブラスキも今回がいちばんキレイというか、いい感じに仕上がってました。

イラク戦争というショッキングな舞台設定にしつつも、その戦争に対する掘り下げ方がちょっと足りないかなあという感も残るものの、そんな中で盲目的に愛する女性のために奔走するベニーニの姿は可笑しくも感動させられるし、インパクトや「泣かせ」といった意味では「ライフ~」に若干届かないような気もするけど、見終わったあと、いい気持ちになる大人のおとぎ話(特にラストが!)になってます。

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サラバンド

スウェーデン映画

監督:イングマール・ベルイマン

出演:リヴ・ウルマン エルランド・ヨセフソン ボリエ・アールステット ユーリア・ダフヴェニウス

スウェーデンの世界的大巨匠(恥ずかしながら見るのはこれが初めてですが)が、85歳(当時)にして20年ぶりに撮った、そして自らが「遺作」と呼んでいるという、気合のこもった作品。

1974年の作品「ある結婚の風景」の続編として、当時の主人公が年老いてからを描いているらしいけれど、ひとつの独立した作品として確立した内容とストーリーになっている。

主人公の女性が30年前に離婚した年老いた元夫のもとを訪ね、しばらくその家に滞在することにする。その家の近くには元夫の息子(主人公のではない)とその娘が住んでいる。そこで主人公と元夫の枯れているがどこかでつながっている関係、元夫とその息子との確執、息子とその娘との屈折した愛情などが静かだけど内で激しく燃えるように描かれている。

「サラバンド」のいうのはヨーロッパの宮廷での古典舞踊(特にバッハのが有名らしいです)のことで、息子とその娘はチェリストで、その音楽にそったような重厚な流れでストーリーが進んでいく。そして物語を10個のパートに分け、それぞれのパートでは登場人物は必ず2人、1対1でしか登場せず、時には静かに、時には激しくぶつかり合い、かわされる会話やその表情(特に女性たち)には、巨匠のもの凄い集中力が感じられ、最初から最後までずっと引き込まれっぱなしでした。

主人公役のリブ・ウルマンは、やさしさの中に人生の痛みみたいなものをにじませている初老の女性を静かに気品たっぷりに演じている。そして元夫の孫娘カーリン役のユーリア・ダフヴェニウスという女優も、活発ではっきりした若い女性を魅力たっぷりに演じている。この女性2人が対象的だけど上手くかみあっていて、さすが巨匠!的な深みたっぷりに描かれている。

セリフ回しは難しいけれど、人間同士のぶつかり合いという根源的な物語はしっかり感じられる見といてよかったと思える作品でした。

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2007年1月 8日 (月)

無花果の顔

日本映画

監督:桃井かおり

出演:山田花子 桃井かおり 石倉三郎 高橋克実 HIROYUKI

大女優・桃井かおりの第1回監督作品で、山田花子を主演に迎えたところからも異色という匂いがプンプンする作品。

娘・山田花子、父・石倉三郎、母・桃井かおり、息子・HIROYUKI(インディーズのミュージシャンらしいんですが)のバラバラなんだけどどこか繋がっている面白家族の変な日常をジワジワ描いている。

脚本も書いている桃井かおりの才能はスゴいなあと思うけれども、はっきりいってなかなか理解できなかったというか、ぶっちゃけグッとくるものがあんまりなかった。(私はですが)

でも、山田花子の自然な演技は凄くよく(カワイくみえたし)、それを引き出しただけでも桃井かおり監督は凄いなあと感じさせられました。

あとは石倉三郎がいい味出して映画の前半を引っ張っていた。それだけに後半の展開というか変わっちゃった雰囲気が残念に感じちゃいました。

お母さん役の桃井かおりもいい味は出しているんだけど、他のキャラでは表現しきれない映画の雰囲気を一手になんとかしようとしているようで、一人舞台を見せられている錯覚も覚え、若干微妙な雰囲気になっているような気が…。あの役は別の女優さんにやらせて自身はもうちょっと小さい役をやったほうが物語が締まってよかったのではないかと…。

説明的な展開を一切廃して、家族の様々な顔を描いているのだけど、石倉さんのエピソードはもうちょい掘り下げてほしかったというか、もうちょい分かりやすければ、グググッときたと思うんですが…。(分かる人には分かるのかもしれず、大きなお世話かもしれませんが) 

分からず、乗れず、ぶっちゃけちょっと長く感じさせらる映画でした。

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2007年1月 7日 (日)

あるいは裏切りという名の犬

仏映画

監督:オリヴィエ・マルシャル

出演:ダニエル・オートゥイユ ジェラール・ドパルデュー ヴァレリア・ゴリノ

フランス産の超ハードポイルド刑事もの。実際にあった事件をモチーフに、フランスでそれぞれがものすごいキャリアを持つ2大名優ダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデューがライバルの刑事役で火花を散らすっていうんで、地味というかシリアスでジワジワくる作品を想像していたら、銃撃戦やカーチェイスなんかバンバン出てきて、裏切りやらドンデン返しとかが盛りたくさんで、フランス映画というより、最近の香港の犯罪ものに近い感じ。

パリ警視庁の探索出動班(BRI)のリーダー・レオ(オートゥイユ)と強盗鎮圧班(BRB)のリーダー・ドニ(ドパルデュー)は、次期長官候補として競い合い(レオが一歩リード)しながら、凶悪強盗団を追っている。レオのほうがいわゆる「いい」刑事で、ドニのほうは出世欲に取り付かれた「悪い」刑事。で、犯人を追い詰めたところで、ドニのミスでBRI側のレオの同僚が犯人に殺されてしまう。怒ったBRIはドニを告発するが、捜査中にいろいろあってレオが投獄され、その間ドニは不問に付され、長官にまでなって…みたいなお話。

とにかく目まぐるしい展開の連続で、事件と陰謀と愛と憎しみがごちゃまぜになった中で、オートゥイユとドパルデューが男臭く苦悩と策略を重ねる渋い演技を見せてくれるのだけど、はっきりいっていろいろ詰め込みすぎていながらそれぞれのつながりと必然性がシックリと感じられず、あんまり乗れないまま終わってしまった感が。

特にラストにかけての展開が、たしかにドンデン返しなんだけど、そんなドンデンいらないんじゃ?的に感じちゃいました。でもまあ、2人の大俳優の濃い演技が見られただけでもけっこう満腹感ありでした。なぜかフランス映画に出ている「レインマン」のヴァレリア・ゴリノ(オートゥイユの奥さん役)にもちょっとビックリしたし。

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ヘンダーソン夫人の贈り物

英映画

監督:スティーブン・フリアーズ

出演:ジュディ・デンチ ボブ・ホスキンス クリストファー・ゲスト ケリー・ライリー ウィル・ヤング

1930年代に実際にロンドンにあった、イギリスで初めて舞台で女性のヌードをみせた劇場をモデルに、その劇場のオーナーで富豪の老未亡人のヘンダーソン夫人が劇場を立ち上げ、第二次世界大戦中も舞台を続けていく姿を描いたドラマ。

オスカーの常連でもあるイギリスの大女優ジョディ・デンチ(「恋におちたシェイクスピア」で助演女優は受賞)は、この作品で去年のアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされており、ヌード興行に夢中になる老夫人をユーモアと毒気たっぷりに、そして若干悲しみをにじませたシリアスさも交えて、活き活きと演じている。007シリーズのMとかいろいろ演じているけど、最近では最もよく、やっぱりこの手をさせたら、メチャメチャいい味を出している。

物語は戦争の影がせまる(または渦中の)暗い時代をベースにしつつ、軽快なテンポで、ヌードがひとつのトピックスになっているけれど、決していやらしくなく、むしろ上品で懸命に生きる女優たちを生き生きと描き、「グリフターズ」「ハイ・フィデリティ」その他いろいろのスティーブン・フリアーズ監督は、コメディとシリアスとロマンスを絶妙に混ぜ合わせている。

製作も兼ねたボブ・ホスキンスも、いつもより毒気がなく、ジョディ・デンチの相手役としていい味出していて、70代の女性と60代の男性をメインにした、軽快で上品ないい映画でした。

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シャーロットのおくりもの

米映画

監督:ゲーリー・ウィニック

出演:ダコタ・ファニング  声)ジュリア・ロバーツ スティーブ・ブシェミ ロバート・レッドフォード

予告編を見たら「ベイブ」そっくりにブタやその他の動物がしゃべりまくり、主役のブタが肉になりたくないとがんばる内容にパクリ?もしくはリメイク?(ベイブはオーストラリアの映画なので)と思ったけど、昔っからアメリカでは親しまれている絵本の映画化らしい。

とある牧場で小さすぎて処分されようとしていた子豚を牧場の娘(ダコタ・ファニング)が反対して育てる。大きくなってきたので、娘の手から離され、納屋で他の動物たちと暮らすようになった子豚がそこに住むシャーロットというクモ(声はジュリア・ロバーツ)と仲良くなる。で、子豚は冬になる頃には肉にされてしまうので、シャーロットを中心とした動物たちが助けようとするお話。

この手の話の時はいつも、たしかに子豚はかわいくて助かるのはいいけれど、他の豚は確実に死んでるんじゃないの?と考えてしまうけど、その点さえ気にしなければ(重要なことだけど)、モロ子供むけながらもなかなか良かったかなと。CG満載な割にはかなり地味なお話も、逆に好感もてたりして。

クモ役のジュリア・ロバーツやネズミ役のスティーブ・ブシェミ、カラス役のトーマス・ヘイデン・チャーチとか声の出演は結構豪華(一番目玉だと思っていた馬役のロバート・レッドフォードはちょっと期待外れだったけど)で、大人は絶対に字幕版で見たほうがいいけれど、大人だけで見るには若干ツラいかも…。

クモのシャーロットが頭良すぎるところに最後まで引っかかったり、ダコタ・ファニングの役が中途ハンパなところに引っかかったりするけど、生きることの大切さなんかをそんなに押し付けがましくなく伝えるところなんかは、さすがに昔からある児童文学なんだろうなあと思いつつ、見てそんなに損じゃない作品でした。

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大奥

日本映画

監督:林徹

出演:仲間由紀恵 西島秀俊 高島礼子 井川遥 及川光博 岸谷五郎 杉田かおる

フジテレビのヒットドラマ「大奥」を主演に仲間由紀恵を迎えての映画化。

時は七代将軍家継の治世。大奥では、まだ5歳の将軍の生母(前将軍の側室)月光院(井川遥)と前将軍の正室・天英院(高島礼子)が2派に分かれてドロドロした派閥争いをしている。で、月光院は将軍御側用人の及川ミッチーと密通しており、老中・岸谷五郎と天英院が月光院とミッチーを追い落とすために(密通を表沙汰にするために)、大奥総取締役で月光院派の絵島(仲間由紀恵)に歌舞伎役者(西島秀俊)をけしかけ、陥れようとするといったお話。「絵島生島事件」(歌舞伎役者が生島新五郎という名前)として実際にあったスキャンダルを映画にしたらしい。

テレビの「大奥」は1回も見たことがなかったけれど、さすがに映画だけあって、衣装とかも豪華で、テレビよりはお金がかかってるんだろうなという雰囲気は感じられるんだけど、話にテンポがなく、盛り上げ方も音楽ガンガンかけて若干わざとらしく、テレビのスペシャルを見させられているといった印象。映画として見させられるにはかなりツラかった。

仲間由紀恵がジワジワ男に惹かれていくところはよかったけど、その他の人物が全員薄っぺらに見えて非常にツラかった。相手役の西島秀俊は哀愁のある歌舞伎役者を雰囲気たっぷりに演じているんだけど、この役者の行動が最後まで理解できず(分かるように描いておらず)、最後まで「う~ん」といった感じで終わってしまった。

あとやたらに「友情出演」や「特別出演」とかいう役者が多すぎるのも、気が散って仕方がなかったです。見てるほうには関係ないのに…。

地味に脇を固める麻生祐未(こんな役やるのかと若干ショックだったけど)と中山忍が控えめでよかったです。

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2006年12月26日 (火)

鉄コン筋クリート

日本映画(アニメーション)

監督:マイケル・アリアス

出演(声):二宮和也 蒼井優 伊勢谷友介 田中泯 工藤官九郎 本木雅弘

松本大洋原作のマンガをアメリカ人のクリエイターが監督して作られた「日本の」アニメーション映画。

原作も読んでなかったし、若干キモいキャラと、かなり奇抜そうな雰囲気に若干引っ掛かりつつも、「一応みておくか」程度の軽い気持ちで見に行ったけれど…、これが大傑作だった! 近年のアニメーションの中でも群を抜く完成度と中身の充実度で圧倒された。そして今年見た映画の中でもNo.1と言ってもいいぐらいでした。

舞台は恐らく日本で昭和の時代のようだけれど、独特の混沌とした町「宝町」で、親がおらず、暴力を頼りに独力で生き抜いている少年クロと、彼と行動を共にする無垢な少年シロの二人を中心にして、宝町を地上げ・再開発をもくろむヤクザたちやギャングや刑事が入り乱れて繰り広げられる、暴力と策謀と善と悪と愛の物語。

松本大洋の独特の絵をこれまた独特だったアニメ「マインド・ゲーム」を製作したスタジオ4℃という製作会社のスタッフがいい具合にデフォルメし、躍動感を与え、そして圧倒的で原作を超えるビジュアルの美術(背景)の中でいきいきと動いている。

そしてシンプルだけど重厚で中身の濃い、ストーリーと構成と演出力にこのアメリカ人監督の才能を見せ付けられました。ハリウッド作品のCGやVFXに携わってきた経歴がありつつ、日本アニメのキモをしっかり掴み、キチンとした作品に仕上げている。「マインド・ゲーム」と「AKIRA」と「イノセンス」と北野武作品(初期の)を併せたような作品でした。

豪華な声優陣もこの凄い内容を壊さず、作品の世界観の構築にそれぞれの個性を生かしている。特に物語の中心ですべてを救う重要な少年シロを演じる蒼井優の演技は圧倒的にすごく、鳥肌が立つぐらい。

また、豪華で多彩な声の出演者たちに混じり、プロの声優もいい味と声の存在感で物語をしっかりと締めている。特に刑事役の西村知道は「パトレイバー」の松井刑事でもそうだったけど、良心的な刑事役をやらせたら玄人で、物語を冷静に外から見る役目をここでもしっかり担っている。

前半は少年たちがマトリックス張りに町を飛び回り、暴力が数珠つなぎで連続する展開に腰が引けたけれど、いつのまにか深く引き込まれ、頭の中をかき回され、感動し、スカッとまではいかないけれどいろいろ考えさせられながらも最後はあったかい気持ちになれました。確かに暴力シーンが多く作品全体を覆っているけれど、よく見ると直接的な暴力描写は少なく、暴力を含む心の闇と戦うといったテーマ(?)のためには必要であり、暴力が支配する内容からラストへの展開には、緊張から感動に繋がっている。ホントウに濃い映画でした。

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2006年12月17日 (日)

上海の伯爵夫人

英米独中合作

監督:ジェームズ・アイボリー

出演:レイフ・ファインズ ナターシャ・リチャードソン 真田広之 ヴァネッサ・レッドグレイプ リン・レッドグレイプ

「眺めのいい部屋」(見てないけど)、「ハワーズ・エンド」、「日の名残り」などの文芸作品の名匠ジェームズ・アイヴォリー監督作品で、「日の名残り」の原作者でイギリス文学界ですごい実績を残すカズオ・イシグロが書き下ろしたオリジナル脚本による作品。そして名監督、名優たちの作品に真田広之が出ているっていのもポイント。(日本であんまり話題になってないような気もするけど)

1936年の上海を舞台に、ロシアから移り住んできた没落貴族の伯爵夫人がと、盲目の元米国外交官のロマンスを描いた物語。亡き夫に替わりプライドばかり高いロシア貴族一家を食べさせるために上海のダンスホールで働く薄幸の未亡人と、事故(テロ?)で家族を亡くし、視力も無くした元名外交官で今は最高の「バー」を上海に作りたいと夢見る男の秘めた恋を、激動の当時の上海の情勢の中で描くといった、ひとつ間違えばドロドロ甘々のメロドラマになるところを、メロドラマには違いないけど、ジェームズ・アイヴォリー監督の丁寧な演出によって上品で繊細な映画になっている。

ウォン・カーウァイ作品で有名なカメラマン・クリストファー・ドイルの撮影によるところも大きいんだろうけど、雑多かつ重厚な1930年代の上海の様子がメチャメチャ雰囲気出ていて、作品のグレードをグッと引き上げている。

盲目の元外交官を演じるレイフ・ファインズ(英国の外交官に見えちゃうけど)と、伯爵夫人のナターシャ・リチャードソンはそれぞれ悲しい役を静かに繊細に演じ上げ、映画に緊張感を与えつづけている。ナターシャ・リチャードソンっていう人はよく知らなかったけど、地味だけど上手い。没落した貴族のオバちゃんたちを演じるヴァネッサ&リンのレッド・グレープの大女優姉妹も映画にコクを与えている。(ナターシャ・リチャードソンはヴァネッサの娘らしいけど)

そして謎の日本人役の真田広之は、英語は上手いし、名優レイフ・ファインズにも負けてないし、重要な役としてアイヴォリー作品でしっかりと印象を残していました。

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エラゴン 遺志を継ぐ者

米映画

監督:シュテフェン・ファンマイアー

出演:エド・スペーリアス ジェレミー・アイアンズ シエンナ・ギロリー ロバート・カーライル ジョン・マルコヴィッチ

「ハリポタ」「ロード・オブ・ザ・リング」の成功により、相次ぐファンタジー・ベストセラー小説の大作映画化の新作…なんだけど、ちょっとこれはレベルが低すぎのような気が…。

まず時間が短すぎる。長い映画がいいとは言わないけれど、ファンタジーとして、その舞台となる世界がどんなものかが説明できていないし、キャラひとりひとりの掘り下げも不十分だし、話も単調で単純すぎる。

主人公の師匠的な役の名優ジェレミー・アイアンズはいい味出してるけど、悪役ロバート・カーライルはキモくていいけどイマイチどういうヤツなのかよく分からないし(思ったほど弱っちいし)、反乱軍の姫とかもなんで戦ってるのかよく分からないし、一番期待していた悪の王ジョン・マルコヴィッチに至っては出番少なすぎ(全部ひとつのセット内ですませているし)。

ドラゴン(声のレイチェル・ワイズはいいけど)も物語の核の割にはイマイチ魅力に欠けるし、主人公エラゴン役の人も「ナルニア~」の主人公たちより個性がないし。

これで三部作つくられてもちょっと辛いです(「GOAL!」並に)。

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2006年12月16日 (土)

王の男

韓国映画

監督:イ・ジュンイク

出演:カム・ウソン イ・ジェンギ チョン・ジニョン カン・ソンヨン

16世紀初頭の朝鮮を舞台に、王をバカにした出し物をした芸人が、王を侮辱した罪で捕まり、王を笑わせないと死罪とう難題を克服し、宮廷お抱えの芸人となるものの、その中の女形の美男の芸人が異様なまで王の寵愛を受けるようになり、宮廷のドロドロした関係や政治に巻き込まれて運命を狂わせていくというお話。

韓国では歴代の興行成績を覆す記録的大ヒットとなり。日本でも前評判がメチャメチャよかったんだけど…

はっきりいって、ちょっと微妙…

宮廷の重厚な感じや、美男の芸人役のイ・ジェンギも妖艶さがよく出ていたし(及川ミッチーを思い出してしまうけど)、主演のカム・ウソンもよかったんだけど、ちょっと乗れなかったというのが正直な感想。

肝心の芸のシーンであんまり笑えなかったというのが一番の原因なんだけど、韓国人には面白いのか分からないけど、なかなか笑えないうちに、もう王が爆笑してしまって…

あと、王がイ・ジェンギのにのめり込むといっても、王の部屋で人形劇するぐらいで、なんか消化不良な感じが…

でもラストにかけてははなかなかグッときたし、全体のトーンはしっかりしているし、完成度は高い作品でした。

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2006年12月15日 (金)

硫黄島からの手紙

米映画

監督:クリント・イーストウッド

出演:渡辺謙 二宮和也 加瀬亮 伊原剛志 中村獅童 裕木奈江

硫黄島の戦いを舞台にして、アメリカ兵を主人公にして描いた「父親たちの星条旗」に続き、主要なキャストを日本人の有名俳優で占めた、日本人の視点から描かれた「名監督」クリント・イーストウッドの作品。

敗戦色の濃い、昭和20年2月の硫黄島に渡辺謙扮する栗林忠道中将が総司令官として着任する。米軍との決戦を前に、玉砕覚悟で非効率な作戦(陣取り)を次々を見直し、米軍を長く苦しめる持久戦を繰り広げていく。

渡辺謙と、ペーペーの兵隊役の「嵐」の二宮和也の2人を中心に物語が進んでいく。二宮演じる二等兵は回りが次々と死んでいく戦場において生に執着する平凡な男で、人格者で高潔な実在の人物栗林中将とは対象に描かれている。

イーストウッド監督なので、かなりの完成度を期待して行ったけど、日本映画以上にしっかりと日本人が描かれていて、ビックリ!(絶対日本人に見えない日本兵のエキストラもチラホラいたりするけど)

とにかく当時の硫黄島の状況や日本兵、日本の描き方が緻密で、キチンと描かれていて、どれぐらい日本人が関与しているか分からないけれど、その調査力と脚本家(アイリス・ヤマシタという日系人らしいけど)の力量に感心させられた。

それに加えてイーストウッド監督独特の静かな映像美や、日本映画とは決定的に差がある迫力とリアリティで、映画としての満足度もかなり高い。

正直物足りなさが残った「父親たちの星条旗」は、硫黄島のシーンと戦後やアメリカ国内のシーンとが交錯して焦点も絞りずらかったのとは対象的に、初めから終わりまで硫黄島で、そこで散っていく日本人をジックリ描いた本作は数倍面白かった。

役者も、正直パッとしなかった「父親たち~」の俳優陣に比べて、日本人のキャストの集中力も凄く、日本映画ではなかなか見られない緊張感と、イーストウッド監督の人物の描き方がすごくいい感じを出している。特に物語全般の目撃者で重要な役の二宮和也が上手くてビックリしました。あと加瀬亮もよかったし、名前は知らないけど中盤まで二宮と一緒にいる兵隊役の人もなかなか良かった。渡辺謙も「SAYURI」よりぜんぜんよかった。

戦闘シーンやラストにかけての盛り上がりがややアッサリ感が強いけど、栗林中将がどんな人だったのか等あらためて硫黄島について知りたくさせられる、誠意のこもった作品でした。

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2006年12月 8日 (金)

キング 罪の王

米映画

監督:ジェームズ・マーシュ

出演:ガエル・ガルシア・ベルナル ウィリアム・ハート ペル・ジェームズ ローラ・ハーリング ポール・ダノ

「アモーレス・ペロス」「バッド・エデュケーション」なんかのラテンの貴公子ガエル・ガルシア・ベルナルが英語で主演した初めての映画だそう。

ガエル演じるエルヴィスという青年が海軍を除隊して、テキサスの田舎町にやってくる。そこにはウィリアム・ハート扮する、かつて彼を身篭っていた母親を捨てた父親が牧師となり、新しい家庭を築いていた。エルヴィスはその異母妹となる娘を誘惑するなど、家庭に近づき、許されない行為を次々と重ねていく…といったお話。

「チョコレート」(ハル・ベリーがアカデミー主演女優賞とったやつ)と同じ脚本家によるストーリーで、ドキュメンタリー中心に活動してきた監督によるストーリー、映像は、飾りを一切廃し、ストレートに心にグサグサくる。ガエル・ガルシア・ベルナルによる禁断で背徳な物語が、繊細で乾いた印象で淡々と描かれていく。

ガエルの抑えた英語の演技が相変わらずのギロッとした眼の演技を引き立たせていて、改めて上手いなあと感心させられた。

そして、ジム・ジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」のラスト近くでビル・マーレイの傷ついた心をちょっとだけ癒し、私の眼をスクリーンにクギ付けにした花屋の店員“サン・グリーン”役のペル・ジェームズが、ガエルに誘惑され、翻弄される悲劇の少女を凛としながらもどこか艶かしく演じている。「ブロークン~」の短いけど強かった印象に比べるとちょっと地味に感じるけど、実は27歳なのに16歳の少女をリアルに演じている。ガエルに夢中になりその罪さえ許し受け止めていた少女が真実に気付いた時の表情が物語の緊迫感をかきたててよかったです。

ある意味ノーテンキな父親役のウィリアム・ハートは昔の爽やか・知性系のキャラから、最近こんなアクの強い役が多くなってきたけど、自己中心的で欺瞞に満ちた人物をニクニクしく演じている。だけど別の面から見ると、罪を認めながら不器用で懸命に生きている人にも見え、そこまでされる必要があるのか?とも感じさせられ、ガエルのキャラも含めて、思い出す毎に違った印象・一面がある映画だった。

あと「マルホランド・ドライブ」で謎の美女をド派手メイクで演じたローラ・ハーリング(当時はローラ・エレナ・ハリングっていっていたと思うけど)が地味メイクでお母さん役を控えめに演じている。ぜんぜん印象が違ったけど道路をフラフラ歩くシーンはちょっと「マルホランド~」を思い出しました。

それから「リトル・ミス・サンシャイン」でいい味出しているポール・ダノが悩める一家のかわいそうな息子を地味に演じている。ボワーっとした白人少年役が、ギラッした眼のガエルと対象的でこれはこれでよかった。

悲惨なストーリだけど、なぜか爽やかな印象を受ける不思議な作品でした。

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2006年12月 3日 (日)

007 カジノロワイヤル

英・チェコ・独・米合作

監督:マーチン・キャンベル

出演:ダニエル・クレイグ エヴァ・グリーン ジョディ・デンチ マッツ・ミケルセン ジェフリー・ライト

ジェームズ・ボンド役が、すっかりお馴染みになったピアーズ・ブロスナンから、スピルバーグの「ミュンヘン」でもスパイ(殺し屋?)役だったダニエル・クレイグへと、一気に若返った第1作目。

同じタイトルで、かなり昔にピーター・セラーズがボンド役をやった(その他ウディ・アレンとか4・5人がボンド役で出てきた)、長~いコメディ映画をテレビで見た気がしたけど、もともと「カジノ・ロワイヤル」ってはじめてボンドが登場した小説だそうで、今回の映画化は007映画の王道としてマジメに作られている。

マンネリっぽくなったイメージを打破するためか、その最初の小説を原作にもってきて「ボンドが“007”になったばかり」という設定にして、改めて新たなスタートを切っている。

と、いうことで今回はメチャメチャ硬派な作りで、珍しい新兵器も出てこず、核兵器やら人工衛星からのビーム砲みたいな突飛な脅威でもなく、ボンドはひたすらテロリストへの資金源を断つために働くという、リアルっぽいスパイ映画になっている。ブロスナン版の007や「M:i:Ⅲ」なんかに比べると地味な印象はあるけど、脚本に「クラッシュ」のポール・ハギス(イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」や「父親たちの星条旗」の脚本も書いている)が加わったこともあったのか、人間的な描写がしっかりしているように感じ、見応えはこっちのほうがあった。

新ボンドのダニエル・クレイグは、どっちかといえば悪人顔で初めは違和感もあったけれど、それはボンドも“007”になりきっていない設定でやたら暴力的に見せたりしているせいもあり、だんだん見慣れてきて最後にはボンドに見えるようになった。

そして、ベルトリッチの「ドリーマーズ」で鮮烈なデビューをしたフランス人女優のエヴァ・グリーンがボンドガールで出ているけれど、これがメチャクチャいい!演技も上手い(と思う)けど、なによりももの凄く美しい。(特に厚化粧落とした後の顔がいい)

あと、ブロスナン版から“M”を演じている大女優ジョディ・デンチ(もう出ないかと思っていたけど)も、相変わらずしっかりと存在感を出している。

リアルになったとはいえよその大使館で銃撃戦するなどメチャクチャなところがあったり、いまいち分かりにくい部分もあったり、ラストはなんでMがそこまで事件の真相知ってんの?とかとつっこみたくなるところも結構あったりするけど、次作に向けてハードルが高くなったんじゃないかと思うほど、けっこう満足感は高かったです。(実はあんまり活躍してなかったり、仕事を捨てようとするボンドもなかなかよかったような)

余談だけど、一番のみどころは初めのあたりで、ボンドから遮二無二逃げる黒人のアクションだったりして(ジャッキー・チェンのアクションをみているみたいで、ちょっとビックリ。ボンドもあれぐらい動けば最高だったのに…)。

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2006年12月 2日 (土)

イカとクジラ

米映画

監督:ノア・バームバック

出演:ジェフ・ダニエルズ ローラ・リニー ジェス・アイゼンバーグ オーウェン・クライン

ウェス・アンダーソン(この映画の製作もしている)の「ライフ・アクアティック」の共同脚本もしていた監督による、80年代の壊れかけながらも絆を確認しあう家族を描いた、独特で可笑しくちょっと悲しいコメディ。

1986年(監督の少年時代らしい)のブルックリンを舞台に、作家の両親(父は昔売れていたが今は売れず大学で講師をしていて、母は人気作家)が離婚することとなり、その子供たち(16歳の兄と12歳の弟)を中心に、揺れ動く気持ちを表すまたは見透かすかのように全編手持ちのカメラで撮影され、4人の家族それぞれが不器用ながらも懸命に生きる道を模索する姿をコミカルにそして辛らつに描かれている。

最近は「サム・サッカー」とか「リトル・ミス・サンシャイン」とか問題を抱えた家族を描いたコメディが多く公開されているけれど、これもその系列にあるような映画だけど、想像とちがってかなり抑えたコメディで、そこがまた独特で可笑しかった。

主演の夫婦はジェフ・ダニエルズとローラ・リニーの渋い2人で、ギクシャクしたインテリの(元)夫婦を絶妙に演じている。特にジェフ・ダニエルズ(「スピード」でキアヌの相棒だった人)の、ケチでダメな父親が独特の雰囲気でとてもよかった。

中年になってますます油ず乗ってきたローラ・リニーももちろん上手いけど、ここでは個性的でおかしい家族の中でちょっとシリアスさが勝っているちょっと損な役。

子供役の2人も、不安定な兄弟を繊細で可笑しく演じていてなかなかよかった。中でも弟役のオーウェン・クラインは、あのケヴィン・クラインとフィービー・ケイツの子供ということらしいけど、あぶない役を飄々と演じていて感心。

ラストにかけて若干物足りなさは残るものの、コンパクトにまとまっていて、主役ともいえる兄(たぷん監督自身がモデル)の不安定な気持ちの揺れが映画全体のムードから伝わってくるセンスのいいホームドラマでした。

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武士の一分

日本映画

監督:山田洋次

出演:木村拓哉 壇れい 笹本高史 坂東三津五郎 桃井かおり 小林稔侍 緒形拳

「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」に続く、藤沢周平作品を原作とした山田洋次監督の時代劇の第三弾にして、ラストになるらしい作品。

前2作と同様、庄内にある海坂藩内を舞台に、真田広之、永瀬正敏といった演技派・個性派が演じてきた主人公を木村拓哉が演じ、宮沢りえ、松たか子が演じてきたヒロインは元宝塚の娘役トップスターの壇れいという女優が演じている。これまでは下級武士の生活や戦いといったストーリーに沿って、なかなか打ち明けられない秘めた恋が重要な物語の核となっていたけれど、今回は最初から夫婦であり、ストレートな夫婦愛を描いた作品になっている。

殿様の毒見役の下級武士が、毒にあたり失明してしまう。失意の底にある夫に妻は献身的につくし、そして守るために…といったお話。

前2作は城下での暮らしぶりや人間関係、または当時の風景なんかをジックリ描いていたのに対して、今回は主人公の失明というショッキングな事件が核としてあることから、その悲劇に直面して乗り越える夫婦の営みに物語の焦点を絞り、本当にシンプルな内容になっている。

標準語というか時代劇言葉というか、決まりきった言葉遣いのウソくさい時代劇(江戸が舞台ならまだいいけど)が大半を占めるなかで、山田時代劇はその時代の文化・風俗を丁寧に描くのと同様に土地の言葉を重んじて、登場人物には方言を守らせている。いつもながら庄内弁での軽妙な会話が心地よく、また真心や真剣さがストレートに伝わってくるところがとてもいいです。

これまでのテレビドラマの演技なんかはどこがいいのかあんまり分からなかったし、映画といえはウォン・カーウァイの「2046」ぐらいでそれもツギハギだらけの映画で出番も少なく、強い印象がなかったけれど、今回の木村拓哉の集中力というか演技力はなかなか凄くて、感心させられた。庄内弁での演技は、テレビなんかではみられない親しみやすさで、また盲目となったはずの目の演技にはドキッとさせられました。

そして映画初出演らしい壇れいが前2作のヒロインとは趣きが違うものの、キムタクにしっとりよりそう姿は感動的で、端整な顔立ちがとてもいいです。

笹野高史、赤塚正人、小林稔侍といった脇を固める人達もそれぞれ個性がでていて、特に桃井かおりが憎たらしいオバさんを面白く演じてよかったです。また、坂東三津五郎の悪役も迫力たっぷりでさすがに上手い。

前2作は光の加減や小道具の使い方や暮らしぶりの描き方にこだわりつくし、奥行きがあったのに比べると、ちょっと急作りっぽくもあり(キムタクのスケジュールの都合なのか)、若干物足りなさは感じるものの、シンプルにストーリーの中で主人公夫婦の心情に集中し、素直に感動させられる一品でした。

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2006年11月30日 (木)

プラダを着た悪魔

米映画

監督:デヴィッド・フランケル

出演:メリル・ストリープ アン・ハサウェイ スタンリー・トゥッチ

アン・ハサウェイ演じるジャーナリスト志望の女性が、メリル・ストリープ扮するファション界の伝説的な編集長にコキ使われながら成長していく物語。

「プリティ・プリンセス」のヒットでアイドルになった後に、名作「ブロークバック・マウンテン」での意外な好演でハクがついたアン・ハサウェイが得意分野のコメデイに復活し、めくるめくファションで大人っぽい魅力も振りまきながら、好演している。

ゲイっぽいハゲの役をやらせたら最高に上手いスタンリー・トゥッチ(「シャル・ウィ・ダンス?」とか)も相変わらずイイ味を出している。

そしてなによりも、悪魔のように人使いの荒い編集長を演じるメリル・ストリープがとにかく凄い。悪役としてはアンソニー・ホプキンスのレクター博士にも匹敵するぐらいの強烈な印象で、目つきだけで凍りつきそうな大迫力とほんのちょっとだけ見せる人間らしさとで、マンガチックなキャラをリアルに際立たせている。アカデミー賞あげてもいいくらい。

ちょっと間違えば、おとぎ話みたいな甘い内容になりそうなお話を「セックス・アンド・ザ・シティ」(見たことないけど)の監督が、スピーディーでテンポよく、キャラが際立つようにシンプルに仕上げていて、飽きずに見ていられる、思ったよりいい映画でした。

女性はストーリーはともかく、ファッションを見ているだけでもよさようだし…

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2006年11月26日 (日)

パプリカ

日本映画(アニメーション)

監督:今敏

出演(声):林原めぐみ 江守徹 古谷徹 大塚明夫 堀勝之祐 山寺宏一

筒井康隆原作のSF小説を「パーフェクト・ブルー」「千年女優」の映像作家 今敏が監督。

精神病等の治療のため、他人の夢に同調する(夢に入り込む)装置が開発され、夢に関するセラピーが行われている社会で、その装置が悪人の手に渡り、他人の夢(精神)に侵食し、狂わせていく事件が発生、夢のセラピスト「パプリカ」が事件解決に奔走するSFサスペンス。

ハッキリ言って夢に入り込む装置の原理やら、夢と現実が入り乱れるシーンは何が何やら分からなかったけれど、ストーリー自体はシンプルでテンポもよく、分かった気になれて、細かいところはあんまり気にしなくても楽しめる。

何よりも、原色が入り乱れる夢のシーンの映像は圧倒的な迫力と美しさ、そしてスピード感で、改めてこの監督の力量を思い知らされる。

押井守監督の傑作「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」など夢をテーマにした作品はかなり多く(夢と電脳世界を置き換えれば「イノセンス」や「アヴァロン」等も)、ハリウッドでもジェニロペ主演の「ザ・セル」なんてもんがあったけど、この作品は筒井康隆のブラックユーモアと今敏のスタイリッシュさや映像感覚が融合してオリジナルさを出している。(あえていうとやっぱり押井守作品に似てなくもないけど)

難しいけど面白く、登場人物も魅力的で(特に主人公の女性が)、何回も見て味が出てくる作品です。

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めぐみ 引き裂かれた家族の30年

米映画

監督:クリス・シェリダン パティ・キム 

出演:横田滋 横田早紀江 増元照明

北朝鮮による拉致させた横田めぐみさんの事件をアメリカ人監督が追いかけた(製作総指揮は「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン)ドキュメンタリー映画。

横田めぐみさんが行方不明になってから現在に至るまでを横田夫妻をはじめとする関係者からのインタビューを差し込みながら時系列の通り、丁寧に作り上げている。

日本では知らない人間はいないほどの事件だけど、観客の想定は恐らく事件への知識も薄い欧米の人達としていると思われ、それだけに誰にでも分かるように丁寧に、そして横田めぐみさんのみに焦点を絞りシンプルに描いている。それが、特に新しい情報はないけれど、改めて事件について深く感じさせられる。

特に横田めぐみさんが小学生時代の合唱の際、「慣れし故郷を放たれて 夢に楽土求めたり」(シューマンの「流浪の民」という歌だそうです)という部分を独唱するテープが残っていて、それを流すシーンは、本人の肉声を聞いたこともそうだけど、その美しい声とその後の残酷な運命を想像させられ、絶句させられる。

そしてまた、30年間奔走し続ける横田夫妻の姿はすごいとしか言えず、改めて尊敬と同情を禁じえない。特に早紀江さんは、家事をしながらインタビューに答えるシーンでは、やさしい普通の主婦にしか見えないのに、苦しい想いを噛みしめながらも事件の重要性を訴えるため、一言一言はっきりと発言する姿には本当に心を打たれる。

願わくば、この映画がアカデミー賞(ドキュメンタリー部門)を獲って、横田夫妻が授賞式で拉致について世界に訴えたりできればと思います。

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2006年11月22日 (水)

氷の微笑2

米映画

監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ

出演:シャロン・ストーン デビッド・モリッシー シャーロット・ランプリング デビッド・シューリス

あの「氷の微笑」がなぜか14年たった今になって、続編が作られた。主演はもちろんシャロン・ストーンだけど、ポール・バーホーベンは監督をやるはずはなく、「メンフィス・ベル」とか「ボーイズ・ライフ」とか「容疑者」とか割と「いい」映画を撮っているマイケル・ケイトン=ジョーンズが監督した。(もちろんマイケル・ダグラスも出ていない)

はっきり言って前作もシャロン・ストーンが足を組み替えるシーンぐらいしか記憶に残っておらず、ストーリーとかほとんど覚えていないんだけど、